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炎の国の 5
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戻って来たこっちの世界は、残暑の厳しい季節になっていて、毎日とても暑い。
とはいえ、退院してから二週間、俺は颯人のマンションから一歩も外に出ていない。
怪我をして出血したからかわからないけど、ひどい貧血でよく目眩を起こす為、颯人に外に出るのを止められているのだ。
それだけじゃなく、まだふとした時に傷口が痛むし、体力が落ちてるから、この暑い中外出するとすぐに倒れてしまうと、自分でも不安に思う。
だから、颯人が仕事に行ってる間に、休み休みゆっくりと部屋の掃除や夕食の用意をしたりして、過ごしていた。
「ただいま」
「あ、颯人、おかえり。ご飯出来てるよ。それか、先にお風呂入る?」
リビングに入って来た颯人に、キッチンでフライパンを洗いながら聞く。
颯人の返事がしないのを不思議に思い、水を止めた瞬間、背中からふわりと抱きしめられた。
「わぁ!なっ、なに…っ?」
「…いや、なんか…奥さんみたいだな…って思って」
「はあ?誰がっ!?お、俺は、居候させてもらってるから、ちょっとでも自分の出来ることをやろうとっ…。ちょっ!暑いから離せよ!」
チュッと俺の頬に口付けて、颯人が俺のお腹に回していた腕を離した。
俺が振り返って睨むと、颯人が寂しげな顔をしていて、少し胸がツキンと痛む。
いやいや!痛む必要ないし!どんなに頼まれても、俺は颯人とやり直す気はこれっぽっちもないし!まだ思い出せないけど、俺には愛する人がいるし!
俺は、Tシャツの裾を握ると、「やっぱり俺が先にお風呂に入らせてもらう!冷蔵庫におつまみとビールがあるから、颯人はそれを食べてて!」
そう早口でまくしたてると、慌てて和室から着替えを取って、リビングから出て行った。
洗面所で服を脱いで洗濯機に放り込み、風呂場へ入る。
シャワーを出して頭からお湯をかぶり、少し動揺してしまった気持ちを落ち着かせる。
しばらくして気持ちが落ち着いてくると、シャワーを止めて、身体を洗おうとボディーソープのボトルを押した。すると、カシュカシュと音がしてほんの少ししか出てこない。
「…あ!そういえば、昨夜俺が使ったので無くなったんだった。…えー、颯人を呼ぶの嫌だしなぁ。詰め替え用って確か棚の上にあったよな…」
ブツブツと呟いて、風呂場のドアをそっと開ける。すぐ横にある棚の一番上に、ボディーソープやシャンプー、トリートメントの詰め替え用が、並べて置いてある。
これ、出ないと取れないよね…。でもこのまま出ると、床が濡れちゃうよね…。濡れた床を拭くの、面倒だよね…。
だからと言って、颯人を呼びたくない。だって颯人は、俺のことを好きだと言ってるんだよ?絶対に俺の裸を見ようとしてくる。そういう目で見られるのって、何か恥ずかしいし…。
うーん…と腕を組んで悩んでいると、チクリと右手が痺れた。
右手の甲には、火傷の痕が残っている。皮膚が突っ張って変な感じはするけど、もう痛くない痕を見つめていると、突然あることを思い出した。
とはいえ、退院してから二週間、俺は颯人のマンションから一歩も外に出ていない。
怪我をして出血したからかわからないけど、ひどい貧血でよく目眩を起こす為、颯人に外に出るのを止められているのだ。
それだけじゃなく、まだふとした時に傷口が痛むし、体力が落ちてるから、この暑い中外出するとすぐに倒れてしまうと、自分でも不安に思う。
だから、颯人が仕事に行ってる間に、休み休みゆっくりと部屋の掃除や夕食の用意をしたりして、過ごしていた。
「ただいま」
「あ、颯人、おかえり。ご飯出来てるよ。それか、先にお風呂入る?」
リビングに入って来た颯人に、キッチンでフライパンを洗いながら聞く。
颯人の返事がしないのを不思議に思い、水を止めた瞬間、背中からふわりと抱きしめられた。
「わぁ!なっ、なに…っ?」
「…いや、なんか…奥さんみたいだな…って思って」
「はあ?誰がっ!?お、俺は、居候させてもらってるから、ちょっとでも自分の出来ることをやろうとっ…。ちょっ!暑いから離せよ!」
チュッと俺の頬に口付けて、颯人が俺のお腹に回していた腕を離した。
俺が振り返って睨むと、颯人が寂しげな顔をしていて、少し胸がツキンと痛む。
いやいや!痛む必要ないし!どんなに頼まれても、俺は颯人とやり直す気はこれっぽっちもないし!まだ思い出せないけど、俺には愛する人がいるし!
俺は、Tシャツの裾を握ると、「やっぱり俺が先にお風呂に入らせてもらう!冷蔵庫におつまみとビールがあるから、颯人はそれを食べてて!」
そう早口でまくしたてると、慌てて和室から着替えを取って、リビングから出て行った。
洗面所で服を脱いで洗濯機に放り込み、風呂場へ入る。
シャワーを出して頭からお湯をかぶり、少し動揺してしまった気持ちを落ち着かせる。
しばらくして気持ちが落ち着いてくると、シャワーを止めて、身体を洗おうとボディーソープのボトルを押した。すると、カシュカシュと音がしてほんの少ししか出てこない。
「…あ!そういえば、昨夜俺が使ったので無くなったんだった。…えー、颯人を呼ぶの嫌だしなぁ。詰め替え用って確か棚の上にあったよな…」
ブツブツと呟いて、風呂場のドアをそっと開ける。すぐ横にある棚の一番上に、ボディーソープやシャンプー、トリートメントの詰め替え用が、並べて置いてある。
これ、出ないと取れないよね…。でもこのまま出ると、床が濡れちゃうよね…。濡れた床を拭くの、面倒だよね…。
だからと言って、颯人を呼びたくない。だって颯人は、俺のことを好きだと言ってるんだよ?絶対に俺の裸を見ようとしてくる。そういう目で見られるのって、何か恥ずかしいし…。
うーん…と腕を組んで悩んでいると、チクリと右手が痺れた。
右手の甲には、火傷の痕が残っている。皮膚が突っ張って変な感じはするけど、もう痛くない痕を見つめていると、突然あることを思い出した。
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