72 / 241
72
しおりを挟む
「違う」
リオは即座に答えて目を逸らす。
目を合わせていたら動揺を悟られてしまいそうだ。手を固く握りしめていないと震えてしまいそうだ。
金髪に赤い目だって?一族の中に金髪の人は何人もいた。赤い目の人も何人もいた。ただ金髪で赤い目は、リオともう一人。デックだけだ。だからその人はデックだ。七年前に突如として消えたデック。生きていたんだ…。消えてからどこで何をしていた?そして今はどこにいる?
「ふーん」と呟いて、ケリーが立ちあがる。そして机を回ってリオの隣に立ち、顔を寄せてきた。
「まあ認めたくないなら、それでもいいけど。俺はさ、初めて君を見た時から、君も不思議な力を使えるんじゃないかと思ってワクワクしてる。ギデオン様は何も仰らないけど、力があるから直接雇われたんだろ?」
「違う。俺が一人で旅をしていて金に困っていたから、助けてくれただけだ」
「へぇ、そうなのか」
ケリーが目を伏せたリオの肩に手を置く。
どういう顔をしているのか見えないけど、笑った気配がした。
「この部屋はさ、城の最上階にあるんだよ。知ってた?ここに来るまでに、かなり階段を上っただろ?取り調べる必要がある要注意人物が、逃げないように。隣の部屋には見張り。窓の下は敷き詰められた石畳。絶対に逃げられない。まあ俺は、逃げたりしないけど」
「さっきの話…」
「なに?」
前を見つめたまま、リオが口を開く。
「俺が不思議な力を使うんじゃないかってこと、ギデオンに話さないのかよ」
「話さないよ。君は認めてくれないし。ギデオン様が知らないなら好都合だ。だって世界に一人か二人しかいなさそうな貴重な人間だよ?そんな貴重な人間、誰にも渡さない。俺が利用する」
「…最低だな」
「そう?利用すれば、この領地だけでなく国も手に入れられると思わないか?」
「思わねぇ。てか、もし俺が不思議な力を使えるとしても、あんたなんかに一切協力しない」
「うん、リオはそう言うと思っていた。だからリオを拐おうと思ってる」
「は?話聞いてなかったのかよ。俺はあんたが見た人のことは知らないし、不思議な力も使えない。拐っても無意味だ」
「違うな。彼と君は深く関係がある」
リオの肩に乗っていたケリーの手が、リオの首に触れる。
直後にリオは肩を震わせた。
なに…チクッとした…?
リオがゆっくりと横を向き、ケリーを見上げる。
ケリーは、目を細めてリオを見ていた。
「なに…?」
「痛かった?なるべく痛くないように刺したんだけど。ほらこれ」
ケリーの指には細い針が挟まれている。
「針の先に薬が塗られている。でも大丈夫だよ。ただの眠り薬だから。少しだけ催眠薬も入ってるけど。今から俺が言うことをよく聞けよ。この薬は半日効く。いいか、月が中天に昇った時に目を覚ませ。そうしたらこっそりと部屋を抜け出して、城の東の門まで来るんだ。わかったな?」
リオは、ぼんやりとケリーを見る。
ケリーの言葉を頭の中で反芻しながら、俺は門には行かない、というか行けないよと思う。
だって隣で眠るギデオンが気づく。俺と寝るようになって不眠症が治ったと喜んでるけど、不審な動きがあれば気づいて起きる。だからきっと、ギデオンが止めてくれる。
「約束だ」と言うケリーの声を聞きながら、リオは机に顔を伏せて、ゆっくりと目を閉じた。
リオは即座に答えて目を逸らす。
目を合わせていたら動揺を悟られてしまいそうだ。手を固く握りしめていないと震えてしまいそうだ。
金髪に赤い目だって?一族の中に金髪の人は何人もいた。赤い目の人も何人もいた。ただ金髪で赤い目は、リオともう一人。デックだけだ。だからその人はデックだ。七年前に突如として消えたデック。生きていたんだ…。消えてからどこで何をしていた?そして今はどこにいる?
「ふーん」と呟いて、ケリーが立ちあがる。そして机を回ってリオの隣に立ち、顔を寄せてきた。
「まあ認めたくないなら、それでもいいけど。俺はさ、初めて君を見た時から、君も不思議な力を使えるんじゃないかと思ってワクワクしてる。ギデオン様は何も仰らないけど、力があるから直接雇われたんだろ?」
「違う。俺が一人で旅をしていて金に困っていたから、助けてくれただけだ」
「へぇ、そうなのか」
ケリーが目を伏せたリオの肩に手を置く。
どういう顔をしているのか見えないけど、笑った気配がした。
「この部屋はさ、城の最上階にあるんだよ。知ってた?ここに来るまでに、かなり階段を上っただろ?取り調べる必要がある要注意人物が、逃げないように。隣の部屋には見張り。窓の下は敷き詰められた石畳。絶対に逃げられない。まあ俺は、逃げたりしないけど」
「さっきの話…」
「なに?」
前を見つめたまま、リオが口を開く。
「俺が不思議な力を使うんじゃないかってこと、ギデオンに話さないのかよ」
「話さないよ。君は認めてくれないし。ギデオン様が知らないなら好都合だ。だって世界に一人か二人しかいなさそうな貴重な人間だよ?そんな貴重な人間、誰にも渡さない。俺が利用する」
「…最低だな」
「そう?利用すれば、この領地だけでなく国も手に入れられると思わないか?」
「思わねぇ。てか、もし俺が不思議な力を使えるとしても、あんたなんかに一切協力しない」
「うん、リオはそう言うと思っていた。だからリオを拐おうと思ってる」
「は?話聞いてなかったのかよ。俺はあんたが見た人のことは知らないし、不思議な力も使えない。拐っても無意味だ」
「違うな。彼と君は深く関係がある」
リオの肩に乗っていたケリーの手が、リオの首に触れる。
直後にリオは肩を震わせた。
なに…チクッとした…?
リオがゆっくりと横を向き、ケリーを見上げる。
ケリーは、目を細めてリオを見ていた。
「なに…?」
「痛かった?なるべく痛くないように刺したんだけど。ほらこれ」
ケリーの指には細い針が挟まれている。
「針の先に薬が塗られている。でも大丈夫だよ。ただの眠り薬だから。少しだけ催眠薬も入ってるけど。今から俺が言うことをよく聞けよ。この薬は半日効く。いいか、月が中天に昇った時に目を覚ませ。そうしたらこっそりと部屋を抜け出して、城の東の門まで来るんだ。わかったな?」
リオは、ぼんやりとケリーを見る。
ケリーの言葉を頭の中で反芻しながら、俺は門には行かない、というか行けないよと思う。
だって隣で眠るギデオンが気づく。俺と寝るようになって不眠症が治ったと喜んでるけど、不審な動きがあれば気づいて起きる。だからきっと、ギデオンが止めてくれる。
「約束だ」と言うケリーの声を聞きながら、リオは机に顔を伏せて、ゆっくりと目を閉じた。
43
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
王太子からは逃げられない!
krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。
日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!?
すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。
過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。
そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!?
それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。
逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!
皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ
手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、
アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。
特効薬も見つからないまま、
国中の女性が死滅する異常事態に陥った。
未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。
にも関わらず、
子供が産めないオメガの少年に恋をした。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話
【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】
孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。
しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。
その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。
組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。
失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。
鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。
★・★・★・★・★・★・★・★
無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。
感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡
勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜
天宮叶
BL
十歳の誕生日の日に森に捨てられたソルは、ある日、森の中で見つけた遺跡で言葉を話す剣を手に入れた。新しい友達ができたことを喜んでいると、突然、目の前に魔王が現れる。
魔王は幼いソルを気にかけ、魔王城へと連れていくと部屋を与え、優しく接してくれる。
初めは戸惑っていたソルだったが、魔王や魔王城に暮らす人々の優しさに触れ、少しずつ心を開いていく。
いつの間にか魔王のことを好きになっていたソル。2人は少しずつ想いを交わしていくが、魔王城で暮らすようになって十年目のある日、ソルは自身が勇者であり、魔王の敵だと知ってしまい_____。
溺愛しすぎな無口隠れ執着魔王
×
純粋で努力家な勇者
【受け】
ソル(勇者)
10歳→20歳
金髪・青眼
・10歳のとき両親に森へ捨てられ、魔王に拾われた。自身が勇者だとは気づいていない。努力家で純粋。闇魔法以外の全属性を使える。
ノクス(魔王)
黒髪・赤目
年齢不明
・ソルを拾い育てる。段々とソルに惹かれていく。闇魔法の使い手であり、歴代最強と言われる魔王。無口だが、ソルを溺愛している。
今作は、受けの幼少期からスタートします。それに伴い、攻めとのガッツリイチャイチャは、成人編が始まってからとなりますのでご了承ください。
BL大賞参加作品です‼️
本編完結済み
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる