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日の国ディエス 21
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俺がリオの手当を受けていると、近くで黄色い閃光が走り、驚いてそちらを見た。
何が起こったのかよくわからなかったけど、サッシャが魔法を使ったらしく、俺を襲った男が地面に倒れて、身体をロープらしき物でぐるぐる巻きにされていた。
ホッと安堵の息を吐いた俺に、リオが、またポツリと呟く。
「カナデ、まだ安心は出来ないよ。襲ってきたアイツが何者なのか調べないといけないし、カナデの傷も、今は応急処置だから、城へ戻って綺麗に治さないといけない。それに、このことをアルファム様に報告する義務もある。あと…あいつ、ハマトと言ったっけ?あいつのカナデに対する態度も気になる…」
「リオ…、俺はなんでこんなに狙われるんだろ…。この世界では、やっぱり俺は邪魔者なのかな。ただアルの傍にいたいだけなのに…。リオもごめん。いつも迷惑かけてる…」
「迷惑なんて思ってない。俺は、アルファム様とカナデの幸せな顔を見るのが好きなんだ。カナデが来てから、アルファム様は本当に幸せな顔をするんだ。アルファム様は当然だけど、俺も、今更カナデがいない世界なんて考えられない。カナデ…俺こそ、ごめん。今回はすぐ傍にいたのに、守ってあげられなくて…ごめん」
「リオ…」
俺の腕に当てたリオの手が、小刻みに震えている。
リオの優しい言葉に胸が詰まって泣きそうになる。
その時、背後からミケの緊迫した声がした。
「サッシャ様!とりあえず止血と応急処置はしましたが、危ないかもしれません。ハマトを早く連れて帰りましょう!」
「わかった。ミケ、おまえの馬に乗せて、今すぐハマトを連れて帰れ。途中、兵の駐留所に寄って、数名をこちらに寄こせ。リオもカナデを連れて先に戻って。腕以外にも怪我をしているみたいだから」
「サッシャ様!あなた一人を得体の知れないそいつと二人だけにはさせられません!俺も残ります。リオ殿、申し訳ないが、このハマトも城へ連れて帰ってもらえないだろうか?それと、城へ着いたら兵を数名、こちらへ寄越すように伝えて欲しい」
ミケの提案に、リオが素直に頷く。
俺は、ほぼ傷の塞がった腕からリオの手を離すと、よろよろと立ち上がり、リオに支えてもらいながらハマトの近くに寄った。
「ミケさん、ハマト…大丈夫ですよね?ハマトは、俺を二度も庇って刺されたんです…っ」
言いながら、俺の頬を涙が伝う。
ハマトは、本当に身を呈して俺を守ってくれたんだ。まだ会って間がない俺に、なんで命をかけられるんだろう…。
苦しそうに歪む土気色のハマトの顔が、なぜか颯人と重なり、俺は更に大粒の涙を零した。
何が起こったのかよくわからなかったけど、サッシャが魔法を使ったらしく、俺を襲った男が地面に倒れて、身体をロープらしき物でぐるぐる巻きにされていた。
ホッと安堵の息を吐いた俺に、リオが、またポツリと呟く。
「カナデ、まだ安心は出来ないよ。襲ってきたアイツが何者なのか調べないといけないし、カナデの傷も、今は応急処置だから、城へ戻って綺麗に治さないといけない。それに、このことをアルファム様に報告する義務もある。あと…あいつ、ハマトと言ったっけ?あいつのカナデに対する態度も気になる…」
「リオ…、俺はなんでこんなに狙われるんだろ…。この世界では、やっぱり俺は邪魔者なのかな。ただアルの傍にいたいだけなのに…。リオもごめん。いつも迷惑かけてる…」
「迷惑なんて思ってない。俺は、アルファム様とカナデの幸せな顔を見るのが好きなんだ。カナデが来てから、アルファム様は本当に幸せな顔をするんだ。アルファム様は当然だけど、俺も、今更カナデがいない世界なんて考えられない。カナデ…俺こそ、ごめん。今回はすぐ傍にいたのに、守ってあげられなくて…ごめん」
「リオ…」
俺の腕に当てたリオの手が、小刻みに震えている。
リオの優しい言葉に胸が詰まって泣きそうになる。
その時、背後からミケの緊迫した声がした。
「サッシャ様!とりあえず止血と応急処置はしましたが、危ないかもしれません。ハマトを早く連れて帰りましょう!」
「わかった。ミケ、おまえの馬に乗せて、今すぐハマトを連れて帰れ。途中、兵の駐留所に寄って、数名をこちらに寄こせ。リオもカナデを連れて先に戻って。腕以外にも怪我をしているみたいだから」
「サッシャ様!あなた一人を得体の知れないそいつと二人だけにはさせられません!俺も残ります。リオ殿、申し訳ないが、このハマトも城へ連れて帰ってもらえないだろうか?それと、城へ着いたら兵を数名、こちらへ寄越すように伝えて欲しい」
ミケの提案に、リオが素直に頷く。
俺は、ほぼ傷の塞がった腕からリオの手を離すと、よろよろと立ち上がり、リオに支えてもらいながらハマトの近くに寄った。
「ミケさん、ハマト…大丈夫ですよね?ハマトは、俺を二度も庇って刺されたんです…っ」
言いながら、俺の頬を涙が伝う。
ハマトは、本当に身を呈して俺を守ってくれたんだ。まだ会って間がない俺に、なんで命をかけられるんだろう…。
苦しそうに歪む土気色のハマトの顔が、なぜか颯人と重なり、俺は更に大粒の涙を零した。
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