炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
上 下
425 / 432

63

しおりを挟む
「失礼、入るがいいか」
「どうぞ」

 声を聞いて、リオが素早く扉の前に立つ。そして扉が開くと同時に頭を下げる。

「お久しぶりでございます。こちらの城にいらっしゃってたのですか?」
「ああ。おまえ達が来る少し前に来ていた。カエン、久しぶりだな。元気そうだ」
「レオナルト王、ご無沙汰しております」

 部屋に来たのは水の国スイの王、レオナルトだった。
 レオナルト王は頭を下げるリオの肩に手を置き、俺を見て微笑む。
 俺は身体を起こして立ち上がり、レオナルト王に近づいた。

「お会いできて嬉しいです」
「俺もだ」

 俺よりも背の高いレオナルト王を見上げて笑う。レオナルト王は、父さまと顔を合わせば嫌味を言うけど、俺にはとても優しい。本気なのかどうかわからないけど、カナデを愛していたと俺相手によく話して、父さまとナジャに怒られていた。
 レオナルト王が俺の背中に手を添えて、ソファーに並んで座る。そして俺の顔をじっと見る。
 やはりアレン王子はレオナルト王に似てるなと、俺も見つめ返しながら思った。するとレオナルト王も同じようなことを思っていたらしく、目を細めて頷く。

「カエン、いや、今はカエン王か。君はカナデに似てきたな」
「そうですか?父さまにそっくりだとよく言われるのですが」
「ああ、パッと見た感じはアルファム前王に似ているが、よく見ると目元や口元がカナデに似ていると思う」
「そうだったら嬉しいです」

 俺は母さまの顔を思い浮かべる。艶やかな黒髪に誰よりも白い肌。大きな目に小さな唇。笑うと可憐な花のようで、父さまがベタ惚れした気持ちもわかる。それはきっと、俺が今、ハオランを愛しく思う気持ちと同じだ。ハオランも、この世界の誰よりも可愛くて美しい…と俺は思っている。
「ところで」と呟くレオナルト王の声に、再び顔を上げる。

「はい」
「牢に捕らえていた罪人が消えたらしいな」
「そうなんです。すいません…俺が結界を解くように言ったから」
「いや、カエンのせいではない。ただ、どこに消えたのか気になるな。彼は…カナデのように別の世界から来たのだって?」
「はい。消えたのは、たぶん、元の世界に戻ったのだと思います」
「そうか。カナデがいた世界から来たのだろうか」
「いえ、違うようですよ。国の名前が違いましたから」
「そうか…」

 レオナルト王が、残念そうに息を吐く。母さまがいた世界が、気になるのか。
 母さまはニホンという所から来た。でもハオランはチュウカという所からだ。母さまが生まれた所と違うけど、ハオランが生まれて育ってきたチュウカが、どのような所なのか、俺はとても興味がある。
 ところでアレン王子は、ハオランのことを父王に話したのだろうかと気になっていると、窓の外から騒がしい声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

処理中です...