264 / 432
番外編 芽吹き 62
しおりを挟む
俺は、思わず素っ頓狂な声を上げた。
医師が、首を傾げて不思議そうな顔をする。
「そうですよ。赤ちゃんに乳を吸わせないと。足りなければミルクがありますが、出来るだけカナデ様の乳を与えた方が良い。まだ出にくいとは思いますが、赤ちゃんがお腹が空いて泣く度に、吸わせてみてください。すぐに出るようになりますよ」
「はあ……」
ーーちち…乳…おっぱい…。俺、男だけど出るの…?あ…でも、男だけど赤ちゃん産んだし、出る…んだろうな。え?でも、ちびアル吸えるかな。女の人みたいに吸いやすい形じゃないと思うんだけど…。
「どうした、カナ」とアルファムが俺の頬を撫でる。
どう説明したものかとアルファムを見上げると、アルファムが何かに気づいたらしく意地悪く笑った。
「ああ、大丈夫じゃないか?おまえの乳首は、とても吸いやすいぞ。俺がそういう形にしてやったからな」
「なっ…!何言ってんの!アルのばかっ!」
「なにっ…」
俺は顔を熱くして怒鳴ると、アルファムに背を向けてちびアルをそっと抱きしめた。
ーー先生の前で、なんて恥ずかしいこと言うんだよっ!いつも吸ってましたって言ってるようなもんじゃないかっ!アルのばかっ!
ぷるぷると震える俺の肩に、そっと手が置かれる。
「…カナデ様、大丈夫ですよ。カナデ様がアルファム様に愛されている証なのですから、何も恥ずかしいことではありませんよ。それに、赤ちゃんの為には良かったではありませんか。吸いやすければきっと、たくさん乳を飲んでくれます」
「そ、そうかな…」
ちらりと肩越しに医師を見る。
医師は、すごく真剣な表情をしてるけど、え?待って。
先生も今かなり恥ずかしいことを言ったよね?
先生の隣のアルファムも、なぜ俺が怒ったのかわからないという顔をしているし。
何だか、恥ずかしがる俺がおかしいのかもと思えてきた。
俺は、渋々身体を仰向けに戻した。
「それでは、診させて頂きますよ。まだ裂けた傷が治ってないと思うので、薬も入れておきましょう」
「はい…」
医師にされるがままに、膝を立てられ服をめくられ後ろの穴を診てもらう。
冷たい器具が当たる度に、ピリリと少し痛い。
医師が、穴に固形物を押し込むと、おむつのような布を当てて服の裾を元に戻した。
「かなり治ってます。今入れた薬でほぼ完治すると思います。でも、しばらくはここを使っては駄目ですよ。特にアルファム様。我慢してくださいよ」
「わかっておる。カナの身体が大事だ」
「ならよろしいでしょう。カナデ様、赤ちゃんのお世話は大変です。疲れたら人に頼んでくださいね」
「…?はい」
よくわからないままに返事をする。
医師は、満足そうに頷くと、部屋から出て行った。
俺は、アルファムを見上げて首を傾げる。
「ん?今のどういうこと?」
「この部屋には、俺とカナとちびカナしかいないだろ?カナは以前、『位の高い人って親が直接子供の面倒を見ないんだろ?俺は絶対に嫌だからな。ちびアルは、俺が全部面倒を見る!』って言ってただろ?だから、産まれてから、ちびカナを誰にも触らせてはおらぬ」
「え?じゃあミルクやおむつ替え…アルがやってたの?」
「そうだ。さすがにミルクは作って持ってきてもらってたが。中々に大変だった…。だが、カナと二人でやるのは楽しそうだ。俺は乳をやれないが、その他のことは出来る限りやる。だから、頼るなら俺にだぞ」
「アル……」
ーーなんだよアル!めっちゃイクメンじゃん!
