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奏の想い 9
城に戻ると、すでに日が傾き始めていた。
カエンが、心配してヴァイスの厩舎の前で待っていたけど、俺が笑って手を振ると、笑い返してくれた。
もう夕食の準備も出来ていたので、俺の提案で、大広間でシアンやホルガー、リオも呼んで、皆で食べることになった。
急にそんなことを言い出した俺に、アルファムがしつこく「どうかしたのか?」と聞いてきて、とても困ったけど。
「別になんでもないよ。たまにはいいかなと思ったんだ。今日はやりたいことが出来て気分がいいしさ」
「本当にそれだけか?」
「うん。アルってほんと、いつまで経っても心配性だよねぇ」
俺がそう言って笑うと、アルファムもやっと笑った。
ーーああ、また嘘ついちゃった。ごめんねアル。
俺は、心の中で謝ると、アルファムの手を握って大広間へと向かった。
皆との食事は楽しかった。
この城の人達は、良い人ばかりだ。
きっとこれからも、皆で平和な国造りをしていくだろう。
そこに俺がいないのは寂しいけど、安心して空から見ているよ。
「カナ、疲れたか?」
楽しそうに話す皆をぼんやりと見ていると、ふいにアルファムに手を握られた。
その手を握り返して「うん」と頷く。
「さすがに疲れた。眠い…」
「では部屋に戻ろう。皆、俺達は部屋に戻るが、そのまま続けてくれ」
「はい。カナデ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。眠くなってきたんだ。先に失礼するね」
「ゆっくりとお休みになってください」
シアンが席を立とうとするのを、アルファムが手で制する。
「カナ、おやすみ。また明日な」
「うん、おやすみリオ、ホルガー」
「おやすみなさいませ」
俺は、立ち上がって、一人一人に挨拶をする。
カエンの傍に行くと、「おやすみ」と言って、カエンの頬にキスをした。
そして離れようとする俺の手を、カエンが慌てて掴む。
「なに?」
「なにって、こっちの台詞だよっ。カナ、本当に大丈夫?」
「うん。少し疲れて眠いだけだから。また明日」
難しい顔をしながら、カエンがようやく手を離した。
カエンは勘の鋭い子だ。何か気づいたのかもしれない。
アルファムの元へ歩きながら、俺は唇を固く結ぶ。ぐっとお腹に強く力を入れてないと、涙が出そうになる。
俺は、俺の肩を抱き寄せるアルファムの胸に顔を隠すようにして、大広間を後にした。
城に戻ると、すでに日が傾き始めていた。
カエンが、心配してヴァイスの厩舎の前で待っていたけど、俺が笑って手を振ると、笑い返してくれた。
もう夕食の準備も出来ていたので、俺の提案で、大広間でシアンやホルガー、リオも呼んで、皆で食べることになった。
急にそんなことを言い出した俺に、アルファムがしつこく「どうかしたのか?」と聞いてきて、とても困ったけど。
「別になんでもないよ。たまにはいいかなと思ったんだ。今日はやりたいことが出来て気分がいいしさ」
「本当にそれだけか?」
「うん。アルってほんと、いつまで経っても心配性だよねぇ」
俺がそう言って笑うと、アルファムもやっと笑った。
ーーああ、また嘘ついちゃった。ごめんねアル。
俺は、心の中で謝ると、アルファムの手を握って大広間へと向かった。
皆との食事は楽しかった。
この城の人達は、良い人ばかりだ。
きっとこれからも、皆で平和な国造りをしていくだろう。
そこに俺がいないのは寂しいけど、安心して空から見ているよ。
「カナ、疲れたか?」
楽しそうに話す皆をぼんやりと見ていると、ふいにアルファムに手を握られた。
その手を握り返して「うん」と頷く。
「さすがに疲れた。眠い…」
「では部屋に戻ろう。皆、俺達は部屋に戻るが、そのまま続けてくれ」
「はい。カナデ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。眠くなってきたんだ。先に失礼するね」
「ゆっくりとお休みになってください」
シアンが席を立とうとするのを、アルファムが手で制する。
「カナ、おやすみ。また明日な」
「うん、おやすみリオ、ホルガー」
「おやすみなさいませ」
俺は、立ち上がって、一人一人に挨拶をする。
カエンの傍に行くと、「おやすみ」と言って、カエンの頬にキスをした。
そして離れようとする俺の手を、カエンが慌てて掴む。
「なに?」
「なにって、こっちの台詞だよっ。カナ、本当に大丈夫?」
「うん。少し疲れて眠いだけだから。また明日」
難しい顔をしながら、カエンがようやく手を離した。
カエンは勘の鋭い子だ。何か気づいたのかもしれない。
アルファムの元へ歩きながら、俺は唇を固く結ぶ。ぐっとお腹に強く力を入れてないと、涙が出そうになる。
俺は、俺の肩を抱き寄せるアルファムの胸に顔を隠すようにして、大広間を後にした。
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