炎の国の王の花

明樹

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俺が泣き止むまで、父さまはずっと頭を撫でてくれた。
まだ身体が痛いだろうししんどいのに、撫でてくれるその手が優しくて、中々涙が止まらなかった。

ようやく泣き止んで、ベッド横の棚の上に置いていた布で顔を拭う。
鼻をすすりながら父さまと目が合うと、俺は照れ笑いを浮かべた。

「…ところで、護衛についてきた兵や、元々ここにいた兵達はどうしたの?」
「ああ…。まだ戻らぬか…」
「え?どういうこと?」

俺が首を傾げると、父さまは深く息を吐きながら、ゆっくりと話し出した。

「…怪しい男が、リオを…攻撃…している隙に、魔法で…爆炎を起こして、全員を…遠くに…飛ばした。城を越えて…飛んでいったから、たぶん…森に…いると思う…。落下の…衝撃で、まだ…眠ってるのかもな…」
「森の中に?来る時、よく注意をして見てなかったから、わからなかったな…。ね、おじさん」
「ああ。気が急いていたから、余計に気づかなかったな。よし、今から捜しに行ってくるよ」

ローラントおじさんが、父さまの手を握ると、「ちょっと行ってくる。カエン、兄上を頼んだぞ」と微笑んで出て行った。

ローラントおじさんの背中を見送って、俺は考える。

「爆炎…ってさあ、その人達、吹っ飛ばされた訳だろ?大丈夫なのかな…」
「たぶん…。あの男から…遠ざけることしか…考えて、なかったからな。木の枝が、衝撃を和らげて…くれるだろうし…皆、受け身も…取れるから、大丈夫だと…思うぞ…」
「そっか、そうだね!しかしあの男、結構強かったよね。俺を殺すとか言ってて気持ち悪かったし」

血色の悪い男の顔と赤い目を思い出して、嫌な気持ちになる。
父さまが、俺の手の上に手を重ねて「どうやって…倒した?」と聞いてきた。

「うーん…。あのさ、知ってる?炎には四つの種類があるんだよ。父さまや位の高い者達が使ってる炎は、赤い炎だよね。というか、皆それしか使えないよね?俺は、赤、黄色、白、青の炎が使える」
「四つの炎…」
「そう。赤でも充分に威力がある。でも黄色は赤よりも強く、白、青になると城一つくらいなら消し飛ばせる威力がある。俺さ…あの男に白と青の炎を使おうとして、シアンに慌てて止められたんだ。『城が壊れます!』って」
「カエン…おまえ…」

本当は思いっきり魔法を使いたかったのにな…と、シアンに止められた時のことを思い出して頬を膨らませていると、父さまが、とても驚いた様子で俺を見ていた。
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