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「カエン様、大丈夫だとは思いますが、あいつが何を言っても動揺なさいませんよう」
「わかってる。行くよ」
薄暗い通路を進み、一番奥の牢の前で止まる。鉄格子越しに中を見る。
男が床に転がっている。その男の両手両足には、鉄の輪っかがつけられている。その四つの輪っかには魔法が施されており、男が逃げ出そうとすると、後ろの壁に両手両足が張りつくようになっているのだ。
俺が鉄格子を叩くと、男が顔を上げてこちらを見た。
そして俺と目が会った瞬間、飛び起きて不気味に笑った。
「久しぶりだな…。会いたかったぞ」
「俺はもう会いたくなかったけどね。それで?話ってなに?適当なことは言うなよ。時間の無駄だから」
「俺は…嘘は言わぬ。俺は、時空を歪めて別の世界から来たからわかる。五日ほど前、誰かがこの世界へ落ちてきたぞ」
「……あんたが生贄にするために呼んだんじゃなくて?」
「俺が生贄を呼べるのは一度きりだ。そいつを生贄にできなかったから、今こうしてここにいる」
「ふーん。残念だったね。じゃあその人はなんでこの世界に来たんだ?」
「それは知らぬ。だが落ちたのは確かだ。この国に落ちた。今頃どこかをうろついているんじゃないか」
「……シアン。こいつの話が本当なら、その人を保護しないと。何もわからなくて困ってると思う」
俺は男を睨みつけたまま、顔を少しだけ後ろに向けて言う。
シアンも「そうですね」と頷き、後ろに控えていた兵の一人に何か指示を出した。
「ふ…ふ…ふははは!馬鹿かおまえ!そんな悠長にしている場合ではないぞ!」
「…何が?」
男の笑い声が、俺を苛立たせる。
こんな話を聞かせて、一体何がしたいのか。
俺は、苛立ちを露に男に聞く。
シアンが、心配そうに俺の名前を呼ぶのを、手で制した。
「早く言えよ。俺は暇じゃないんだ」
「まあ待て。ちゃんと教えてやる。俺は元いた世界で優秀な術使いだった。だから同じように時空を歪めて他の世界から来た人間の気配がよくわかる。五日ほど前に落ちてきた人間…そいつは邪悪の塊だぞ」
「……はあ?あんたの話を真面目に聞いてたけど時間の無駄だった。話はそれだけ?ご忠告どうも。じゃ、もう会うこともないけど、ここで自分の冒してきた罪を反省してて」
俺は身体の向きを変えて、鉄格子の前から離れようとした。
その瞬間、ガシャンと鉄格子が大きく揺れ、俺は振り向いた。
男が、鉄格子の間から伸ばした両掌をこちらに向け、大きな円形の黒い雷を飛ばす。
至近距離から飛ばされたそれを避けることも躱すことも出来ず、腹に受けてしまった。
「カエン様っ!!」
シアンが炎の塊を男にぶつける。
男の身体が後ろに飛んで、壁に張りついた。
「カエン様!早く治癒を…っ」
「シアン…違う。どこも…怪我は、ない…?」
俺は、確かに腹に攻撃を受けた。でも服すら焼けていない。痛みもない。今のは…攻撃ではなかったのか?
「ふ…ふふん、感謝しろ…。おまえに…俺の力を与えてやった。炎に加えて…雷も使える…。最強ではないか…。その力で、世界の王に…なると、い…い…」
「は?はあっ!なに勝手なことしてくれたんだよっ!おまえの力なんていらないっ!早く外せっ!」
「カエン様…もう…死んでます…」
俺は、シアンを見て男を見る。
男は、壁に張りついたまま、不気味な笑みを浮かべてピクリとも動かなかった。
「わかってる。行くよ」
薄暗い通路を進み、一番奥の牢の前で止まる。鉄格子越しに中を見る。
男が床に転がっている。その男の両手両足には、鉄の輪っかがつけられている。その四つの輪っかには魔法が施されており、男が逃げ出そうとすると、後ろの壁に両手両足が張りつくようになっているのだ。
俺が鉄格子を叩くと、男が顔を上げてこちらを見た。
そして俺と目が会った瞬間、飛び起きて不気味に笑った。
「久しぶりだな…。会いたかったぞ」
「俺はもう会いたくなかったけどね。それで?話ってなに?適当なことは言うなよ。時間の無駄だから」
「俺は…嘘は言わぬ。俺は、時空を歪めて別の世界から来たからわかる。五日ほど前、誰かがこの世界へ落ちてきたぞ」
「……あんたが生贄にするために呼んだんじゃなくて?」
「俺が生贄を呼べるのは一度きりだ。そいつを生贄にできなかったから、今こうしてここにいる」
「ふーん。残念だったね。じゃあその人はなんでこの世界に来たんだ?」
「それは知らぬ。だが落ちたのは確かだ。この国に落ちた。今頃どこかをうろついているんじゃないか」
「……シアン。こいつの話が本当なら、その人を保護しないと。何もわからなくて困ってると思う」
俺は男を睨みつけたまま、顔を少しだけ後ろに向けて言う。
シアンも「そうですね」と頷き、後ろに控えていた兵の一人に何か指示を出した。
「ふ…ふ…ふははは!馬鹿かおまえ!そんな悠長にしている場合ではないぞ!」
「…何が?」
男の笑い声が、俺を苛立たせる。
こんな話を聞かせて、一体何がしたいのか。
俺は、苛立ちを露に男に聞く。
シアンが、心配そうに俺の名前を呼ぶのを、手で制した。
「早く言えよ。俺は暇じゃないんだ」
「まあ待て。ちゃんと教えてやる。俺は元いた世界で優秀な術使いだった。だから同じように時空を歪めて他の世界から来た人間の気配がよくわかる。五日ほど前に落ちてきた人間…そいつは邪悪の塊だぞ」
「……はあ?あんたの話を真面目に聞いてたけど時間の無駄だった。話はそれだけ?ご忠告どうも。じゃ、もう会うこともないけど、ここで自分の冒してきた罪を反省してて」
俺は身体の向きを変えて、鉄格子の前から離れようとした。
その瞬間、ガシャンと鉄格子が大きく揺れ、俺は振り向いた。
男が、鉄格子の間から伸ばした両掌をこちらに向け、大きな円形の黒い雷を飛ばす。
至近距離から飛ばされたそれを避けることも躱すことも出来ず、腹に受けてしまった。
「カエン様っ!!」
シアンが炎の塊を男にぶつける。
男の身体が後ろに飛んで、壁に張りついた。
「カエン様!早く治癒を…っ」
「シアン…違う。どこも…怪我は、ない…?」
俺は、確かに腹に攻撃を受けた。でも服すら焼けていない。痛みもない。今のは…攻撃ではなかったのか?
「ふ…ふふん、感謝しろ…。おまえに…俺の力を与えてやった。炎に加えて…雷も使える…。最強ではないか…。その力で、世界の王に…なると、い…い…」
「は?はあっ!なに勝手なことしてくれたんだよっ!おまえの力なんていらないっ!早く外せっ!」
「カエン様…もう…死んでます…」
俺は、シアンを見て男を見る。
男は、壁に張りついたまま、不気味な笑みを浮かべてピクリとも動かなかった。
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