237 / 432
番外編 芽吹き 35
しおりを挟む
アルファムにベッドに運ばれて降ろしてもらいながら、アルファムのシャツを引っ張る。
「アル…、アルの王様としての立場もわかるけど、自分の気持ちに素直に従ってもいいと思う」
「…そんなことは許され…」
「許されないって言うのもわかるよ。でも、俺が許す。被害者の俺が許すって言ってるんだから、ローラントのこと、兄として考えてあげてよ」
「カナ…、とにかくその話は後だ。顔色が悪いぞ」
「そうかなあ。吐いたからすっきりしてるよ?」
その時「失礼します」と声がして、リオが戻って来た。
俺は、リオからコップに注がれた水を手渡されると、ごくごくと飲み干す。
そして、ふぅと息を吐いて横になった。
「アル、起きたら散歩の続きしよ。だから、どこにも行かないでこの部屋にいて」
「ああ。ここで書類の山を片付けておく。安心して休め」
「うん。リオも、心配させてごめんね」
「気にすんな。して欲しいことがあれば遠慮なく言えよ?」
「うん、ありがとう」
俺は二人に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
上も下も左右も周り全てが真っ白で、まるで宙に浮いてるみたいだ。
不安になって、アル…と呼ぼうとしたけど、声が出ない。
ーーなんだろ、ここ?え?もしかして俺、死んじゃった?……いやいや、ちょっと気分が悪くなって吐いただけだし。どこも痛くも痒くもないし。あっ、そっか。これは夢だ。でも…どういう夢だろ?
首を傾けて考えていると、目の端に赤いものが映った。
不思議に思ってそちらに顔を向ける。
綺麗な女の人が、立っていた。
その人が、鋭く光る目で、俺を見ている。
「だれ?」
尋ねても返事がない。
目の端に映った赤いものは、女の人の明るい朱色の髪の毛だ。
それと、女の人が上に向けた掌にある赤い炎だ。
ーーあの朱色の髪は、ついさっきも見た。ローラントと同じ色だ。顔も似てる。そして、掌の炎。炎を使えるということは、位の高い者だ。
「もしかして…あなたは、ローラントの母親の、ベアトリクス…さん?」
恐る恐る聞くけど、やっぱり返事がない。
俺は困って、女の人に近づこうと足を前に出した。
その瞬間、女の人が手を大きく振る。
女の人の掌から辺り一面に炎が飛び散り、見る見る間に俺の周囲が炎に包まれた。
「アル…、アルの王様としての立場もわかるけど、自分の気持ちに素直に従ってもいいと思う」
「…そんなことは許され…」
「許されないって言うのもわかるよ。でも、俺が許す。被害者の俺が許すって言ってるんだから、ローラントのこと、兄として考えてあげてよ」
「カナ…、とにかくその話は後だ。顔色が悪いぞ」
「そうかなあ。吐いたからすっきりしてるよ?」
その時「失礼します」と声がして、リオが戻って来た。
俺は、リオからコップに注がれた水を手渡されると、ごくごくと飲み干す。
そして、ふぅと息を吐いて横になった。
「アル、起きたら散歩の続きしよ。だから、どこにも行かないでこの部屋にいて」
「ああ。ここで書類の山を片付けておく。安心して休め」
「うん。リオも、心配させてごめんね」
「気にすんな。して欲しいことがあれば遠慮なく言えよ?」
「うん、ありがとう」
俺は二人に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
上も下も左右も周り全てが真っ白で、まるで宙に浮いてるみたいだ。
不安になって、アル…と呼ぼうとしたけど、声が出ない。
ーーなんだろ、ここ?え?もしかして俺、死んじゃった?……いやいや、ちょっと気分が悪くなって吐いただけだし。どこも痛くも痒くもないし。あっ、そっか。これは夢だ。でも…どういう夢だろ?
首を傾けて考えていると、目の端に赤いものが映った。
不思議に思ってそちらに顔を向ける。
綺麗な女の人が、立っていた。
その人が、鋭く光る目で、俺を見ている。
「だれ?」
尋ねても返事がない。
目の端に映った赤いものは、女の人の明るい朱色の髪の毛だ。
それと、女の人が上に向けた掌にある赤い炎だ。
ーーあの朱色の髪は、ついさっきも見た。ローラントと同じ色だ。顔も似てる。そして、掌の炎。炎を使えるということは、位の高い者だ。
「もしかして…あなたは、ローラントの母親の、ベアトリクス…さん?」
恐る恐る聞くけど、やっぱり返事がない。
俺は困って、女の人に近づこうと足を前に出した。
その瞬間、女の人が手を大きく振る。
女の人の掌から辺り一面に炎が飛び散り、見る見る間に俺の周囲が炎に包まれた。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる