炎の国の王の花

明樹

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王の花 3

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そういえば、あの男に向かって白い光の玉や激しい水流が飛んできた。そっか…。あれは、サッシャやレオナルトの魔法の力だ。二人も、俺を守ってくれたんだ。


俺は、二人の名前を呼びながら、アルファムから離れて二人に抱き着いた。


「サッシャ!レオナルト!ありがとうっ。俺を守ってくれてっ!」
「当たり前だろ?カナデは俺の大事な友達なんだからっ」
「そうだ。カナデがこの世界からいなくなったと聞いて、俺が傍にいて守ってやれなかったことをとても後悔した。だから、次に戻って来た時には、必ず守ると決めていたのだ」


そう言って、二人も俺を抱きしめ返してくれる。
長い間離れていたのに、そんな風に俺を思ってくれていたことが嬉しくて、瞳を潤ませていると、背後から伸びてきた腕に引き剥がされた。


「カナ、もういいだろう。近寄り過ぎだ」
「え…もうっ、アルってば…」


お腹に回された腕に触れて文句を言ってみる。でも内心は、アルファムの独占欲が嬉しくて、顔がニヤけてしまうのを抑えられない。
後ろから顔を寄せるアルファムを振り仰いで、軽く唇を合わせる。ふふ…と笑って顔を戻すと、サッシャとレオナルトが、また苦い顔をして俺達を見ていた。


「まあ…ひっさしぶりに会えたから仕方ないけどさぁ、部屋に戻ってからイチャイチャしてくれる?」
「そうだな…。カナデに遠慮なく触れるアルファム王を見てると、腸が煮えくり返る…」


レオナルトの顔が、ピクピクと痙攣している。
途端に恥ずかしくなって、俺はアルファムの腕を外そうとするけど、ますます力を入れられて、全く外すことが出来ない。


「カナ、俺はもう二度とおまえを離さないぞ。だからおまえも、俺から離れようとするな」
「あ…うん、そうだね…。俺も、離れたくない」


アルファムの腕を外そうとしていた手で、アルファムの腕を掴む。
そうだ。もう二度と、この温もりを失くしたくない。抱きしめられてる今が、とても幸せなんだから。


「ごめんね、二人とも。アルと少しでも離れたくないんだ。この5ヶ月の間、すごく寂しかったから…。必ず戻るって決めてたけど、それでも心のどこかで『もし戻れなかったら…』って怖かった…。だから今、無事に戻れて、アルや皆に会えて、とても嬉しいんだ」
「カナ、無事ではないぞ。あの男がおまえについて来たではないか。今日は朝から胸が騒いでな。一日、ここで見張っていたのだ。俺だけでいいと言うのに、数日前からこの城に来ていたサッシャ王子とレオナルト王もついて来ると言って聞かなかった。…そして、カナが現れる直前に、カナの声が聞こえた。『アルっ!今から戻るからっ。アルの元へ、帰るからっ!俺を受け止めてっ!』とな」


アルファムがそう言うと、俺のつむじにキスをした。
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