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「お茶も美味しいけど、このパンケーキがすごく美味しい!」
「うん。今度料理人に頼んで作ってもらおう」
店は、テーブルが五つ並んでるだけの小ささだった。だけど、とても綺麗に掃除がされていて、居心地がいい。
俺達が店に入ると、二つのテーブルが埋まっていた。
俺達は、端のテーブルに案内され、反対側の端のテーブルに、後から入ってきた四人が案内された。
因みに後から入ってきた四人は、俺達の護衛だ。常に俺達から目を離さないように、特に母さまを護るようにと命令されている。
「よくそんな甘いものを食べれるものだな…。だが、カナの嬉しそうな顔を見れて、俺も嬉しい」
「そう?はい、アル」
腕を組んで俺達を見ていた父さまの口元に、母さまがフォークに刺したパンケーキを持っていく。
咄嗟に開けた父さまの口の中にパンケーキを押し込んで、母さまがにこりと笑った。
「ほら、美味しいだろ?アルもたまには甘いもの食べようよ。疲れが取れるよ」
「…疲れはおまえで取るからいい」
被ったままのフードを更に深くして、父さまが顔を背ける。
隣に座る母さまからは、父さまの様子がよく見えないだろうけど、向かい側に座る俺からは、照れてほんのり赤くなった父さまの顔が見えた。
店に入ってもマントを羽織りフードを被ったままの俺達は、注目の的だ。
でもフードを取ってしまうと、もっと注目されてしまう。
そして護衛の人達もフードを深く被ったままなので、店の中が、かなり異様な雰囲気になっている。
「カナ、美味しいけど早く店を出た方がいいかも。店の人や他のお客さんが困ってるよ」
「そうだね。俺達、怪しいもんね」
顔を突き出して、コソコソと話す俺と母さまに、父さまがぽつりと言う。
「ゆっくりと過ごしたければ、今度貸し切ればいい」
「いいの?」
父さまは、深く頷いて、母さまの口端についた、パンケーキに乗っていたクリームを、指で拭って舐めた。
「早く出た方がいいかもしれぬが、落ち着いて食え。おまえはいつまで経っても可愛いな」
父さまのとびきりの笑顔に、今度は母さまの顔が、一瞬で赤く染まった。
俺までも、なんかドキドキとしてくる。
父さまは、本当に威厳があって綺麗だな。
俺は、似てるとは言われるけど、あそこまで綺麗じゃないと思う。
でもいつか、父さまと並ぶか越える王になりたいな。
「美味しかった!ご馳走様でした」
母さまが、両手を合わせてるのを見て、俺も皿に残ったものを、慌てて口に入れた。
店を出た後、街の中を見て回って城に戻った。
途中で立ち寄った店で、母さまが緑のカップを三つ買った。「アルとカエンの瞳の色だ」とはしゃいで。
どれだけ父さまと俺の目が好きなんだよと母さまの目を覗く。
カップを見つめる母さまの琥珀色の瞳が、太陽の光に反射してキラキラと輝いている。
父さまの言ってた通り、本当に宝石みたいだと、俺は目を細めていつまでも見ていた。
「うん。今度料理人に頼んで作ってもらおう」
店は、テーブルが五つ並んでるだけの小ささだった。だけど、とても綺麗に掃除がされていて、居心地がいい。
俺達が店に入ると、二つのテーブルが埋まっていた。
俺達は、端のテーブルに案内され、反対側の端のテーブルに、後から入ってきた四人が案内された。
因みに後から入ってきた四人は、俺達の護衛だ。常に俺達から目を離さないように、特に母さまを護るようにと命令されている。
「よくそんな甘いものを食べれるものだな…。だが、カナの嬉しそうな顔を見れて、俺も嬉しい」
「そう?はい、アル」
腕を組んで俺達を見ていた父さまの口元に、母さまがフォークに刺したパンケーキを持っていく。
咄嗟に開けた父さまの口の中にパンケーキを押し込んで、母さまがにこりと笑った。
「ほら、美味しいだろ?アルもたまには甘いもの食べようよ。疲れが取れるよ」
「…疲れはおまえで取るからいい」
被ったままのフードを更に深くして、父さまが顔を背ける。
隣に座る母さまからは、父さまの様子がよく見えないだろうけど、向かい側に座る俺からは、照れてほんのり赤くなった父さまの顔が見えた。
店に入ってもマントを羽織りフードを被ったままの俺達は、注目の的だ。
でもフードを取ってしまうと、もっと注目されてしまう。
そして護衛の人達もフードを深く被ったままなので、店の中が、かなり異様な雰囲気になっている。
「カナ、美味しいけど早く店を出た方がいいかも。店の人や他のお客さんが困ってるよ」
「そうだね。俺達、怪しいもんね」
顔を突き出して、コソコソと話す俺と母さまに、父さまがぽつりと言う。
「ゆっくりと過ごしたければ、今度貸し切ればいい」
「いいの?」
父さまは、深く頷いて、母さまの口端についた、パンケーキに乗っていたクリームを、指で拭って舐めた。
「早く出た方がいいかもしれぬが、落ち着いて食え。おまえはいつまで経っても可愛いな」
父さまのとびきりの笑顔に、今度は母さまの顔が、一瞬で赤く染まった。
俺までも、なんかドキドキとしてくる。
父さまは、本当に威厳があって綺麗だな。
俺は、似てるとは言われるけど、あそこまで綺麗じゃないと思う。
でもいつか、父さまと並ぶか越える王になりたいな。
「美味しかった!ご馳走様でした」
母さまが、両手を合わせてるのを見て、俺も皿に残ったものを、慌てて口に入れた。
店を出た後、街の中を見て回って城に戻った。
途中で立ち寄った店で、母さまが緑のカップを三つ買った。「アルとカエンの瞳の色だ」とはしゃいで。
どれだけ父さまと俺の目が好きなんだよと母さまの目を覗く。
カップを見つめる母さまの琥珀色の瞳が、太陽の光に反射してキラキラと輝いている。
父さまの言ってた通り、本当に宝石みたいだと、俺は目を細めていつまでも見ていた。
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