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番外編 芽吹き 67
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ちびアルの誕生三十日目に、お披露目をすることが決まった。
貴族や城内の者、国民に、アルファムと俺の間に子が産まれたことを知らせるのだ。
そして、水の国、月の国、日の国、風の国、山の国の五ヶ国にも使者を出す。
水の国のレオナルトや日の国のサッシャは、すごく驚くだろうけど喜んでくれると思う。
月の国のシルヴィオ王や風の国のバルテル王子は、どんな反応を示すのだろう?
まさか、産まれた子供が黒髪だと知って、拐いい来ないだろうな…と少し不安になる。
でも、そんな心配をするよりも、先にやらなければならないことがある。
ちびアルの名前を決めることだ。
お披露目までは、後二週間程しかない。
でも未だ、名前を決めかねている。
アルファムは、幾つか考えてはいるようだ。
でも俺が、どんなのを考えてるのか教えてと言っても、教えてくれない。
俺が「その名前でいい」と言ってしまうから駄目なんだって。
ちゃんと俺も考えた上で、その中から良いものを選ぼうと言ってくれた。
確かに、アルファムが考えた名前を聞くと、王族が考えたんだし相応しいよな…とそれに決めてしまいそうだ。
アルファムは、俺よりも俺のことをよくわかってくれていて、嬉しい。
それにしても、どんなのがいいんだろう?
俺が考えると、どうしても日本人ぽい名前になってしまう。
もしくは、アーサーとかランスロットとかの英雄の名前しか浮かばない。
うーん…炎の国だしなぁ。炎…、日本語で『ほむら』とも読めるんだよなぁ。
あとは、大学の時に勉強したフランス語の…確か…『フラム』。フランス語訳の横になぜか載っていたラテン語の『イグニス』。イグニスかっこいいな。ていうか、よく覚えてたな俺。他の単語はほとんど忘れてるのに、炎は覚えていたのは、運命だから?
『ほむら』もかっこいいよなぁ。強い武将みたいで。でも、呼びにくいかもしれないし、この世界では馴染みがない読み方だしなぁ。
うーん、迷う。
「なあ、ちびアル。どんな名前がいいかな?」
ぼんやりと天井を眺めたり(たぶんまだ見えてない)自分の手を眺めたりして、大人しくしていたちびアルに話しかける。
ちびアルは、俺の声に反応すると、途端に手足をばたばたと動かして声を上げた。
「一人で賢くしてたね。偉いね」
ちびアルに顔を近づけて言うと、更に忙しく手足を動かして、「あうあう」と話してくれる。
「ん?どうしたの?眠くなってきた?じゃあ、一緒に寝よっか」
俺は、ベッドに上がると、ちびアルの隣に寝転びそっと抱きしめた。
ちびアルは、嬉しそうに俺を見て声を出し続ける。
その様子が本当に可愛くて、俺は堪らずちびアルの頬と口にキスをした。
「ふふ、お喋りが上手だね。ほんと可愛い。大好きだよ」
「あうー」
「…カナ」
「ひゃっ」
いきなり背後から低い声がして、俺は肩を跳ねさせて驚いた。
後ろを向くと、アルファムが怖い顔をして俺を見下ろしている。
「び、びっくりした…。いつ入って来たの?てか、なんでそんな顔してるの?」
「今…ちびカナにキスをしただろ…。俺以外の男とキスをするな…」
「はあ?」
ちびアルが産まれてから、アルファムの嫉妬がひどい。
もうすぐアラサーのおっさんが、何自分の子供と張り合ってんだよ…と、俺は溜息を吐いてアルファムを見上げた。
貴族や城内の者、国民に、アルファムと俺の間に子が産まれたことを知らせるのだ。
そして、水の国、月の国、日の国、風の国、山の国の五ヶ国にも使者を出す。
水の国のレオナルトや日の国のサッシャは、すごく驚くだろうけど喜んでくれると思う。
月の国のシルヴィオ王や風の国のバルテル王子は、どんな反応を示すのだろう?
まさか、産まれた子供が黒髪だと知って、拐いい来ないだろうな…と少し不安になる。
でも、そんな心配をするよりも、先にやらなければならないことがある。
ちびアルの名前を決めることだ。
お披露目までは、後二週間程しかない。
でも未だ、名前を決めかねている。
アルファムは、幾つか考えてはいるようだ。
でも俺が、どんなのを考えてるのか教えてと言っても、教えてくれない。
俺が「その名前でいい」と言ってしまうから駄目なんだって。
ちゃんと俺も考えた上で、その中から良いものを選ぼうと言ってくれた。
確かに、アルファムが考えた名前を聞くと、王族が考えたんだし相応しいよな…とそれに決めてしまいそうだ。
アルファムは、俺よりも俺のことをよくわかってくれていて、嬉しい。
それにしても、どんなのがいいんだろう?
俺が考えると、どうしても日本人ぽい名前になってしまう。
もしくは、アーサーとかランスロットとかの英雄の名前しか浮かばない。
うーん…炎の国だしなぁ。炎…、日本語で『ほむら』とも読めるんだよなぁ。
あとは、大学の時に勉強したフランス語の…確か…『フラム』。フランス語訳の横になぜか載っていたラテン語の『イグニス』。イグニスかっこいいな。ていうか、よく覚えてたな俺。他の単語はほとんど忘れてるのに、炎は覚えていたのは、運命だから?
『ほむら』もかっこいいよなぁ。強い武将みたいで。でも、呼びにくいかもしれないし、この世界では馴染みがない読み方だしなぁ。
うーん、迷う。
「なあ、ちびアル。どんな名前がいいかな?」
ぼんやりと天井を眺めたり(たぶんまだ見えてない)自分の手を眺めたりして、大人しくしていたちびアルに話しかける。
ちびアルは、俺の声に反応すると、途端に手足をばたばたと動かして声を上げた。
「一人で賢くしてたね。偉いね」
ちびアルに顔を近づけて言うと、更に忙しく手足を動かして、「あうあう」と話してくれる。
「ん?どうしたの?眠くなってきた?じゃあ、一緒に寝よっか」
俺は、ベッドに上がると、ちびアルの隣に寝転びそっと抱きしめた。
ちびアルは、嬉しそうに俺を見て声を出し続ける。
その様子が本当に可愛くて、俺は堪らずちびアルの頬と口にキスをした。
「ふふ、お喋りが上手だね。ほんと可愛い。大好きだよ」
「あうー」
「…カナ」
「ひゃっ」
いきなり背後から低い声がして、俺は肩を跳ねさせて驚いた。
後ろを向くと、アルファムが怖い顔をして俺を見下ろしている。
「び、びっくりした…。いつ入って来たの?てか、なんでそんな顔してるの?」
「今…ちびカナにキスをしただろ…。俺以外の男とキスをするな…」
「はあ?」
ちびアルが産まれてから、アルファムの嫉妬がひどい。
もうすぐアラサーのおっさんが、何自分の子供と張り合ってんだよ…と、俺は溜息を吐いてアルファムを見上げた。
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