123 / 241
123
しおりを挟む
「リオ」とアシュレイに呼ばれて、顔を上げる。目が会い、黄色い瞳に惹き込まれそうになる。珍しい色だが、アシュレイによく似合っている。
「はい」
「俺達と一緒に来る気はないか?」
「ないです」
いきなりの質問に驚いたが、リオは即答する。
「ギデオンと離れる気はないです。俺はギデオンの傍で、ギデオンの役に立ちたい」
「ふっ、そうか。リオがそれほど言う狼領主に、一度会ってみたいものだな。デック、説得は難しいようだぞ」
アシュレイがデックに向かって笑うと、静かに立ち上がる。
「二人とも積もる話もあるだろう。リオ、そう急かずにゆっくりと休むといい。まだ顔色が悪いようだ。俺は自室にいるから、何かあれば呼んでくれ」
そう言うと、アシュレイは出ていった。
扉が閉まり足音が聞こえなくなったところで、リオが口を開く。
「なあ、あの人は、俺達の魔法のこと知ってるのか?」
「知ってる。だけど絶対に人に言いふらしたりはしない」
「信頼してるんだな。長いつき合いなんだって?いつどこで知り合ったんだ?」
「追々に話すつってんのに…せっかちな奴だな。まあいいか、いずれ話すつもりだったから、今話しても」
こっちとデックが手招きする。
リオは指図されるままに椅子に座る。アンもついて来て、リオの足に身体を寄せて伏せた。
デックが棚の上のガラス瓶から二つのグラスに水を注ぎ、それを机に置いて正面に座る。そしてひと口飲むと、少し考える素振りを見せた。
リオも水を飲んで黙って待つ。
リオの視線に気づいたデックは、小さく深呼吸をすると、「七年前のあの日…」と静かに話し出した。
七年前のあの日、デックは誘拐された。
たまたま村の外で魔法を使っている所を見られて、逃げる隙もなく口と身体を縛られ連れ去られた。
連れ去ったのは悪徳な商人で、魔法を使ったデックを目撃するなり、護衛の大男に命じてデックを気絶させ縛ったのだ。この商人は魔法を使う一族のことを知っていた。商売で遠出をするたびに森の奥深くや山奥の辺鄙な場所を捜していたらしい。
デックが目覚めると馬車に乗せられていた。何日も馬車に揺られ隣国にまで連れてこられた。
村から遠く離れ、しかも国を出てしまい、デックは不安でたまらなかった。隙を見て逃げたいが、両腕を縄で縛られているために魔法が使えない。助けてと叫ぼうものなら、護衛の男に張り倒される。
そのうち、とても賑やかな街に着いた。食事を運んでくる召使の男が「王都に着いたぞ」と言うのを聞いて、震えた。
「はい」
「俺達と一緒に来る気はないか?」
「ないです」
いきなりの質問に驚いたが、リオは即答する。
「ギデオンと離れる気はないです。俺はギデオンの傍で、ギデオンの役に立ちたい」
「ふっ、そうか。リオがそれほど言う狼領主に、一度会ってみたいものだな。デック、説得は難しいようだぞ」
アシュレイがデックに向かって笑うと、静かに立ち上がる。
「二人とも積もる話もあるだろう。リオ、そう急かずにゆっくりと休むといい。まだ顔色が悪いようだ。俺は自室にいるから、何かあれば呼んでくれ」
そう言うと、アシュレイは出ていった。
扉が閉まり足音が聞こえなくなったところで、リオが口を開く。
「なあ、あの人は、俺達の魔法のこと知ってるのか?」
「知ってる。だけど絶対に人に言いふらしたりはしない」
「信頼してるんだな。長いつき合いなんだって?いつどこで知り合ったんだ?」
「追々に話すつってんのに…せっかちな奴だな。まあいいか、いずれ話すつもりだったから、今話しても」
こっちとデックが手招きする。
リオは指図されるままに椅子に座る。アンもついて来て、リオの足に身体を寄せて伏せた。
デックが棚の上のガラス瓶から二つのグラスに水を注ぎ、それを机に置いて正面に座る。そしてひと口飲むと、少し考える素振りを見せた。
リオも水を飲んで黙って待つ。
リオの視線に気づいたデックは、小さく深呼吸をすると、「七年前のあの日…」と静かに話し出した。
七年前のあの日、デックは誘拐された。
たまたま村の外で魔法を使っている所を見られて、逃げる隙もなく口と身体を縛られ連れ去られた。
連れ去ったのは悪徳な商人で、魔法を使ったデックを目撃するなり、護衛の大男に命じてデックを気絶させ縛ったのだ。この商人は魔法を使う一族のことを知っていた。商売で遠出をするたびに森の奥深くや山奥の辺鄙な場所を捜していたらしい。
デックが目覚めると馬車に乗せられていた。何日も馬車に揺られ隣国にまで連れてこられた。
村から遠く離れ、しかも国を出てしまい、デックは不安でたまらなかった。隙を見て逃げたいが、両腕を縄で縛られているために魔法が使えない。助けてと叫ぼうものなら、護衛の男に張り倒される。
そのうち、とても賑やかな街に着いた。食事を運んでくる召使の男が「王都に着いたぞ」と言うのを聞いて、震えた。
42
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
王太子からは逃げられない!
krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。
日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!?
すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。
過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。
そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!?
それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。
逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!
皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ
手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、
アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。
特効薬も見つからないまま、
国中の女性が死滅する異常事態に陥った。
未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。
にも関わらず、
子供が産めないオメガの少年に恋をした。
勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜
天宮叶
BL
十歳の誕生日の日に森に捨てられたソルは、ある日、森の中で見つけた遺跡で言葉を話す剣を手に入れた。新しい友達ができたことを喜んでいると、突然、目の前に魔王が現れる。
魔王は幼いソルを気にかけ、魔王城へと連れていくと部屋を与え、優しく接してくれる。
初めは戸惑っていたソルだったが、魔王や魔王城に暮らす人々の優しさに触れ、少しずつ心を開いていく。
いつの間にか魔王のことを好きになっていたソル。2人は少しずつ想いを交わしていくが、魔王城で暮らすようになって十年目のある日、ソルは自身が勇者であり、魔王の敵だと知ってしまい_____。
溺愛しすぎな無口隠れ執着魔王
×
純粋で努力家な勇者
【受け】
ソル(勇者)
10歳→20歳
金髪・青眼
・10歳のとき両親に森へ捨てられ、魔王に拾われた。自身が勇者だとは気づいていない。努力家で純粋。闇魔法以外の全属性を使える。
ノクス(魔王)
黒髪・赤目
年齢不明
・ソルを拾い育てる。段々とソルに惹かれていく。闇魔法の使い手であり、歴代最強と言われる魔王。無口だが、ソルを溺愛している。
今作は、受けの幼少期からスタートします。それに伴い、攻めとのガッツリイチャイチャは、成人編が始まってからとなりますのでご了承ください。
BL大賞参加作品です‼️
本編完結済み

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる