191 / 432
番外編 3
しおりを挟む
城の外に出るまでに数人の使用人に見つかったけど、いつものよう中庭に行くものだと思われたようで、特に見咎められはしなかった。
アイリスとレニに会ってしまった門は、いつも内側から鍵がかかっている。
だから門番もいなくて、俺はよくこの門から城を抜け出て街に遊びに行っていたんだ。
俺は、こそこそと物陰に隠れながら門の側まで行き、人がいないことを確認すると、一気に門まで走った。分厚い木の扉についた閂を抜き、マントを頭から被って素早く門をくぐり抜ける。
「はあ…どこに行こう」
上手く城を出れたのはいいが、行く宛てがない。
もっと市中に出歩いて、顔見知りを作っておけば良かったな…ととぼとぼと歩き出したその時、俺のお腹が盛大に鳴った。
「食欲ないのに…減るものは減るんだ…」
俺は、お腹に手を当てて、ある場所へと向かう。以前に街を探索していた時に、いい雰囲気の店を見つけていたんだ。
城から五百メートルほど進んだ所に、その店はあった。
黒髪が見えないように深くフードを被り、そっと店の扉を開ける。
すぐに可愛らしい女の子が寄って来て、「何名様ですか?」と聞いてくる。
「あ、一人…です」
「お好きな席へどうぞ」
にこりと笑う女の子に小さく頭を下げて、大きな窓の側の席に座った。
机の上に置いてあるメニューを見て、プリンに似たデザートがあることに少しだけ気持ちが上がる。
水を持って来た女の子に注文をすると、俺は頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺めた。
ーーそろそろリオが俺がいなくなったことに気づいてるよな。絶対に街にも捜索に来るよね。ふらふらと歩くより、ここにいた方が見つからないかな…。当然、アルにも知らせるよね。めちゃくちゃ怒られるだろうなぁ。でも、怒られるよりも、アルがあの子と会う姿を見る方が怖い。
はあっ、と盛大に溜息を吐いていると、いきなり「悩みごと?」と声がした。
驚いて顔を前に向けると、向かい側の席に見知らぬ男が座っている。
「だ、だれ?」
「あ、ごめんね?勝手に座って。店に入るなりすごく綺麗な君の横顔に引き寄せられてさ。近くで見たくなったんだよ。君、本当に綺麗だね。君にそんな顔させたくないな。悩みがあったら話してよ。すっきりするよ?」
「はあ……」
笑顔で話す男を見て、俺は間抜けな声を出す。
ーーこれってナンパ?え?俺、男だけど。それにフードを被ってるから顔がよく見えてないと思うんだけど、綺麗ってなんだ?何かの詐欺?
「あっ、その目。疑ってる?俺はすごく真面目な奴だよ?俺の名前はルート。俺、君のことすごく気になるなぁ。ねえ、暇なら俺と一緒に過ごさない?君の名前教えてよ」
男のあまりのしつこさに困って、店を出ようと腰を浮かしかけた時に、注文していたデザートが運ばれてきた。
せっかく作ってくれたこれを食べないで出るのも悪い気がして、俺は仕方なく座り直す。
手を合わせてスプーンを持つと、また男が喋り出した。
「顔だけじゃなく食べ物まで可愛いんだね。甘い物が好きなの?」
俺は、辟易しながら頷くと、プリン(に似たデザート)をすくって口に入れた。
アイリスとレニに会ってしまった門は、いつも内側から鍵がかかっている。
だから門番もいなくて、俺はよくこの門から城を抜け出て街に遊びに行っていたんだ。
俺は、こそこそと物陰に隠れながら門の側まで行き、人がいないことを確認すると、一気に門まで走った。分厚い木の扉についた閂を抜き、マントを頭から被って素早く門をくぐり抜ける。
「はあ…どこに行こう」
上手く城を出れたのはいいが、行く宛てがない。
もっと市中に出歩いて、顔見知りを作っておけば良かったな…ととぼとぼと歩き出したその時、俺のお腹が盛大に鳴った。
「食欲ないのに…減るものは減るんだ…」
俺は、お腹に手を当てて、ある場所へと向かう。以前に街を探索していた時に、いい雰囲気の店を見つけていたんだ。
城から五百メートルほど進んだ所に、その店はあった。
黒髪が見えないように深くフードを被り、そっと店の扉を開ける。
すぐに可愛らしい女の子が寄って来て、「何名様ですか?」と聞いてくる。
「あ、一人…です」
「お好きな席へどうぞ」
にこりと笑う女の子に小さく頭を下げて、大きな窓の側の席に座った。
机の上に置いてあるメニューを見て、プリンに似たデザートがあることに少しだけ気持ちが上がる。
水を持って来た女の子に注文をすると、俺は頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺めた。
ーーそろそろリオが俺がいなくなったことに気づいてるよな。絶対に街にも捜索に来るよね。ふらふらと歩くより、ここにいた方が見つからないかな…。当然、アルにも知らせるよね。めちゃくちゃ怒られるだろうなぁ。でも、怒られるよりも、アルがあの子と会う姿を見る方が怖い。
はあっ、と盛大に溜息を吐いていると、いきなり「悩みごと?」と声がした。
驚いて顔を前に向けると、向かい側の席に見知らぬ男が座っている。
「だ、だれ?」
「あ、ごめんね?勝手に座って。店に入るなりすごく綺麗な君の横顔に引き寄せられてさ。近くで見たくなったんだよ。君、本当に綺麗だね。君にそんな顔させたくないな。悩みがあったら話してよ。すっきりするよ?」
「はあ……」
笑顔で話す男を見て、俺は間抜けな声を出す。
ーーこれってナンパ?え?俺、男だけど。それにフードを被ってるから顔がよく見えてないと思うんだけど、綺麗ってなんだ?何かの詐欺?
「あっ、その目。疑ってる?俺はすごく真面目な奴だよ?俺の名前はルート。俺、君のことすごく気になるなぁ。ねえ、暇なら俺と一緒に過ごさない?君の名前教えてよ」
男のあまりのしつこさに困って、店を出ようと腰を浮かしかけた時に、注文していたデザートが運ばれてきた。
せっかく作ってくれたこれを食べないで出るのも悪い気がして、俺は仕方なく座り直す。
手を合わせてスプーンを持つと、また男が喋り出した。
「顔だけじゃなく食べ物まで可愛いんだね。甘い物が好きなの?」
俺は、辟易しながら頷くと、プリン(に似たデザート)をすくって口に入れた。
0
お気に入りに追加
1,659
あなたにおすすめの小説
【R18】執着ドS彼氏のお仕置がトラウマ級
海林檎
BL
※嫌われていると思ったら歪すぎる愛情だったのスピンオフ的なショート小話です。
ただただ分からせドS調教のエロがギッチリ腸に詰めすぎて嘔吐するくらいには収まっているかと多分。
背格好が似ている男性を見つけて「こう言う格好も似合いそう」だと思っていた受けを見て「何他の男を見てんだ」と、キレた攻めがお仕置するお話www
#濁点喘ぎ#電気責め#拘束#M字開脚#監禁#調教#アク目#飲ザー#小スカ#連続絶頂#アヘ顔#ドS彼氏#執着彼氏#舌っ足らず言葉#結腸責め#尿道・膀胱責め#快楽堕ち#愛はあります
ショタ18禁読み切り詰め合わせ
ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる