狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 そして念願の温泉に入ることに。
 リオはアンを抱いて、迎えに来たアトラスと一緒に部屋を出ようしたところで、ギデオンに腕を掴まれ止められた。そしてアトラスが怒られる。「おまえは主よりも先に入るのか?」と。
 アトラスはポカンと口を開いて一瞬固まり、意味がわからないと目を丸くして口を開く。

「なんでですか?俺とリオは、屋敷から少し離れた所に行きます。ギデオン様は、屋敷裏にある温泉に入るのですよね?違う場所だからいいのでは?」
「そうか。ならそこへはおまえだけで行け。リオは俺と屋敷裏の温泉へ入るぞ」
「え?なんでですかっ?」

 アトラスが更に追求する。
 アトラスは肝がわってるのか気が小さいのかよくわからない。リオはハラハラとしながら二人を交互に見た。
 ギデオンは、狼領主という名にふさわしい鋭い表情で、リオの腕を引きピタリと身体を寄せる。

「リオの誕生日だからに決まっている。リオを優先しなくてどうする」
「ああっ!」

 アトラスは、ようやく納得がいった様子で何度も頷いた。そして「では俺は、ロジェさんやら他の人と入ってきますね」と去って行く。
 アトラスとも入りたかったんだけどな…とリオが見送っていると、「行くぞ」とギデオンに背中をそっと押された。

 屋敷の裏に小屋がある。到着してすぐに、アトラスと散策をして、ここに温泉があることは知っていた。
 小屋に入りリオは服を脱ぐのももどかしく全裸になると、アンを抱いて湯船に向かう。だけど動きを止めて振り向き、ギデオンを待つ。
 ギデオンはゆっくりと服を脱いでいた 。
 上着を脱いで丁寧に畳んで棚に置き、シャツのボタンを外す。外していくごとに鍛えられた筋肉が見えて、リオはなぜかドキドキとする。
 そしてズボンに手をかけた所で、ギデオンがリオの視線に気づいて微笑んだ…ように見えた。
 リオの心臓が更に大きく跳ねて、慌てて目を逸らす。

「待っていなくともいい。先に入っていろ」
「うん…」

 ギデオンに言われ、自身の貧弱な身体を隠すようにアンを抱きしめると、そそくさと岩で囲まれた湯船に近づき、そっと手を入れた。

「少し熱いな。先に身体を洗おうか」
「アン!」

 重ねて置いてある桶に湯を汲むと、石鹸せっけんを泡立てて、アンと自身の身体を洗い始める。
 丁寧に洗い、アンにゆっくりと湯をかけてやる。アンは冷たい水も熱い湯も平気で、少し熱めの湯をかけられても、目を細めて気持ちよさそうにしている。
 その様子にリオは笑って、自身にも湯をかける。だけど思ってたよりも熱くて、思わず声が出た。
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