狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 屋敷の大広間で、ギデオンを囲んで作戦会議が開かれている。
 リオはアンを膝に乗せて、部屋の隅で椅子に座り、その様子を眺めていた。
 作戦会議には、アトラスも参加している。一人でも多くの戦力が必要だし、俺は大丈夫だからとリオも頼み込んで、アトラスも討伐に参加することになった。
 リオは、窓の外に視線を向ける。遠くに見える魔獣は、動く気配がない。地上に出ては来たが、ずっと眠っている。それならば、刺激しないでそっとしておいた方がいいのではないか。いや、人的被害が出る前に討伐すべきだ。…という話し合いが、先程から続いている。
 しかし討伐する方向で決まりつつあるようだ。様子を見て何もしないでいたために、いきなり魔獣が暴れたら尋常ではない被害が出る。この辺りの住人に、確実に死傷者が出る。あれほどの魔獣だと、村や街の一つや二つ、一日もあれば壊滅させてしまうらしい。
 ただ、ひと月前の魔獣ですら、討伐は困難だった。今回は前回以上の強力な武器がいる。その武器は王城にしか無い。だからギデオンは、ビクターにその武器を持って来てくれるよう、早馬を出した。ビクターが来るまでは四日かかる。それまで魔獣は大人しくしているだろうか。


 心配していたが、魔獣は五日経った今も、出てきた時と同じ体勢で眠ったままだ。
 屋敷には、三十人の屈強な騎士が集まった。もちろんビクターもいる。
 ビクターは、到着時に屋敷から出てきたリオを見ると破顔して、「なんだ、おまえもいたのか」と激しく頭を撫でた。

「やめろっ…てください。俺はもう、成人したんで。子供じゃないんで」
「おおそうか!それはめでたいな」
「どうも…。早くあちらに行ってくださいよ。ギデオンが睨んでますよ」
「ちっ、あいつは相変わらず怖い顔をしている」

 怖い顔は深刻な状況だからだろと心の中で悪態を吐きながら、リオは髪の毛を整える。
 そう、リオは四日前に誕生日を迎えた。遠くの山に鎮座ちんざする魔獣を見ながらという緊迫した状況の中、ギデオン初め皆が祝ってくれた。豪華な食事も食べた。それになんと、ギデオンから大事な物をもらった。こんな風に祝われたのは、母親が亡くなってから初めてで、久しぶりで、とても嬉しかった。感激した。そして来年もその次の年もずっとずっと、こんな誕生日を迎えられたら…と、図々しくも願ってしまった。
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