俺は嬉しくて、アルファムに抱きつこうと腕を伸ばした。
「あっ!いたた…っ」
「カナっ、頼むから安静にしててくれ」
腕を伸ばした拍子に、後ろの穴の傷に響いた。
呻く俺に呆れながら、アルファムが上半身を屈めて俺を抱きしめてくれた。
医師が、首を傾げて不思議そうな顔をする。
「そうですよ。赤ちゃんに乳を吸わせないと。足りなければミルクがありますが、出来るだけカナデ様の乳を与えた方が良い。まだ出にくいとは思いますが、赤ちゃんがお腹が空いて泣く度に、吸わせてみてください。すぐに出るようになりますよ」
「はあ……」
ーーちち…乳…おっぱい…。俺、男だけど出るの…?あ…でも、男だけど赤ちゃん産んだし、出る…んだろうな。え?でも、ちびアル吸えるかな。女の人みたいに吸いやすい形じゃないと思うんだけど…。
「どうした、カナ」とアルファムが俺の頬を撫でる。
どう説明したものかとアルファムを見上げると、アルファムが何かに気づいたらしく意地悪く笑った。
「ああ、大丈夫じゃないか?おまえの乳首は、とても吸いやすいぞ。俺がそういう形にしてやったからな」
「なっ…!何言ってんの!アルのばかっ!」
「なにっ…」
俺は顔を熱くして怒鳴ると、アルファムに背を向けてちびアルをそっと抱きしめた。
ーー先生の前で、なんて恥ずかしいこと言うんだよっ!いつも吸ってましたって言ってるようなもんじゃないかっ!アルのばかっ!
ぷるぷると震える俺の肩に、そっと手が置かれる。
「…カナデ様、大丈夫ですよ。カナデ様がアルファム様に愛されている証なのですから、何も恥ずかしいことではありませんよ。それに、赤ちゃんの為には良かったではありませんか。吸いやすければきっと、たくさん乳を飲んでくれます」
「そ、そうかな…」
ちらりと肩越しに医師を見る。
医師は、すごく真剣な表情をしてるけど、え?待って。
先生も今かなり恥ずかしいことを言ったよね?
先生の隣のアルファムも、なぜ俺が怒ったのかわからないという顔をしているし。
何だか、恥ずかしがる俺がおかしいのかもと思えてきた。
俺は、渋々身体を仰向けに戻した。
「それでは、診させて頂きますよ。まだ裂けた傷が治ってないと思うので、薬も入れておきましょう」
「はい…」
医師にされるがままに、膝を立てられ服をめくられ後ろの穴を診てもらう。
冷たい器具が当たる度に、ピリリと少し痛い。
医師が、穴に固形物を押し込むと、おむつのような布を当てて服の裾を元に戻した。
「かなり治ってます。今入れた薬でほぼ完治すると思います。でも、しばらくはここを使っては駄目ですよ。特にアルファム様。我慢してくださいよ」
「わかっておる。カナの身体が大事だ」
「ならよろしいでしょう。カナデ様、赤ちゃんのお世話は大変です。疲れたら人に頼んでくださいね」
「…?はい」
よくわからないままに返事をする。
医師は、満足そうに頷くと、部屋から出て行った。
俺は、アルファムを見上げて首を傾げる。
「ん?今のどういうこと?」
「この部屋には、俺とカナとちびカナしかいないだろ?カナは以前、『位の高い人って親が直接子供の面倒を見ないんだろ?俺は絶対に嫌だからな。ちびアルは、俺が全部面倒を見る!』って言ってただろ?だから、産まれてから、ちびカナを誰にも触らせてはおらぬ」
「え?じゃあミルクやおむつ替え…アルがやってたの?」
「そうだ。さすがにミルクは作って持ってきてもらってたが。中々に大変だった…。だが、カナと二人でやるのは楽しそうだ。俺は乳をやれないが、その他のことは出来る限りやる。だから、頼るなら俺にだぞ」
「アル……」
ーーなんだよアル!めっちゃイクメンじゃん!
俺は嬉しくて、アルファムに抱きつこうと腕を伸ばした。
「あっ!いたた…っ」
「カナっ、頼むから安静にしててくれ」
腕を伸ばした拍子に、後ろの穴の傷に響いた。
呻く俺に呆れながら、アルファムが上半身を屈めて俺を抱きしめてくれた。
5
お気に入りに追加
1,661
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる