376 / 432
14
しおりを挟む
中央の城に着くと、シアンが正面広場で待っていた。
俺は、オルタナを着地させて地面に飛び降りる。頭を下げているシアンの前に立つと、「どういうことだ?」といきなり聞いた。
シアンは、ゆっくりと顔を上げて、困った表情を浮かべた。
「申し訳ありません。皆様でゆっくりと過ごされていた所に水を差すような真似をしたことは、重々承知しております。どのような処罰も受けます。ですが、急いだ方がよろしいかと思いまして…」
「…処罰はしないよ。別に怒ってるわけじゃないから。ちょっと残念に思っただけ。でも要件が済んだら、またすぐに戻るからね!」
「はい。今度は気が済むまで滞在して下さって結構です。それでは、早速よろしいですか?中へ…」
「約束だよ。それで?」
俺はシアンに促されて歩き出す。シアンが向かった先は、あの怪しい男を拘束している地下牢だった。
「なに?あいつ何かしたの?」
「いえ…。強力な魔法で両手両足を拘束してますから、何も出来ません。…ただ、数日何を尋ねても黙っていた男が、五日前から妙なことを言い出したのです」
「妙なこと?」
地下牢がある建物に入り、地下に降りる階段横の部屋に一旦入る。
シアンに勧められて椅子に座ると、目の前にお茶を出された。
「お疲れでしょう。少し休んでください」
「俺よりもオルタナが疲れてるから、充分に水分と餌を与えてやって」
「はい」
俺の横に立ち、地下牢がある方向を見つめるシアンの顔が、とても険しい。
これはとても良くないことだなと、俺はお茶を飲みながら思った。
「それで?何あいつ、まだ生贄だとか言ってるの?」
「はあ…まあ。生贄というか…。カナデ様のように他の世界から人が降ってきたと言うのです」
「はあ?」
俺は、飲もうとしたお茶を思わず零すところだった。
なんだそれ。母さまは、あいつが生贄にする為に呼んだんだろ。その話を聞いた時は腹が立ったけど、そのおかげで父さまと母さまが出会って俺が生まれたから、まあ良しとしよう。
でも今回降ってきたという人間は?またあいつが呼んだのか?
「適当なことを言ってるんじゃないの?」
「はい…。俺も信じてはないのですが。とにかくあの男が、カエン様を呼べとうるさいのです。詳しくはカエン様にしか話さないと…」
「はあ…っ、俺、気に入られちゃったのかな…。わかった。あいつに会いに行こう」
「俺が何とかしようと思ったのですが。本当に申し訳ありません」
「シアンは何も気にしなくていいよ。あ、それと父さまは元気になったから。ただ髪の毛が短くなってしまったんだ。綺麗な髪だったのに。でも短髪も似合ってかっこいいんだよ」
「アルファム様は、美しいですから。カエン様も、最近特に美しくなってきております」
「俺?そうなのかなあ。それでさ、父さまと話してて髪の毛を伸ばすことにした」
「ああ、それはいい。きっとお似合いですよ」
部屋を出て、階段を降りながらシアンと話す。
俺ににこりと笑いかけるシアンも、かなり美しい容姿をしている。女の人からの人気も高い。でもずっと独身なんだよな。なんでだろ?
俺がシアンを見ていると、シアンが急に真剣な顔つきになって、静かに頷いた。
俺は、オルタナを着地させて地面に飛び降りる。頭を下げているシアンの前に立つと、「どういうことだ?」といきなり聞いた。
シアンは、ゆっくりと顔を上げて、困った表情を浮かべた。
「申し訳ありません。皆様でゆっくりと過ごされていた所に水を差すような真似をしたことは、重々承知しております。どのような処罰も受けます。ですが、急いだ方がよろしいかと思いまして…」
「…処罰はしないよ。別に怒ってるわけじゃないから。ちょっと残念に思っただけ。でも要件が済んだら、またすぐに戻るからね!」
「はい。今度は気が済むまで滞在して下さって結構です。それでは、早速よろしいですか?中へ…」
「約束だよ。それで?」
俺はシアンに促されて歩き出す。シアンが向かった先は、あの怪しい男を拘束している地下牢だった。
「なに?あいつ何かしたの?」
「いえ…。強力な魔法で両手両足を拘束してますから、何も出来ません。…ただ、数日何を尋ねても黙っていた男が、五日前から妙なことを言い出したのです」
「妙なこと?」
地下牢がある建物に入り、地下に降りる階段横の部屋に一旦入る。
シアンに勧められて椅子に座ると、目の前にお茶を出された。
「お疲れでしょう。少し休んでください」
「俺よりもオルタナが疲れてるから、充分に水分と餌を与えてやって」
「はい」
俺の横に立ち、地下牢がある方向を見つめるシアンの顔が、とても険しい。
これはとても良くないことだなと、俺はお茶を飲みながら思った。
「それで?何あいつ、まだ生贄だとか言ってるの?」
「はあ…まあ。生贄というか…。カナデ様のように他の世界から人が降ってきたと言うのです」
「はあ?」
俺は、飲もうとしたお茶を思わず零すところだった。
なんだそれ。母さまは、あいつが生贄にする為に呼んだんだろ。その話を聞いた時は腹が立ったけど、そのおかげで父さまと母さまが出会って俺が生まれたから、まあ良しとしよう。
でも今回降ってきたという人間は?またあいつが呼んだのか?
「適当なことを言ってるんじゃないの?」
「はい…。俺も信じてはないのですが。とにかくあの男が、カエン様を呼べとうるさいのです。詳しくはカエン様にしか話さないと…」
「はあ…っ、俺、気に入られちゃったのかな…。わかった。あいつに会いに行こう」
「俺が何とかしようと思ったのですが。本当に申し訳ありません」
「シアンは何も気にしなくていいよ。あ、それと父さまは元気になったから。ただ髪の毛が短くなってしまったんだ。綺麗な髪だったのに。でも短髪も似合ってかっこいいんだよ」
「アルファム様は、美しいですから。カエン様も、最近特に美しくなってきております」
「俺?そうなのかなあ。それでさ、父さまと話してて髪の毛を伸ばすことにした」
「ああ、それはいい。きっとお似合いですよ」
部屋を出て、階段を降りながらシアンと話す。
俺ににこりと笑いかけるシアンも、かなり美しい容姿をしている。女の人からの人気も高い。でもずっと独身なんだよな。なんでだろ?
俺がシアンを見ていると、シアンが急に真剣な顔つきになって、静かに頷いた。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
狂宴〜接待させられる美少年〜
はる
BL
アイドル級に可愛い18歳の美少年、空。ある日、空は何者かに拉致監禁され、ありとあらゆる"性接待"を強いられる事となる。
※めちゃくちゃ可愛い男の子がひたすらエロい目に合うお話です。8割エロです。予告なく性描写入ります。
※この辺のキーワードがお好きな方にオススメです
⇒「美少年受け」「エロエロ」「総受け」「複数」「調教」「監禁」「触手」「衆人環視」「羞恥」「視姦」「モブ攻め」「オークション」「快楽地獄」「男体盛り」etc
※痛い系の描写はありません(可哀想なので)
※ピーナッツバター、永遠の夏に出てくる空のパラレル話です。この話だけ別物と考えて下さい。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる