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「苦い粉薬に甘い粉を混ぜて練って丸めました」と医師から説明を受けて、薬の入った容器を受け取った。俺は急いで部屋に戻ると、母さまに容器を渡す。
母さまは、容器の蓋を開けて茶色の丸い粒を見るなり、すぐに蓋を閉めた。
「え?カナ、何してんの?早く飲んで」
「んー…。これ、すごく苦そう」
「でもよく効くからってローラントおじさんがくれたんだからっ。ちゃんと飲まなきゃ!」
「そうだよね…。俺の為に手に入れてくれたんだもんね…。わかった。飲むよ」
母さまが頷いて、再び容器の蓋を開ける。
俺と父さまは、母さまが薬を飲む所を、じっと見つめた。
母さまは、薬を飲もうとして、その手を止めてしまう。そして困った顔をこちらに向けた。
「…なんでそんなに見るの…」
「いや、ちゃんと効くのかどうか気になって…」
「飲んだからってそんなすぐには効かないだろ?」
「…まあそうだが」
母さまの問いに答えた父さまの、少し落ち込んだ様子に笑って、ようやく母さまは、指で摘んでいた薬を口の中に入れた。
「うっ…!にがっ」
すごく険しい顔をしながら、水で薬を流し込む。
「うー…苦い…。この薬、あと何回飲めばいいの?」
「おまえが元気になるまでだ」
「元気だよ…」
まだ険しい顔のまま、少し俯いて母さまが呟いた。
俺は、容器を手に取って、顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
「カエン、どうしたの?」
「うーん、先生は、甘い粉も混ぜたって言ってたよ?それでも苦いの?」
「苦かった…。まだ口の中に残ってる。でもまあ、良薬は口に苦しって言うからね」
「なにそれ」
「俺の元いた世界にある言葉だよ。良く効く薬は苦いってこと」
「ふーん。カナのいた世界って不思議だね。俺も行ってみたいな」
「カエンが行ったら、アイドルかモデルになれるんじゃない?」
「あ…?もで…?」
「背が高いし、綺麗な顔で黒髪に緑の目だし、すごくモテるってことだよ」
「へぇ…そうかな」
俺は、モテるってよくわからないや。
俺の周りには、綺麗だと言われる人がたくさんいるから。
父さまは美しい王だと言われてるし、母さまも綺麗だし。シアンだって整った顔をしている。
リオも女の使用人に人気があるみたいだけど、そんなにかっこいいかなぁ?
俺も、よく人に見られるけど、王子として憧れられてるからか、父さまに似た見た目のせいなのか、よくわからない。
俺が首を傾げて考え込んでいると、ひやりと頬に冷たいものが触れて、肩を跳ねさせた。
母さまが、俺の頬に手を当てて笑っている。
「なに?」
「カエンは可愛い。俺よりも身体が大きくなってかっこよくなっても、俺にとってはいつまでも可愛い息子だよ」
「…知ってるよ。俺にとっても、カナは大好きな母さまだよ」
「うん」
さっき暖めたのに、もう母さまの手は冷たいのか…と、俺は泣きそうになるのを堪えて笑い返した。
母さまは、容器の蓋を開けて茶色の丸い粒を見るなり、すぐに蓋を閉めた。
「え?カナ、何してんの?早く飲んで」
「んー…。これ、すごく苦そう」
「でもよく効くからってローラントおじさんがくれたんだからっ。ちゃんと飲まなきゃ!」
「そうだよね…。俺の為に手に入れてくれたんだもんね…。わかった。飲むよ」
母さまが頷いて、再び容器の蓋を開ける。
俺と父さまは、母さまが薬を飲む所を、じっと見つめた。
母さまは、薬を飲もうとして、その手を止めてしまう。そして困った顔をこちらに向けた。
「…なんでそんなに見るの…」
「いや、ちゃんと効くのかどうか気になって…」
「飲んだからってそんなすぐには効かないだろ?」
「…まあそうだが」
母さまの問いに答えた父さまの、少し落ち込んだ様子に笑って、ようやく母さまは、指で摘んでいた薬を口の中に入れた。
「うっ…!にがっ」
すごく険しい顔をしながら、水で薬を流し込む。
「うー…苦い…。この薬、あと何回飲めばいいの?」
「おまえが元気になるまでだ」
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まだ険しい顔のまま、少し俯いて母さまが呟いた。
俺は、容器を手に取って、顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
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「苦かった…。まだ口の中に残ってる。でもまあ、良薬は口に苦しって言うからね」
「なにそれ」
「俺の元いた世界にある言葉だよ。良く効く薬は苦いってこと」
「ふーん。カナのいた世界って不思議だね。俺も行ってみたいな」
「カエンが行ったら、アイドルかモデルになれるんじゃない?」
「あ…?もで…?」
「背が高いし、綺麗な顔で黒髪に緑の目だし、すごくモテるってことだよ」
「へぇ…そうかな」
俺は、モテるってよくわからないや。
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「なに?」
「カエンは可愛い。俺よりも身体が大きくなってかっこよくなっても、俺にとってはいつまでも可愛い息子だよ」
「…知ってるよ。俺にとっても、カナは大好きな母さまだよ」
「うん」
さっき暖めたのに、もう母さまの手は冷たいのか…と、俺は泣きそうになるのを堪えて笑い返した。
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