狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 次に目覚めた時に、外はまだ明るかった。半刻も経っていないようだ。
 リオは、ゆっくりと起き上がり背伸びをする。もう頭も痛くないし、身体もしんどくはない。
 すっかり熱は下がったようだ。デックの治癒がなければ、何日寝込んでいたか、わからない。それくらい、今までにない魔法を使った。でも、大きな魔法を使う度に寝込んではいられない。アシュレイとデックが魔獣を使って、この国を乱そうとしている。それを阻止するのは、リオの役目だ。だから強い魔法を使っても、耐えられる体力をつけなければならない。

「もっともっと鍛錬しよう、強くなろう」
「そうだ、強くなれ」
「ギデオン?」

 リオは、勢いよく振り返った。寝ている間にギデオンが部屋に戻ってきていたのかと、気づかずに独り言を口にしたことが恥ずかしかったのだ。
 しかしギデオンはいなかった。では、今聞こえてきたのは、何だ?

「え?幻聴?こわ…」

 強い魔法を使った反動で、目だけでなく耳もおかしくなったのかと首を捻っていると、ベッドの陰からアンが出てきた。
 リオは驚いた。そして安堵した。

「アン!どこに行ってたんだよ。心配したぞ?アトラスが連れてきてくれたの?」

 頷くような素振りを見せて、アンが近づいてくる。
 リオはベッドから降りると、しゃがんで傍に来たアンを抱きしめた。

「なぁ、さっき塔の屋根に登ってた?」

 アンの反応はない。顔を見ても、気持ちよさそうに目を閉じてるだけ。
 やっぱり見間違いだなと、リオは小さく息を吐いた。そして違和感に気づく。
 
「あれ?おまえ…大きくなってる?んん?…うん、ひと回り大きくなってる!よかったなぁ。たくさん食べて、もっと大きくなれよ」
「アン!」

 今度は、元気よく反応した。
 リオは笑った。アンが急に消えたり、なんだか大人しかったりで、怪我でもしたのか、病なのかと心配した。でも、いつものように元気よく返事をしてくれた。きっと身体が大きくなるから、どこかに隠れていたんだな。
 しかしアンは不思議な生き物だ。毎日少しづつ大きくなるのではなく、ある日突然に大きくなる。やはり魔獣なんだろう。いつか、退治した魔獣くらい大きくなるのかな。絶対かっこいいよな。でも悪い魔獣と間違えられて退治されないかな、心配だ。絶対に俺が守らなきゃ。そのためにも…。

「アン、俺、強くなるからな」

 アンが鼻から、ふ…と息を吐いた。まるで笑ってるかのような仕草に、リオも笑って、もう一度アンを抱きしめた。
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