炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
上 下
130 / 432

日の国ディエス 21

しおりを挟む
俺がリオの手当を受けていると、近くで黄色い閃光が走り、驚いてそちらを見た。
何が起こったのかよくわからなかったけど、サッシャが魔法を使ったらしく、俺を襲った男が地面に倒れて、身体をロープらしき物でぐるぐる巻きにされていた。


ホッと安堵の息を吐いた俺に、リオが、またポツリと呟く。


「カナデ、まだ安心は出来ないよ。襲ってきたアイツが何者なのか調べないといけないし、カナデの傷も、今は応急処置だから、城へ戻って綺麗に治さないといけない。それに、このことをアルファム様に報告する義務もある。あと…あいつ、ハマトと言ったっけ?あいつのカナデに対する態度も気になる…」
「リオ…、俺はなんでこんなに狙われるんだろ…。この世界では、やっぱり俺は邪魔者なのかな。ただアルの傍にいたいだけなのに…。リオもごめん。いつも迷惑かけてる…」
「迷惑なんて思ってない。俺は、アルファム様とカナデの幸せな顔を見るのが好きなんだ。カナデが来てから、アルファム様は本当に幸せな顔をするんだ。アルファム様は当然だけど、俺も、今更カナデがいない世界なんて考えられない。カナデ…俺こそ、ごめん。今回はすぐ傍にいたのに、守ってあげられなくて…ごめん」
「リオ…」


俺の腕に当てたリオの手が、小刻みに震えている。
リオの優しい言葉に胸が詰まって泣きそうになる。
その時、背後からミケの緊迫した声がした。


「サッシャ様!とりあえず止血と応急処置はしましたが、危ないかもしれません。ハマトを早く連れて帰りましょう!」
「わかった。ミケ、おまえの馬に乗せて、今すぐハマトを連れて帰れ。途中、兵の駐留所に寄って、数名をこちらに寄こせ。リオもカナデを連れて先に戻って。腕以外にも怪我をしているみたいだから」
「サッシャ様!あなた一人を得体の知れないそいつと二人だけにはさせられません!俺も残ります。リオ殿、申し訳ないが、このハマトも城へ連れて帰ってもらえないだろうか?それと、城へ着いたら兵を数名、こちらへ寄越すように伝えて欲しい」


ミケの提案に、リオが素直に頷く。
俺は、ほぼ傷の塞がった腕からリオの手を離すと、よろよろと立ち上がり、リオに支えてもらいながらハマトの近くに寄った。



「ミケさん、ハマト…大丈夫ですよね?ハマトは、俺を二度も庇って刺されたんです…っ」



言いながら、俺の頬を涙が伝う。
ハマトは、本当に身を呈して俺を守ってくれたんだ。まだ会って間がない俺に、なんで命をかけられるんだろう…。


苦しそうに歪む土気色のハマトの顔が、なぜか颯人と重なり、俺は更に大粒の涙を零した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

処理中です...