狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 リオは恐る恐る聞く。

「え…っと、あの騎士は、ギデオンの部下じゃないよね?」
「違う。朝に話しただろう。王城から来た使者だ」
「へぇ」

 知ってたけど。使者が来ることを朝に聞いて、興味が湧いたから覗き見したんだけど。まさかその使者とバッタリ会うとは思わなかった。
 ギデオンがリオを見て自室に入る。
 リオもギデオンに続いて隣の部屋に入り、椅子に座ったギデオンと向かい合うように腰を下ろす。

「あいつ…使者はビクターというのだが、何か話したか?」 
「名前と何者かを聞かれた。だからここで働かせてもらってるって話したけど、よかった?
「大丈夫だ。リオ、あいつには気をつけろよ。二日ほどすれば帰ると思うが、それまではなるべく一人にはなるなよ」
「…わかった」

 リオが素直に頷くと、険しかったギデオンの顔が柔らかくなった。
 リオは思う。きっと俺と一緒に寝ていることがバレたら困るのだろう。誰にも話しすつもりはないけど、うまく誘導されて口が滑っちゃうこともあるからな。王城勤めの騎士なら、それくらい容易にやりそうだもんな。
 リオは、机に置いてあるボトルからグラスに水を注いで口に含む。

「ところで、大広間の二階で何をしていた?」
「グフっ…」

 驚いて変な飲み込み方をしたために、鼻の穴から水が流れ出た。咳き込みながら慌てて机の上の布巾で鼻を押さえる。

「ゲホッ」
「ははっ!何をしている、大丈夫か」
「だ、大丈夫…。俺のこと、気づいてたの?」
「当然だ。おまえはどこにいようとわかる」
「…うそだろ」
「もう一人はアトラスだろう」
「アトラスのこともわかるの?」
「いや、あいつは鍛錬中に腹痛を訴えて鍛錬場から離れたと聞いた。自室に戻ると言いながら、違う方向へ歩いて行ったのを見た者がいる。サボったな」

 バレてる。即効でバレてる。アトラスが悪いんだけど、怒られるのは可哀想だよな。俺だって仕事をサボってたし。
 リオは、両手を合わせて頭を下げる。

「ギデオン、ごめんなさい!俺も仕事をサボったから、怒るなら俺も一緒に」
「リオ、顔を上げろ。怒りはしないから大丈夫だ。それにリオの本当の仕事は夜だ。昼間の仕事は、してもしなくてもいいという話だっただろう。だからサボりにはならない。アトラスは明らかなサボりだな。アトラスには、鍛錬の時間を倍に増やす罰を与えよう。己を磨き強くもなる。有益な罰だ」

  まあそれくらいなら…アトラスがんばれ、とリオは胸を撫で下ろす。

「それで、なぜあそこにいた?」

 ギデオンが再度問う。
 リオは「ギデオンが心配だったから」と言い顔を上げた。
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