224 / 432
番外編 芽吹き 22
しおりを挟む
「うわあっ!!」
井戸の中に真っ逆さまに落ちかけて、思わず固く目を閉じた。
だけど予想していた衝撃はなく、俺の身体が宙に浮く。
「…え?」
「カナデ!大丈夫かっ!?」
恐る恐る目を開けて声がした方に顔を向ける。
俺の背後にリオがいて、右手から出した炎で俺の身体を包み、左手から出した炎で女の人を拘束していた。
「リオ…っ、ありがとう…」
「大丈夫なんだな?無事で良かった…」
ほうっ…と息を吐いて、リオがそっと俺を地面に降ろす。
「カナデはそこで休んでて。女、これはどういうことだ!」
「あっ、待ってリオ!井戸の中に子供がいるんだっ。助けてあげて!」
「は?子供?なんでそんな所に…」
「その人の弟だって!落ちたから助けて欲しいって頼まれて、ここに来たんだ」
「ふむ…」と辺りを見回して、リオが女の人を睨む。
「おまえ、カナデを罠にかけたな?わざわざ城の中に助けを求めにくるなんておかしい。初めからここにカナデを呼び出して、井戸の中に突き落とすつもりだったな?」
やっぱり!と声に出さずに頷く。
女の人の様子がおかしいと思いながら、ついてきた俺も悪い。
だけど、これが罠だとして、弟だという子供をわざと井戸の中に落としたのだとしたら許せない!
俺は更に腹が立ってきて、文句を言おうとしたその時、「あっ、熱い…っ」と女の人が声を上げた。
「当たり前だ。わざと熱くしているんだ。女、おまえの独断でやったのか?それとも誰かに頼まれたのか?言わないと更に熱くするぞ!」
「しっ、知らないっ…、熱い…っ」
「リオ!その人を離してっ」
よく見ると、炎に拘束されている女の人の腕や首筋が赤くなっている。
俺は、慌ててリオの傍に行くと、リオの腕を掴んで止めるように言う。
「火傷しちゃう!リオっ、お願いっ、離して!」
「カナデ!またそんな甘いことを言うっ」
「だって…!あっ、ほらっ、人が来た!彼らに捕まえていてもらおう?それよりも早く子供を助けてあげてっ」
リオは、はあーっと長い溜息を吐くと、ようやく女の人を離した。
すぐにやって来た兵達に女の人を捕まえておくように言うと、井戸へ行き中を覗く。
「君、今から上に上げるから、動かないでくれよ」
「…うん」
井戸の中から、微かに男の子の返事が聞こえた。
リオは、右手に炎を出すと、井戸の中に向かって手を伸ばした。
すぐに腕を引き、炎で巻きつけた男の子を引き上げる。
男の子を井戸から離れた場所に降ろすと、「すぐに手当をしろ」と傍にいた兵に指図した。
井戸の中に真っ逆さまに落ちかけて、思わず固く目を閉じた。
だけど予想していた衝撃はなく、俺の身体が宙に浮く。
「…え?」
「カナデ!大丈夫かっ!?」
恐る恐る目を開けて声がした方に顔を向ける。
俺の背後にリオがいて、右手から出した炎で俺の身体を包み、左手から出した炎で女の人を拘束していた。
「リオ…っ、ありがとう…」
「大丈夫なんだな?無事で良かった…」
ほうっ…と息を吐いて、リオがそっと俺を地面に降ろす。
「カナデはそこで休んでて。女、これはどういうことだ!」
「あっ、待ってリオ!井戸の中に子供がいるんだっ。助けてあげて!」
「は?子供?なんでそんな所に…」
「その人の弟だって!落ちたから助けて欲しいって頼まれて、ここに来たんだ」
「ふむ…」と辺りを見回して、リオが女の人を睨む。
「おまえ、カナデを罠にかけたな?わざわざ城の中に助けを求めにくるなんておかしい。初めからここにカナデを呼び出して、井戸の中に突き落とすつもりだったな?」
やっぱり!と声に出さずに頷く。
女の人の様子がおかしいと思いながら、ついてきた俺も悪い。
だけど、これが罠だとして、弟だという子供をわざと井戸の中に落としたのだとしたら許せない!
俺は更に腹が立ってきて、文句を言おうとしたその時、「あっ、熱い…っ」と女の人が声を上げた。
「当たり前だ。わざと熱くしているんだ。女、おまえの独断でやったのか?それとも誰かに頼まれたのか?言わないと更に熱くするぞ!」
「しっ、知らないっ…、熱い…っ」
「リオ!その人を離してっ」
よく見ると、炎に拘束されている女の人の腕や首筋が赤くなっている。
俺は、慌ててリオの傍に行くと、リオの腕を掴んで止めるように言う。
「火傷しちゃう!リオっ、お願いっ、離して!」
「カナデ!またそんな甘いことを言うっ」
「だって…!あっ、ほらっ、人が来た!彼らに捕まえていてもらおう?それよりも早く子供を助けてあげてっ」
リオは、はあーっと長い溜息を吐くと、ようやく女の人を離した。
すぐにやって来た兵達に女の人を捕まえておくように言うと、井戸へ行き中を覗く。
「君、今から上に上げるから、動かないでくれよ」
「…うん」
井戸の中から、微かに男の子の返事が聞こえた。
リオは、右手に炎を出すと、井戸の中に向かって手を伸ばした。
すぐに腕を引き、炎で巻きつけた男の子を引き上げる。
男の子を井戸から離れた場所に降ろすと、「すぐに手当をしろ」と傍にいた兵に指図した。
0
お気に入りに追加
1,670
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる