372 / 432
10
しおりを挟む
寝息を立て始めた父さまを部屋に残して、俺は、母さまの石碑がある場所へと向かった。
石碑の周りの地面には、父さまとあの男が戦った跡が、あちらこちらに残っている。
男の言うことを信じずに、ここへ来て良かった。とりあえず父さまを助けることが出来た。
俺は、今更ながらに安堵の息を吐いて、石碑にそっと手を置いた。
「カナ、父さまは無事だよ。綺麗な赤の髪の毛が短くなっちゃったけど、短くても似合ってるよ、かっこいい。父さまの短髪姿、カナにも見せたかったなあ。逆に俺は、伸ばしてみようかな。カナはどう思う?カナも伸ばしたことなかったよね。きっと似合ってたのに…」
言い終わると同時にくらいに、柔らかい風が吹いて俺の頬を撫でた。
まるで母さまに撫でられた気持ちになって、とても母さまが恋しくなって、泣きそうになった。
「昔にカナを襲ったとかいう変な男も、俺が懲らしめてやったからね。カナと同じ黒髪だからと俺を狙って来たんだ。強かったけど、俺の方が強かった。でも父さまとは離れていたから、助けることが出来なかった…。今回は何とか無事だったから良かったけど。俺に守れる力があるのに、もし守れていなかったらとても後悔してた…。ねえカナ、俺の守りたいものを全て守るには、どうしたらいいかな」
俺は、石碑を抱きしめて目を閉じた。
母さまには、何でも相談できた。母さまはいつも、「カエンはすごいね」と褒めてくれた。
今日父さまに頑張ったと褒めてもらったけど、母さまにも褒めてもらいたい。
俺は王になるのだからと我慢してたけど、本当はもっと母さまに甘えたかったんだ。
また柔らかい風が吹いて、俺の周りをぐるぐると回る。
俺が顔を上げると、母さまと同じ俺の黒髪を優しく揺らして消えた。
「カナ…褒めてくれたの?ありがとう」
少し寂しかった気持ちが満たされて、俺は石碑を見て微笑んだ。
その時、表の方から騒がしい声が聞こえてきた。俺は、急いで表に向かった。
表の広場に、ローラントおじさんがいた。
父さまに吹き飛ばされたという九人の兵達も、腕や足を押さえながら座り込んでいた。
石碑の周りの地面には、父さまとあの男が戦った跡が、あちらこちらに残っている。
男の言うことを信じずに、ここへ来て良かった。とりあえず父さまを助けることが出来た。
俺は、今更ながらに安堵の息を吐いて、石碑にそっと手を置いた。
「カナ、父さまは無事だよ。綺麗な赤の髪の毛が短くなっちゃったけど、短くても似合ってるよ、かっこいい。父さまの短髪姿、カナにも見せたかったなあ。逆に俺は、伸ばしてみようかな。カナはどう思う?カナも伸ばしたことなかったよね。きっと似合ってたのに…」
言い終わると同時にくらいに、柔らかい風が吹いて俺の頬を撫でた。
まるで母さまに撫でられた気持ちになって、とても母さまが恋しくなって、泣きそうになった。
「昔にカナを襲ったとかいう変な男も、俺が懲らしめてやったからね。カナと同じ黒髪だからと俺を狙って来たんだ。強かったけど、俺の方が強かった。でも父さまとは離れていたから、助けることが出来なかった…。今回は何とか無事だったから良かったけど。俺に守れる力があるのに、もし守れていなかったらとても後悔してた…。ねえカナ、俺の守りたいものを全て守るには、どうしたらいいかな」
俺は、石碑を抱きしめて目を閉じた。
母さまには、何でも相談できた。母さまはいつも、「カエンはすごいね」と褒めてくれた。
今日父さまに頑張ったと褒めてもらったけど、母さまにも褒めてもらいたい。
俺は王になるのだからと我慢してたけど、本当はもっと母さまに甘えたかったんだ。
また柔らかい風が吹いて、俺の周りをぐるぐると回る。
俺が顔を上げると、母さまと同じ俺の黒髪を優しく揺らして消えた。
「カナ…褒めてくれたの?ありがとう」
少し寂しかった気持ちが満たされて、俺は石碑を見て微笑んだ。
その時、表の方から騒がしい声が聞こえてきた。俺は、急いで表に向かった。
表の広場に、ローラントおじさんがいた。
父さまに吹き飛ばされたという九人の兵達も、腕や足を押さえながら座り込んでいた。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる