炎の国の王の花

明樹

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話を終えると、父さまはまた、母さまがいる部屋に入ってしまった。
シアンとリオは遠慮していたけど、俺は母さまの傍にいたかったから、父さまに続いて部屋に入った。

扉の開く音に、父さまが振り向く。

「なんだ?まだ何か話があるのか?」
「違うよ。俺もカナの顔を見ていたいんだ。いいだろ?ここにいても」
「ああ」

父さまが座る隣に立って、母さまの顔を覗き込む。

「生前と全く変わらないね。優しい顔をしてる。でもさ、魔法をかけるのに、かなり力を消耗しない?」
「する。でも、カナがいつまでもこのままでいてくれるのなら、俺の生命力を全て注いでもいい」

俺は、ふぅ…と息を吐いて、母さまを目を向けたまま話し続ける。

「それだけ深く愛されて、カナは本当に幸せだね。でもさ、人は死んだらお別れの儀式をして、ちゃんと土に埋めてあげないと駄目だよ。そうしないと、次に生まれ変わることが出来ない」
「生まれ変わる?どこに?」
「さあ?でもさ、父さまとカナは、こんなにも愛し合ってたんだから、きっとまた一緒になれるよ。だから早くカナを送ってあげよう?そうしないと、カナはずっとどこかを彷徨って、来世で父さまと会えなくなるかもしれないよ?」
「それは…困るな」
「だろ?」

俺は、父さまの肩に手を置いた。そして驚いた。
あんなにも逞しかった父さまの肩が、とても薄くなっていたからだ。
顔色だってすごく悪い。俺と同じ緑の瞳には光がない。
このままじゃ、父さままで病気になってしまうんじゃないかと、怖くなった。

「父さま…、昔にカナが言ってたんだけど、カナがいた世界では、亡くなった人の髪を、お守りとして持つ人もいるらしいよ。だから、カナの尊い黒髪を肌身離さず持って、ちゃんと埋葬してあげよう。そして父さまは、カナが眠る海辺の城で、のんびりと暮らしてよ」
「そうか…カナの髪をな…」

父さまが、母さまの黒髪を優しく撫でる。
母さまの髪を梳く指も、細くなっていて、見ていると悲しくなってきた。

あまり、食事も摂ってないんだろうな。
よし!今日は無理矢理にでも食べさせてやろう。皆で食べると美味しいし。

早速リオに買い出しに行ってもらおうと決めて、「また後で来るよ」と父さまに声をかけると部屋を後にした。
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