狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 朝に夜にと温泉に入り、屋敷から少し離れた所にある丘の斜面をソリで滑って遊び、雪玉を作っては投げてアンとたわむれる。またギデオンに誘われて馬に乗り遠出もした。一面真っ白な雪の中で、木に積もった雪が風に吹かれて、キラキラと輝きながら舞う様を見た。夢のように美しくて感動した。リオが「他の人達も誘えばよかったのに」と言うと、ギデオンは「おまえと一緒に見たかった」と、優しい目をして見てくる。リオは直視できなくて、こそばゆく感じたが、誕生日だから特別に扱ってくれてるんだと思い込んでいた。
 そんな風に楽しく過ごして三日が過ぎた。
 四日目の昼、食事を終え、各自それぞれの部屋で寛いでいると、いきなりドーンという大きな音が鳴り響いた。
 リオは同じ部屋にいたギデオンと顔を見合せ、部屋を飛び出るギデオンの後を追う。
 皆もそれぞれ部屋から出てくる。
 リオは、屋敷の外に出た瞬間、「ひっ!」と息を吸って固まった。
 森を越えた遠くの山の斜面に、真っ白な雪煙が立ちのぼっている。雪煙の中に、ちらちらと黒い影が見える。あんなのは見たことがない。とても大きくて恐ろしい見た目をしている。あれは…魔獣?
 ギデオンが低く唸るように声を出す。

「どういうことだ。あのような魔獣はこの時期、冬眠してるはずなのに。なぜいる?それにあれは人前に滅多に出てこない類の魔獣ではないのか?」

 ギデオンの隣で山を見ていたロジェが頷く。

「はい、あのような魔獣は見たことがありません!冬眠関係なく、人前に姿を現わさない魔獣です。それがなぜ、今出てきたのか?それにひと月前のこともそうですが、今まで人前に出てこなかった魔獣が出て来すぎだと思いませんか?なにかが起こっている気がします!」
「あ…確かに!」

 今度はアトラスが賛同して叫ぶ。

「人智を超えた魔獣は、百年に一度しか現れないと言われてますよね?それなのに年に二度も!しかも前回からひと月しか経っていません!もしかして……この世の終わり?」
「バカなことを言ってる場合か!とにかくあれを何とかしなければ!ギデオン様っ」

 ロジェがギデオンの指示を仰ぐ。
 ギデオンは遠く向こうの魔獣を鋭く見つめて、「王都に早馬を」と背後の騎士に告げる。

「道中の領主にも伝えよ。腕の立つ騎士を集めてくれるよう頼め。この前の討伐隊よりも人数がいる」
「かしこまりました!」
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