炎の国の王の花

明樹

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「じゃあ行ってくるよ。留守をよろしく頼みます」
「任せといて。カエン、必ず兄上を連れ帰ってね」
「はい、ローラントおじさん」

イグニスの森の場所がわかってから三日後に、俺とシアン、リオの三人で城を出た。
父さまがいないことを知っている人は限られているから、皆が寝静まっている夜中に、こっそりと城を発った。
人払いをした城の裏側から、順番に空へと翔んでいく。
俺だけ赤いマントを、二人は黒いマントを羽織って、無言で進んで行く。
途中、何度か休憩を挟んで、夜はシアンが手配をしてくれた小さな宿に泊まった。
そしてまた早朝に出発をして、夜遅くにイグニスの森の手前まで来た。

「あそこに見えている黒い塊が、イグニスの森です。月明かりしか頼るものがない夜では、家を探しにくい。明日、明るくなると同時に、探しに行きましょう」
「そうだな。暗いと空からも探せない」
「では、この近くに大きな農家があります。そこで世話になる手配を済ませてます。今日は早く休んで明日に備えましょう」
「シアン、何かとありがとう」
「当然のことをしたまでです。でも、礼は素直に受け取っておきましょう」

普段はあまり笑わないシアンが、ふわりと笑う。
シアンも、もうすぐ父さまに会えることで、ホッとしたのだろう。

「リオ?疲れたの?静かだね」
「まあ疲れましたけど。それよりも、アルファム様に近づいて来て、少し緊張してきました…。素直に城に戻ってくれるでしょうか…」
「それはわからない。父さまが何を考えてるのか、父さましかわからないから。もし素直に戻ってくれなくても、このままじゃ駄目だから。俺は、根気よく話をするよ。カナの…海辺の城に埋めて欲しいって言う願いを、ちゃんと聞いてあげなきゃ…」
「…そうですね。そうとなれば、いっぱい食べていっぱい寝ましょう!シアン様、早く宿へっ」
「おまえは本当に単純だな…」

聞こえなかったのか、え?と首を傾げるリオを見て、何だか肩の力が抜けた。
俺も、もうすぐ父さまに会えると思って、緊張していたようだ。
俺が、しっかりとしなければ。
そして、早く父さまに会いたい。母さまに会いたい。
母さまの身体は今、どうなってるの?
まだ、朽ちない魔法は効いてるの?

俺は、宿に向かって進み出したシアンの馬の後を着いて行くオルタナの手網を、強く握りしめた。

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