232 / 432
番外編 芽吹き 30
しおりを挟む
すぐに角を曲がってまっすぐこちらに向かって来るローラントの姿が現れた。
ローラントの両脇に、焦った様子のホルガーとシアンがいる。
ーーローラントはアルの弟だし、普通に部屋に案内すればいいのに。なんであんなに慌ててるの?
そう不思議に思ったけど、久しぶりにローラントと会えて嬉しい。
俺は、アルファムから身体を離してローラントを迎えようとした。
でもアルファムは、強く俺の身体を引き寄せて離してくれない。
「え?アル離し……」と言いかけて、アルファムの顔を見て驚いた。
「兄上、カナデ、お久しぶりです」
「ああ。結婚式以来か?」
「そうですね…。そのうち顔を見せに来なければと思いながら、僕の城を離れることが出来ずにいました」
「…話は聞いている。大変だったそうだな」
「未だ大変ですよ。大変どころかとんでもないことをしてしまった…。だから馬を翔ばして来たのです」
「そうか。入れ」
「失礼します」
アルファムが、俺の肩を抱いたまま方向転換する。
俺は、ローラントを気にしながら、アルファムと一緒に部屋に入った。
アルファムもローラントも、何だか様子がおかしい。
アルファムは、急に怖い顔になるし、ローラントも、いつもなら「カナデ!」と笑顔で話してくれるのに、すごく暗い顔をして、俺の方を見ようともしない。
ーーアルもローラントもどうしちゃったの?俺が寝込んでる間に、何かあったの?
アルファムに促されて、アルファムと並んでソファーに座る。
ソファーから少し離れて、ローラントが立つ。
ホルガーとシアンは、ローラントを挟むように立っている。
俺がローラントを見上げると、やっと目が合った。
「ローラント久しぶりだね。元気だった?」
「カナデ…」
俺がにこりと微笑みながら言うと、ローラントが、いきなりその場で膝を着いて頭を下げた。
「えっ?なっ、なに?どうしたの?」
「カナデ…、まずはお祝いを言うべきか、それとも謝るべきか…。僕はどうすればいい?」
「どっ、どういうこと?」
ローラントのただならぬ様子に、俺は狼狽えてしまう。
ローラントが、顔を上げる。
まだ少年の面影が残る顔が、苦しそうに歪んでいる。
「ローラント?」
その辛そうな顔を見て俺の胸まで痛くなってきて、思わず手を伸ばした。
伸ばした俺の手を、ローラントが跳ね除ける。
「え?」
「あっ!ごめんっ、カナデ…っ。痛くなかった?」
「大丈夫だよ。どうしたの?何かあった?」
ローラントの顔がくしゃりと歪み、今度は泣き笑いの顔をした。
ローラントの両脇に、焦った様子のホルガーとシアンがいる。
ーーローラントはアルの弟だし、普通に部屋に案内すればいいのに。なんであんなに慌ててるの?
そう不思議に思ったけど、久しぶりにローラントと会えて嬉しい。
俺は、アルファムから身体を離してローラントを迎えようとした。
でもアルファムは、強く俺の身体を引き寄せて離してくれない。
「え?アル離し……」と言いかけて、アルファムの顔を見て驚いた。
「兄上、カナデ、お久しぶりです」
「ああ。結婚式以来か?」
「そうですね…。そのうち顔を見せに来なければと思いながら、僕の城を離れることが出来ずにいました」
「…話は聞いている。大変だったそうだな」
「未だ大変ですよ。大変どころかとんでもないことをしてしまった…。だから馬を翔ばして来たのです」
「そうか。入れ」
「失礼します」
アルファムが、俺の肩を抱いたまま方向転換する。
俺は、ローラントを気にしながら、アルファムと一緒に部屋に入った。
アルファムもローラントも、何だか様子がおかしい。
アルファムは、急に怖い顔になるし、ローラントも、いつもなら「カナデ!」と笑顔で話してくれるのに、すごく暗い顔をして、俺の方を見ようともしない。
ーーアルもローラントもどうしちゃったの?俺が寝込んでる間に、何かあったの?
アルファムに促されて、アルファムと並んでソファーに座る。
ソファーから少し離れて、ローラントが立つ。
ホルガーとシアンは、ローラントを挟むように立っている。
俺がローラントを見上げると、やっと目が合った。
「ローラント久しぶりだね。元気だった?」
「カナデ…」
俺がにこりと微笑みながら言うと、ローラントが、いきなりその場で膝を着いて頭を下げた。
「えっ?なっ、なに?どうしたの?」
「カナデ…、まずはお祝いを言うべきか、それとも謝るべきか…。僕はどうすればいい?」
「どっ、どういうこと?」
ローラントのただならぬ様子に、俺は狼狽えてしまう。
ローラントが、顔を上げる。
まだ少年の面影が残る顔が、苦しそうに歪んでいる。
「ローラント?」
その辛そうな顔を見て俺の胸まで痛くなってきて、思わず手を伸ばした。
伸ばした俺の手を、ローラントが跳ね除ける。
「え?」
「あっ!ごめんっ、カナデ…っ。痛くなかった?」
「大丈夫だよ。どうしたの?何かあった?」
ローラントの顔がくしゃりと歪み、今度は泣き笑いの顔をした。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
狂宴〜接待させられる美少年〜
はる
BL
アイドル級に可愛い18歳の美少年、空。ある日、空は何者かに拉致監禁され、ありとあらゆる"性接待"を強いられる事となる。
※めちゃくちゃ可愛い男の子がひたすらエロい目に合うお話です。8割エロです。予告なく性描写入ります。
※この辺のキーワードがお好きな方にオススメです
⇒「美少年受け」「エロエロ」「総受け」「複数」「調教」「監禁」「触手」「衆人環視」「羞恥」「視姦」「モブ攻め」「オークション」「快楽地獄」「男体盛り」etc
※痛い系の描写はありません(可哀想なので)
※ピーナッツバター、永遠の夏に出てくる空のパラレル話です。この話だけ別物と考えて下さい。
兄弟がイケメンな件について。
どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。
「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。
イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる