炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
上 下
147 / 432

謎の男 12

しおりを挟む
「また笑ってる…。カナデって、意外と大物?」


サッシャが呆れた様子で俺を見ると、両掌を上に向けて腕を上げた。
サッシャの頭上に幾つもの光の矢が現れ、腕を振った瞬間矢が消える。


「え?」


驚いて視線を巡らせると、光の矢が、男がいた場所に突き刺さっている。


「ちっ…、すばしっこい奴…」


サッシャが舌打ちをして、もう一度光の矢を作る。
俺がサッシャの動きに見とれていると、目の端に赤い色が見えて振り向いた。
アルファムが、赤い炎の剣を手に走り出す。


「リオ、援護しろ」
「はっ」


アルファムが、男との距離を一気に詰める。
男が飛ばした黒い雷がアルファムの顔に当たりそうになった瞬間、リオが炎の玉を飛ばして雷を弾く。
その直後、アルファムが左下から振り上げた炎の剣が、男を切った。と思ったけど、男が瞬時に仰け反った為に、マントを切り裂いただけだった。


「本当にすばしっこい奴だ。サッシャ王子!」
「わかってるよ!」


叫ぶと同時に、サッシャが光の矢を飛ばす。
男の身体に刺さったように見えた矢は、全て弾かれてキラキラと消えていった。


「くそ…っ!あの黒い雷、やっかいだな。全ての攻撃を弾いてる」
「四方から攻撃するぞ。リオ!」
「わかった。ミケ!行くよっ」
「「はっ」」


四人と兵達が男の周りに散らばって取り囲む。俺も行こうとしたけど、やっぱり足でまといになりそうで、少し離れた場所で待機する。
それぞれが魔法で炎や光の武器を作り、一斉に飛ばした。
炎の赤と光の眩さで男の姿がかき消される。
あまりの眩しさに目を逸らして、すぐに戻そうとした瞬間、身体に衝撃を受けた。


「カナーっ!」
「うわっ!」


後ろに飛ばされ地面に倒れ込む。でも誰かが俺の下敷きになってるみたいで、そんなに痛くはなかった。


「いた…、なに?…え?ア、アル!!」


俺の身体を抱きしめたまま、アルファムが倒れていた。俺を見て微笑むけど、微かに顔が苦痛に歪んでいる。


「アル…!だ、大丈夫?」
「…ああ。カナは無事か?」
「俺はどこも……」


アルファムを起こそうとアルファムの背中に回した俺の手が、ぬるりとした物に触れる。
一瞬、ドキリとして恐る恐る手を目の前に持ってきて、俺は悲鳴を上げた。


「ひっ!なっ、なんでっ!?」
「また邪魔されて仕留め損ねた」


背後から聞こえた声に、ゆっくりと振り返り顔を上げる。
ボロボロになったマントをたなびかせて、男が無表情で俺を見下ろしていた。


「あんた…やられたんじゃ…!」
「あれぐらいの攻撃を避けるのは容易い。数が多くて多少くらってしまったが、マントが破れただけで、俺は無傷だ。おまえらが、自分達が放った魔法で目を眩ませてる隙に、おまえに近づいて心の臓に穴を開けてやろうとしたら、そいつに邪魔された。おかげで、おまえの心の臓を貫く筈だった俺の雷が、そいつの腹を貫いた」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

変態お父さんに騙されて育ったけれど幸せです❤︎

Sara
BL
純粋でちょっぴりおバカな可愛い男の子が、実父から間違った性教育を受けて、えっちなお嫁さんにさせられてしまう話。

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

処理中です...