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王の花 10
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ふっ…という笑い声の後に、アルファムが俺の頬に唇を寄せる。頬に流れ落ちた涙を吸って、俺を胸に抱き寄せた。
「カナ、良いか?勝手に決めてしまったが、ダメだったか?」
俺はアルファムの胸に顔を擦りつけると、顔を上げてアルファムの目を見た。
「よ…よろしくお願いします…。い、いいの?俺…アルの隣にいていいの?」
「俺は、玉座の隣におまえ以外を座らせる気はない。おまえでなければダメだ。カナ、俺の妻になって欲しい。男のおまえに妻と言うのは嫌かもしれないが、俺の隣で、俺を支えて欲しい」
嬉しくて嬉しくて、身体の震えが止まらない。
アルファムは、俺を大切にしてくれるけど、結婚となると話は別だと思っていた。
だって、アルファムは王様で、後継ぎが必要なんだから。
前に、『弟がいるから気にしなくていい』と言ってくれたけど、優秀なアルファムの血を繋いでいかなくていいの?と心のどこかで不安に思っていた。
だから、アルファムは俺を傍に置いて大切にしてくれるけど、いつかは女の人と結婚して後継ぎをもうけるかもしれないと怯えていた。
止まっていた涙が、またポロポロと溢れ出す。涙だけじゃなく鼻水まで垂らして、俺は声を上げて泣き出した。
「う…っ、うわーんっ!あっ、ありがとっ、アル…っ。俺、頑張るっ…。アルのために、頑張る…から…っ」
「ふっ…、その気持ちだけで充分だ。おまえは無理をし過ぎるから、ほどほどで良い。俺の隣で、笑って怒って泣いて、いろんな表情を見せてくれたら、それだけで俺は幸せだ…」
「うっ…、ぐす…っ、アルぅ、大好き!俺、絶対にアルを幸せにするからぁっ」
アルファムが、俺の大好きな太陽のような眩しい笑顔で笑いながら、俺の頬を両手で挟んだ。
「そうか。頼もしいな。カナ、俺を幸せにしてくれ。俺を、おまえの伴侶にしてくれるか?」
「うんっ、うんっ!よっ、よろしくお願いします…っ」
「俺の方こそ頼むぞ。…おまえは、本当に愛しいな…」
アルファムの優しい声音が近づいて、俺の唇に柔らかいものが触れる。
何度も何度も触れて、力強い腕が俺をきつく抱きしめた。
アルファムの服を濡らしながら、俺はしばらく泣き続けた。
悲しくて泣いたことはたくさんあるけど、嬉しくてこんなに泣いたことは、初めてだ。
もう一度、この世界に帰って来れて、本当に良かった。
異世界に住むアルファムと出会えた奇跡に感謝する。
「カナ、良いか?勝手に決めてしまったが、ダメだったか?」
俺はアルファムの胸に顔を擦りつけると、顔を上げてアルファムの目を見た。
「よ…よろしくお願いします…。い、いいの?俺…アルの隣にいていいの?」
「俺は、玉座の隣におまえ以外を座らせる気はない。おまえでなければダメだ。カナ、俺の妻になって欲しい。男のおまえに妻と言うのは嫌かもしれないが、俺の隣で、俺を支えて欲しい」
嬉しくて嬉しくて、身体の震えが止まらない。
アルファムは、俺を大切にしてくれるけど、結婚となると話は別だと思っていた。
だって、アルファムは王様で、後継ぎが必要なんだから。
前に、『弟がいるから気にしなくていい』と言ってくれたけど、優秀なアルファムの血を繋いでいかなくていいの?と心のどこかで不安に思っていた。
だから、アルファムは俺を傍に置いて大切にしてくれるけど、いつかは女の人と結婚して後継ぎをもうけるかもしれないと怯えていた。
止まっていた涙が、またポロポロと溢れ出す。涙だけじゃなく鼻水まで垂らして、俺は声を上げて泣き出した。
「う…っ、うわーんっ!あっ、ありがとっ、アル…っ。俺、頑張るっ…。アルのために、頑張る…から…っ」
「ふっ…、その気持ちだけで充分だ。おまえは無理をし過ぎるから、ほどほどで良い。俺の隣で、笑って怒って泣いて、いろんな表情を見せてくれたら、それだけで俺は幸せだ…」
「うっ…、ぐす…っ、アルぅ、大好き!俺、絶対にアルを幸せにするからぁっ」
アルファムが、俺の大好きな太陽のような眩しい笑顔で笑いながら、俺の頬を両手で挟んだ。
「そうか。頼もしいな。カナ、俺を幸せにしてくれ。俺を、おまえの伴侶にしてくれるか?」
「うんっ、うんっ!よっ、よろしくお願いします…っ」
「俺の方こそ頼むぞ。…おまえは、本当に愛しいな…」
アルファムの優しい声音が近づいて、俺の唇に柔らかいものが触れる。
何度も何度も触れて、力強い腕が俺をきつく抱きしめた。
アルファムの服を濡らしながら、俺はしばらく泣き続けた。
悲しくて泣いたことはたくさんあるけど、嬉しくてこんなに泣いたことは、初めてだ。
もう一度、この世界に帰って来れて、本当に良かった。
異世界に住むアルファムと出会えた奇跡に感謝する。
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