359 / 432
2
しおりを挟む
どんなに川底を捜しても、周辺一帯を捜しても、カナと男は見つからなかった。
でも見つからないということは、どこかで必ず生きている。
そう信じて、俺はカナを捜し続けた。
もしかするとカナと出会った海辺の城に戻って来るかもしれないと、俺は海辺の城でカナを待ち続けた。
そして本当に、カナは最初に出会った時と同じように、海辺の城近くの崖に落ちてきた。
あの死神のような男と一緒に。
カナと男を引き剥がしてカナだけを救い、男は海の中に消えた。
今度こそ安心だと、喜んだ。
カナを中央の城に連れて帰り、準備を整えて婚儀を執り行い、王妃にした。
その後は、多少の揉め事もあったが、難しいといわれる出産をカナが頑張ってくれて、子供も出来た。最高に幸せだった。
なのに、思いもよらない若さで、カナが死んだ。
俺はカナを離したくなくて、勝手なことをして皆を困らせた。
だけどカナの死を受け入れる決心がついて、カナと出会い埋葬した海辺の城で、穏やかに暮らし始めた時だった。
十七年前に海に沈んだ男が、再び現れたのだ。
カナが眠る石碑の前で、リオと話している時だった。
ふいに影が差して顔を上げると、黒いマントとフードを被った男が、前に立っていた。
「誰だっ!どうやって入った!」
「…あいつは、どこだ?」
「は?何のことだっ!」
リオが、立ち上がって腰の剣を抜く。
男は、チラリとリオを見ると、首を傾けた。
「んん…、おまえの顔は、何となく覚えている。あの時いたな…」
「俺はおまえなど知らん!」
「そこの赤い髪のおまえ。おまえのことは、忘れたことはないぞ。あいつはどこだ?」
「俺もおまえなど知らんぞ。それにあいつとは誰のことを言ってる?」
「あいつだよあいつ。俺がこの世界に呼び寄せた、黒い髪の生贄だ!」
「なにっ!?」
俺も立ち上がり、腰に帯びた剣の柄に手をかけた。
「…そうか、思い出した。十七年ほど前に、海に落ちた奴だな」
「そうだ。もう少しであいつを殺せそうだったのに、おまえに邪魔をされて出来なかったっ」
「しつこい奴だ。まだカナを狙ってたのか」
「早く出せ!あいつをっ!今度こそ息の根を止めてやるっ!」
「ふん、それは無理だ」
「なんだと?」
俺は、男の赤い目を睨みつけた。
その赤い目が、怒りなのか吊り上がっている。
「カナは、もうこの世にいない。おまえは、殺すことは出来ないぞ」
「…は?はあ?あいつ、死んだのかっ!」
男が、白い顔を赤くして叫ぶ。
俺の気持ちが落ち着いたと思っていたが、まだカナの死を口にするのは、とても辛い。
「おまえの目的は失われたのだ。早く去れ」
剣を抜いて、男に向けながら静かに言う。
往生際が悪いのか、男は更にしつこく聞いてきた。
でも見つからないということは、どこかで必ず生きている。
そう信じて、俺はカナを捜し続けた。
もしかするとカナと出会った海辺の城に戻って来るかもしれないと、俺は海辺の城でカナを待ち続けた。
そして本当に、カナは最初に出会った時と同じように、海辺の城近くの崖に落ちてきた。
あの死神のような男と一緒に。
カナと男を引き剥がしてカナだけを救い、男は海の中に消えた。
今度こそ安心だと、喜んだ。
カナを中央の城に連れて帰り、準備を整えて婚儀を執り行い、王妃にした。
その後は、多少の揉め事もあったが、難しいといわれる出産をカナが頑張ってくれて、子供も出来た。最高に幸せだった。
なのに、思いもよらない若さで、カナが死んだ。
俺はカナを離したくなくて、勝手なことをして皆を困らせた。
だけどカナの死を受け入れる決心がついて、カナと出会い埋葬した海辺の城で、穏やかに暮らし始めた時だった。
十七年前に海に沈んだ男が、再び現れたのだ。
カナが眠る石碑の前で、リオと話している時だった。
ふいに影が差して顔を上げると、黒いマントとフードを被った男が、前に立っていた。
「誰だっ!どうやって入った!」
「…あいつは、どこだ?」
「は?何のことだっ!」
リオが、立ち上がって腰の剣を抜く。
男は、チラリとリオを見ると、首を傾けた。
「んん…、おまえの顔は、何となく覚えている。あの時いたな…」
「俺はおまえなど知らん!」
「そこの赤い髪のおまえ。おまえのことは、忘れたことはないぞ。あいつはどこだ?」
「俺もおまえなど知らんぞ。それにあいつとは誰のことを言ってる?」
「あいつだよあいつ。俺がこの世界に呼び寄せた、黒い髪の生贄だ!」
「なにっ!?」
俺も立ち上がり、腰に帯びた剣の柄に手をかけた。
「…そうか、思い出した。十七年ほど前に、海に落ちた奴だな」
「そうだ。もう少しであいつを殺せそうだったのに、おまえに邪魔をされて出来なかったっ」
「しつこい奴だ。まだカナを狙ってたのか」
「早く出せ!あいつをっ!今度こそ息の根を止めてやるっ!」
「ふん、それは無理だ」
「なんだと?」
俺は、男の赤い目を睨みつけた。
その赤い目が、怒りなのか吊り上がっている。
「カナは、もうこの世にいない。おまえは、殺すことは出来ないぞ」
「…は?はあ?あいつ、死んだのかっ!」
男が、白い顔を赤くして叫ぶ。
俺の気持ちが落ち着いたと思っていたが、まだカナの死を口にするのは、とても辛い。
「おまえの目的は失われたのだ。早く去れ」
剣を抜いて、男に向けながら静かに言う。
往生際が悪いのか、男は更にしつこく聞いてきた。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
裏切られた人生に
藍
BL
かつて親友だった国の皇子に裏切られ、宮廷魔法師だったラウルは自死を選択する。ちゃんと自分の首を切り死んだはずだったが、目を覚ますと5歳に戻っていた。もう二度とあの男とは関わらないと決め、以前から夢であった冒険者になり、1人でひっそりと旅をしようと思っていたラウルだがある男と出会う。
展開が大分ゆっくりです。
※R18シーンは*で記載します。
※メインカプとは違うR18シーンがあるため注意してください。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる