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「さあっ、薬も飲んだし!アル、お願いがあるんだけど」
「なんだ?」
父さまに向き直り、両手を胸の前で組んだ母さまが、上目遣いで父さまを見る。
父さまも、優しい目をして母さまを見つめた。
「俺とアルとカエンで、街に行きたい。使用人にね、美味しいお茶が飲める店を教えてもらったんだ。だから三人で飲みたい」
「……おまえが大丈夫なら、いいぞ」
「ほんとっ?ありがとう!アル!」
母さまが立ち上がり、父さまの首に抱きつく。
父さまは、そっと母さまを抱き寄せて、頬に唇をつけた。
物心ついた頃からわかっていたけど、父さまは、母さまにだけ特別優しい。何でも言うことを聞いてあげる。
でも、母さまの身に少しでも危険が及びそうなことは、はっきりと駄目だと怒っていた。とても怖い顔で怒っていた。母さまが落ち込んだように俯くと、すぐに慰めていたけど。
母さまの体調があまり良くないとわかってからは、更に優しくなった。なるべく母さまのやりたいことは、やらせてあげたいみたいだ。
だから今、街に行きたいという母さまの願いを、すんなりと聞き入れたんだ。
すごく納得がいってない顔をしてはいるけども…。
「じゃあ俺、もう一度上着とマント取ってくる。カナは暖かい格好をして待ってて!」
「わかった」
母さまは、「子供に注意される日が来るとは…」と言いながらも、顔が嬉しそうだ。
俺は急いで部屋に戻り準備をして、再び父さまと母さまのいる部屋に戻った。
父さまの赤い髪も、母さまと俺の黒い髪も、とても目立つから、三人とも灰色のマントを羽織り、フードを深く被って髪の毛と顔を隠すようにした。
このような格好をした旅人がたくさんいるから、大丈夫だと思ったのだけど、チラチラと俺達に視線を感じる。
マントでは隠しきれないオーラが父さまから出てるのか、フードの下から覗く母さまの白い肌が眩しいのか…。
正体がバレたら大騒ぎになるよな…と考え込んでいると、「ここだよ」という母さまの声が聞こえた。
顔を上げると、母さまが、看板の横に立っている。父様の瞳の色のような綺麗な緑の看板を、母さまが嬉しそうに触っていた。
「見て、この看板!アルとカエンの目と同じ色だよ。綺麗だよねぇ」
「そうか?おまえの瞳の方が綺麗だぞ」
父さまが、すかさず母さまを褒めて肩を抱く。
「アルだけだよ、そんなこと言うの…」と母さまは、不満そうに唇を尖らせた。
「俺の目って茶色じゃん。緑の方が絶対綺麗じゃん…」
「そんなことはない。おまえの目は、光が当たると輝いて宝石みたいになる」
「みんなそうだよ」
俺も、母さまが言ってることが正しいと頷く。
とにかく父さまの目には、母さまが輝いて見えているのだ。
「なんだ?」
父さまに向き直り、両手を胸の前で組んだ母さまが、上目遣いで父さまを見る。
父さまも、優しい目をして母さまを見つめた。
「俺とアルとカエンで、街に行きたい。使用人にね、美味しいお茶が飲める店を教えてもらったんだ。だから三人で飲みたい」
「……おまえが大丈夫なら、いいぞ」
「ほんとっ?ありがとう!アル!」
母さまが立ち上がり、父さまの首に抱きつく。
父さまは、そっと母さまを抱き寄せて、頬に唇をつけた。
物心ついた頃からわかっていたけど、父さまは、母さまにだけ特別優しい。何でも言うことを聞いてあげる。
でも、母さまの身に少しでも危険が及びそうなことは、はっきりと駄目だと怒っていた。とても怖い顔で怒っていた。母さまが落ち込んだように俯くと、すぐに慰めていたけど。
母さまの体調があまり良くないとわかってからは、更に優しくなった。なるべく母さまのやりたいことは、やらせてあげたいみたいだ。
だから今、街に行きたいという母さまの願いを、すんなりと聞き入れたんだ。
すごく納得がいってない顔をしてはいるけども…。
「じゃあ俺、もう一度上着とマント取ってくる。カナは暖かい格好をして待ってて!」
「わかった」
母さまは、「子供に注意される日が来るとは…」と言いながらも、顔が嬉しそうだ。
俺は急いで部屋に戻り準備をして、再び父さまと母さまのいる部屋に戻った。
父さまの赤い髪も、母さまと俺の黒い髪も、とても目立つから、三人とも灰色のマントを羽織り、フードを深く被って髪の毛と顔を隠すようにした。
このような格好をした旅人がたくさんいるから、大丈夫だと思ったのだけど、チラチラと俺達に視線を感じる。
マントでは隠しきれないオーラが父さまから出てるのか、フードの下から覗く母さまの白い肌が眩しいのか…。
正体がバレたら大騒ぎになるよな…と考え込んでいると、「ここだよ」という母さまの声が聞こえた。
顔を上げると、母さまが、看板の横に立っている。父様の瞳の色のような綺麗な緑の看板を、母さまが嬉しそうに触っていた。
「見て、この看板!アルとカエンの目と同じ色だよ。綺麗だよねぇ」
「そうか?おまえの瞳の方が綺麗だぞ」
父さまが、すかさず母さまを褒めて肩を抱く。
「アルだけだよ、そんなこと言うの…」と母さまは、不満そうに唇を尖らせた。
「俺の目って茶色じゃん。緑の方が絶対綺麗じゃん…」
「そんなことはない。おまえの目は、光が当たると輝いて宝石みたいになる」
「みんなそうだよ」
俺も、母さまが言ってることが正しいと頷く。
とにかく父さまの目には、母さまが輝いて見えているのだ。
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