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混乱 10
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アルファムに「俺は嬉しかったぞ」と宥められているうちに、宴が始まった。
今までに見たことも無いような美味しそうな料理が出てきて、沢山食べたいのだけど、次から次に皆がアルファムに挨拶に来るので、落ち着いて食べていられない。
それに、アルファムに挨拶するついでに俺にも声をかけていくから、笑顔で頷き返すのが忙しい。
料理は中々食べることが出来ないけど、お酒は次々に注がれていくので、すぐに酔いが回ってしまった。
すごくフワフワとして気持ち良く、挨拶に来る人達ににこやかに笑い返していたら、「カナデ」と低い声に呼ばれた。
そちらを見ると、レオナルトが心配そうに俺を見ている。
「カナデ、大丈夫か?飲みすぎではないか?ナジャ、水を持って来い」
「はい」
離れていくナジャを目で追って、俺はふにゃりと笑う。
「大丈夫だよ、レオン。俺…そんなにお酒弱くないよ?」
「弱くないとしても、その顔はダメだろ。おまえの王様は挨拶に忙しくて気づいてないようだが…」
「んぅ?」
レオナルトに言われて隣を見ると、アルファムはまだ忙しそうにいろんな人達と話していて、俺のことを見てくれない。
その向こう側にいるローラントも、数人に囲まれていて、すごく自分勝手なんだけど、俺は疎外感を感じて寂しくなってしまった。
俺はそっと立ち上がり、部屋の外へと向かう。
すぐにレオナルトが、俺の肩を支えるようにしてついてきた。
「レオンはここにいなきゃ。他の国の人達と話すこととかあるだろ?」
「…まあな。でも、今一番優先すべきはカナデだ。外に出て風に当たるか…」
賑やかに話す人達の間を縫って、部屋の外に出る。長い廊下を進み、突き当たりを曲がった先にある扉を開けると、そこは花が咲き乱れる中庭だった。
ーーあれ?この扉からもここに来れるんだ。俺、方向音痴だからどうなってるのか、よくわからないな…。
「へぇ…。綺麗な庭だな。俺の城にもあるが、これ程花は咲いていない」
「そうなの?レオン、こっち…」
レオナルトを泉まで案内して、泉の縁に腰掛ける。
「俺、この泉が好きなんだ。常に水が湧き出してるみたいで、すっごく綺麗だろ?」
「ほう…確かに。澄んだ水が鏡のように空を映し出してるな」
レオナルトも座りながら、そう言って泉に手を浸す。
「ああ、なるほど。これは治癒も兼ねる泉なのだな。我が水の国にこのような泉があるが、炎の国にもあったのだな」
レオナルトが水を掌にすくって、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「珍しいの?」
「いや、たぶん、どこの国にもこのような泉はあるのだろう。ただ水の国は、限られた場所だけではなく、国中のどの水にもこの泉と同じ効果があるぞ」
「へえっ、すごいねっ」
俺が身を乗り出してそう言うと、レオナルトがフッ…と笑って、俺の頭に手を置いた。
「やっと明るい顔に戻った。カナデはやはり、笑ってる方がいい。…さて、そろそろ戻るか。今頃エン国王が『カナデがいない!』と大騒ぎしてるかもしれないぞ。俺が連れ出したとバレたら、今度こそ殺されるな…」
「えっ!そんなことさせないよっ。だって、勝手に出てきたのは俺なんだしっ。レオン…ありがとう。レオンには助けてもらってばかりだね…」
「ん?そうか?ふっ、そうだな…。もしカナデが申し訳ないと思ってるなら、いつか、スイ国へ遊びに来てくれないか?」
「も、もちろんだよっ!いいの?ていうか、それってお礼にもならないしっ」
「よい。まあエン国王の許可を取るのが難儀だろうがな」
「あ…そうだね」
顔を見合わせて、二人で声を出して笑う。
暫くして笑いが収まり、部屋へ戻ろうと立ち上がって歩き出した所へ、「レオナルト様…」と呼ぶ小さな声が聞こえた。
今までに見たことも無いような美味しそうな料理が出てきて、沢山食べたいのだけど、次から次に皆がアルファムに挨拶に来るので、落ち着いて食べていられない。
それに、アルファムに挨拶するついでに俺にも声をかけていくから、笑顔で頷き返すのが忙しい。
料理は中々食べることが出来ないけど、お酒は次々に注がれていくので、すぐに酔いが回ってしまった。
すごくフワフワとして気持ち良く、挨拶に来る人達ににこやかに笑い返していたら、「カナデ」と低い声に呼ばれた。
そちらを見ると、レオナルトが心配そうに俺を見ている。
「カナデ、大丈夫か?飲みすぎではないか?ナジャ、水を持って来い」
「はい」
離れていくナジャを目で追って、俺はふにゃりと笑う。
「大丈夫だよ、レオン。俺…そんなにお酒弱くないよ?」
「弱くないとしても、その顔はダメだろ。おまえの王様は挨拶に忙しくて気づいてないようだが…」
「んぅ?」
レオナルトに言われて隣を見ると、アルファムはまだ忙しそうにいろんな人達と話していて、俺のことを見てくれない。
その向こう側にいるローラントも、数人に囲まれていて、すごく自分勝手なんだけど、俺は疎外感を感じて寂しくなってしまった。
俺はそっと立ち上がり、部屋の外へと向かう。
すぐにレオナルトが、俺の肩を支えるようにしてついてきた。
「レオンはここにいなきゃ。他の国の人達と話すこととかあるだろ?」
「…まあな。でも、今一番優先すべきはカナデだ。外に出て風に当たるか…」
賑やかに話す人達の間を縫って、部屋の外に出る。長い廊下を進み、突き当たりを曲がった先にある扉を開けると、そこは花が咲き乱れる中庭だった。
ーーあれ?この扉からもここに来れるんだ。俺、方向音痴だからどうなってるのか、よくわからないな…。
「へぇ…。綺麗な庭だな。俺の城にもあるが、これ程花は咲いていない」
「そうなの?レオン、こっち…」
レオナルトを泉まで案内して、泉の縁に腰掛ける。
「俺、この泉が好きなんだ。常に水が湧き出してるみたいで、すっごく綺麗だろ?」
「ほう…確かに。澄んだ水が鏡のように空を映し出してるな」
レオナルトも座りながら、そう言って泉に手を浸す。
「ああ、なるほど。これは治癒も兼ねる泉なのだな。我が水の国にこのような泉があるが、炎の国にもあったのだな」
レオナルトが水を掌にすくって、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「珍しいの?」
「いや、たぶん、どこの国にもこのような泉はあるのだろう。ただ水の国は、限られた場所だけではなく、国中のどの水にもこの泉と同じ効果があるぞ」
「へえっ、すごいねっ」
俺が身を乗り出してそう言うと、レオナルトがフッ…と笑って、俺の頭に手を置いた。
「やっと明るい顔に戻った。カナデはやはり、笑ってる方がいい。…さて、そろそろ戻るか。今頃エン国王が『カナデがいない!』と大騒ぎしてるかもしれないぞ。俺が連れ出したとバレたら、今度こそ殺されるな…」
「えっ!そんなことさせないよっ。だって、勝手に出てきたのは俺なんだしっ。レオン…ありがとう。レオンには助けてもらってばかりだね…」
「ん?そうか?ふっ、そうだな…。もしカナデが申し訳ないと思ってるなら、いつか、スイ国へ遊びに来てくれないか?」
「も、もちろんだよっ!いいの?ていうか、それってお礼にもならないしっ」
「よい。まあエン国王の許可を取るのが難儀だろうがな」
「あ…そうだね」
顔を見合わせて、二人で声を出して笑う。
暫くして笑いが収まり、部屋へ戻ろうと立ち上がって歩き出した所へ、「レオナルト様…」と呼ぶ小さな声が聞こえた。
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