418 / 432
56
しおりを挟む
父さまが椅子に座ったのを見て、俺は先ほどアレン王子とナジャから聞いた話をした。
父さまは驚いた後に険しい顔になる。そしてアレン王子に「大丈夫か?」と問う。
暗殺されかけたことを聞かれたと思ったアレン王子が、「何度か襲われたことがありますから大丈夫です」と頷く。
「それも心配だが、捕らえた男のことだ。しっかりと拘束し牢から出られぬよう強力な魔法をかけてあるのか?」
「はい。怪しい魔法を使いますから厳重に…。そうだな、ナジャ」
「はい」
今度はナジャが頷いた。ナジャもアレン王子も、父さまの方を向いて、次の言葉を待っている。
でも父さまは、二人から俺に視線を移して「カエン」と呼んだ。
「おまえはアレン王子の話を聞いてどうする?」
「できるならば、その男に会ってみたい。ハオランのことを聞いてみたい」
「ふむ。聞いたとしても、ハオランが戻ってくるとは限らないぞ」
「そうかもしれないけど…。少しでも可能性があるなら俺は何でもやるよ」
「そうか」
父さまが軽く息を吐き出し、かすかに笑う。そして今度こそアレン王子に向き直り、小さく頭を下げた。
「アルファム様っ?何を…」
アレン王子が、慌てて手を前に突き出している。
自身の地位に関係なく、自然と頭を垂れる父さまが好きだ。こんなことができるようになったのも、母さまのおかげらしいけど。母さまは、カナは、本当に偉大だったんだなと、つくづく思う。
父さまは顔を上げると、「カエンを水の国に連れてやってくれないか?」とアレン王子に頼んだ。
「カエンを?それはもちろんいいですけど、王が留守にしても大丈夫なのですか?」
アレン王子が心配そうに俺を見る。彼はいろいろと気配りができて優しい。レオナルト王よりも、優しい性格をしている。
俺が口を開くよりも早く、シアンが「大丈夫です」と頷いた。
「カエン様の代わりにアルファム様が働いてくれます。そうですね?」
「ああ。カエンには予定よりも早く即位させてしまったからな。安心して水の国に行ってこい」
俺は父さまに笑いかけ、アレン王子とナジャにも笑いかけた。
「ありがとう。アレン王子、ナジャ、俺を連れて行ってくれる?」
「もちろん!ぜひ王都を案内したい…と言いたいところなんだけど、男を捕らえている場所は、炎の国との国境に近い小さな城なんだ…ごめん」
俺は父さまと顔を見合せて、ぷぷっと吹き出す。
「なんで謝るの!近いなら日数をかけずに行けていいじゃないか。王都には、落ち着いたらゆっくりと遊びに行かせてもらうよ。こちらこそ、今回はゆっくりと滞在してもらえなくてごめん」
「そんな!今回は遊びに来たわけじゃないからっ。でも次にくる時は、ゆっくりと滞在させてくれる?」
「もちろん。では早速だけど、荷物をまとめたらすぐに出発したい。いいかな」
「わかった」
頷くアレン王子とナジャに挨拶をする。そして父さまとシアンを部屋に残し、準備のためにリオをつれて部屋を出た。
父さまは驚いた後に険しい顔になる。そしてアレン王子に「大丈夫か?」と問う。
暗殺されかけたことを聞かれたと思ったアレン王子が、「何度か襲われたことがありますから大丈夫です」と頷く。
「それも心配だが、捕らえた男のことだ。しっかりと拘束し牢から出られぬよう強力な魔法をかけてあるのか?」
「はい。怪しい魔法を使いますから厳重に…。そうだな、ナジャ」
「はい」
今度はナジャが頷いた。ナジャもアレン王子も、父さまの方を向いて、次の言葉を待っている。
でも父さまは、二人から俺に視線を移して「カエン」と呼んだ。
「おまえはアレン王子の話を聞いてどうする?」
「できるならば、その男に会ってみたい。ハオランのことを聞いてみたい」
「ふむ。聞いたとしても、ハオランが戻ってくるとは限らないぞ」
「そうかもしれないけど…。少しでも可能性があるなら俺は何でもやるよ」
「そうか」
父さまが軽く息を吐き出し、かすかに笑う。そして今度こそアレン王子に向き直り、小さく頭を下げた。
「アルファム様っ?何を…」
アレン王子が、慌てて手を前に突き出している。
自身の地位に関係なく、自然と頭を垂れる父さまが好きだ。こんなことができるようになったのも、母さまのおかげらしいけど。母さまは、カナは、本当に偉大だったんだなと、つくづく思う。
父さまは顔を上げると、「カエンを水の国に連れてやってくれないか?」とアレン王子に頼んだ。
「カエンを?それはもちろんいいですけど、王が留守にしても大丈夫なのですか?」
アレン王子が心配そうに俺を見る。彼はいろいろと気配りができて優しい。レオナルト王よりも、優しい性格をしている。
俺が口を開くよりも早く、シアンが「大丈夫です」と頷いた。
「カエン様の代わりにアルファム様が働いてくれます。そうですね?」
「ああ。カエンには予定よりも早く即位させてしまったからな。安心して水の国に行ってこい」
俺は父さまに笑いかけ、アレン王子とナジャにも笑いかけた。
「ありがとう。アレン王子、ナジャ、俺を連れて行ってくれる?」
「もちろん!ぜひ王都を案内したい…と言いたいところなんだけど、男を捕らえている場所は、炎の国との国境に近い小さな城なんだ…ごめん」
俺は父さまと顔を見合せて、ぷぷっと吹き出す。
「なんで謝るの!近いなら日数をかけずに行けていいじゃないか。王都には、落ち着いたらゆっくりと遊びに行かせてもらうよ。こちらこそ、今回はゆっくりと滞在してもらえなくてごめん」
「そんな!今回は遊びに来たわけじゃないからっ。でも次にくる時は、ゆっくりと滞在させてくれる?」
「もちろん。では早速だけど、荷物をまとめたらすぐに出発したい。いいかな」
「わかった」
頷くアレン王子とナジャに挨拶をする。そして父さまとシアンを部屋に残し、準備のためにリオをつれて部屋を出た。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
裏切られた人生に
藍
BL
かつて親友だった国の皇子に裏切られ、宮廷魔法師だったラウルは自死を選択する。ちゃんと自分の首を切り死んだはずだったが、目を覚ますと5歳に戻っていた。もう二度とあの男とは関わらないと決め、以前から夢であった冒険者になり、1人でひっそりと旅をしようと思っていたラウルだがある男と出会う。
展開が大分ゆっくりです。
※R18シーンは*で記載します。
※メインカプとは違うR18シーンがあるため注意してください。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる