310 / 432
28
しおりを挟む
医師と入れ替わるようにリオが入って来た。
大きな籠を持っていて、中の物を出して机に置いていく。
「カナデ、大丈夫?疲れたのかな?薬を飲むための水と、温かいお茶と甘い果実を持って来たから。食べれたら食べて」
「うん、後で食べるよ。ありがとうリオ」
母さまは、水の中に薬を入れて、全部飲み干した。
すごく苦そうな薬だし、俺は薬が嫌いだなぁと見つめていると、母さまと目が合った。
「カエン、薬を飲んだしもう大丈夫だよ。ほら、魔法や剣の練習をするなら行っておいで」
「嫌だ。カナが心配だからここにいる」
「え?練習はいいの?そっか…。カエンが傍にいてくれるなら、安心して休めるよ」
「でしょ?俺、何でもするよ!」
「じゃあ一緒に寝てくれる?」
「うん!」
母さまが、ベッドの端にずれて布団を持ち上げる。
俺は、靴を脱いでベッドにあがると、母さまの隣に寝転んだ。
「アル。カエンがいてくれるから、安心して仕事に戻って。来客があったからやる事がたまってるだろ?薬も飲んだし寝てれば治るから」
「…じゃあ行ってくる。すぐに終わらせて戻る。カエン、カナを頼んだぞ」
「わかった、父さま」
俺は、身体を起こすと、父さまの目を見て頷いた。
父さまが、母さまにキスをして、リオを引連れて出て行った。
「カナ、何か飲む?それとも食べる?」
「んー、じゃあお茶を飲もうかな。すごくいい匂いがしてくる…」
「うん。カナの好きな、果実が入ったやつだね」
俺はベッドから飛び降りると、カップに湯気の立つお茶を注いだ。
カップの取手を持って、ゆっくりと零さないように母さまに渡す。
「はい、カナ。熱そうだから気をつけてね」
「ありがとう」
母さまは、上半身を起こしてカップを受け取り、何度も息を吹きかけてから飲んだ。
「あつ!」と言いながら、少しずつお茶を飲み干す。
「美味しかった。じゃあ少し休もうかな。カエン、おいで」
母さまが、寝転んで俺に向かって両腕を伸ばす。
俺は、母さまの腕の中に寝転んだ。
母さまの胸に顔を寄せて、息を吸い込む。
母さまは、いつもほのかに甘い匂いがする。俺は、この匂いが大好きなんだ。この匂いに包まれると、すごく幸せな気分になるんだ。
「カナ、俺の元気をあげるから、早く元気になって」
「うーん…、元々元気なんだけどな。でも、カエンのおかげで、すっごく元気になってきた!」
「ほんと?」
「ほんと!眠るともっと元気になるよ。俺もカエンも。だから少し寝ようか。おやすみカエン」
「うん、おやすみカナ」
母さまの腕の中は、いつも暖かくて心地好い。
俺は、十を数えるうちに眠ってしまった。
退屈でつまんない時もあるけど、とても穏やかで幸せな毎日。
ずっとずっと、こんな日が続くといいなあ…。
大きな籠を持っていて、中の物を出して机に置いていく。
「カナデ、大丈夫?疲れたのかな?薬を飲むための水と、温かいお茶と甘い果実を持って来たから。食べれたら食べて」
「うん、後で食べるよ。ありがとうリオ」
母さまは、水の中に薬を入れて、全部飲み干した。
すごく苦そうな薬だし、俺は薬が嫌いだなぁと見つめていると、母さまと目が合った。
「カエン、薬を飲んだしもう大丈夫だよ。ほら、魔法や剣の練習をするなら行っておいで」
「嫌だ。カナが心配だからここにいる」
「え?練習はいいの?そっか…。カエンが傍にいてくれるなら、安心して休めるよ」
「でしょ?俺、何でもするよ!」
「じゃあ一緒に寝てくれる?」
「うん!」
母さまが、ベッドの端にずれて布団を持ち上げる。
俺は、靴を脱いでベッドにあがると、母さまの隣に寝転んだ。
「アル。カエンがいてくれるから、安心して仕事に戻って。来客があったからやる事がたまってるだろ?薬も飲んだし寝てれば治るから」
「…じゃあ行ってくる。すぐに終わらせて戻る。カエン、カナを頼んだぞ」
「わかった、父さま」
俺は、身体を起こすと、父さまの目を見て頷いた。
父さまが、母さまにキスをして、リオを引連れて出て行った。
「カナ、何か飲む?それとも食べる?」
「んー、じゃあお茶を飲もうかな。すごくいい匂いがしてくる…」
「うん。カナの好きな、果実が入ったやつだね」
俺はベッドから飛び降りると、カップに湯気の立つお茶を注いだ。
カップの取手を持って、ゆっくりと零さないように母さまに渡す。
「はい、カナ。熱そうだから気をつけてね」
「ありがとう」
母さまは、上半身を起こしてカップを受け取り、何度も息を吹きかけてから飲んだ。
「あつ!」と言いながら、少しずつお茶を飲み干す。
「美味しかった。じゃあ少し休もうかな。カエン、おいで」
母さまが、寝転んで俺に向かって両腕を伸ばす。
俺は、母さまの腕の中に寝転んだ。
母さまの胸に顔を寄せて、息を吸い込む。
母さまは、いつもほのかに甘い匂いがする。俺は、この匂いが大好きなんだ。この匂いに包まれると、すごく幸せな気分になるんだ。
「カナ、俺の元気をあげるから、早く元気になって」
「うーん…、元々元気なんだけどな。でも、カエンのおかげで、すっごく元気になってきた!」
「ほんと?」
「ほんと!眠るともっと元気になるよ。俺もカエンも。だから少し寝ようか。おやすみカエン」
「うん、おやすみカナ」
母さまの腕の中は、いつも暖かくて心地好い。
俺は、十を数えるうちに眠ってしまった。
退屈でつまんない時もあるけど、とても穏やかで幸せな毎日。
ずっとずっと、こんな日が続くといいなあ…。
0
お気に入りに追加
1,670
あなたにおすすめの小説


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる