炎の国の王の花

明樹

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新たな始まり 5

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アルファムは、暫く黙って俺を見ていたけど、小さく息を吐くと、俺に向き直って話し出した。


「聞いても面白くもない話だが…。カナ、俺には3つ離れた弟がいる。今は離れた城に住んでいる。俺の母親の身分は低いのだが、弟の母親は、遡れば王族の血筋の出である高貴な身分だった。だからか、兄から順番の皇位継承権があるにも関わらず、弟の母親は弟を次の王にと望んでいたのだ」
「うん…」


俺も開いていた本を閉じて、アルファムと向き合う。


「俺は子供の頃から幾度となく刺客に襲われた。毒を盛られたこともあるし切られもした。カナ、背中の傷を見ただろ?あれの殆どは、刺客に襲われた時の傷だ」
「えっ!そんな…っ。子供の頃から…?」
「ああ。誰が俺を襲わせたのかは、誰もが分かっていた。だが、相手の身分が高すぎて誰も手出し出来なかった。ただ、俺の母親とシアンが守ってくれたからな、致命傷になることはなかったのだ」


チラリとシアンを見ると、優しく微笑んでこちらを見ていた。


「父上は政務に忙しくて、妻や子供にはあまり関心がなかったのだろう。俺が襲われても、警護を厳しくすることしかしなかった。そうこうするうちに、相手がやり過ぎた。間違えて俺の器に入っていた料理を口にした母親が、死んだのだ。俺は万が一のことを考えて、毎日少量の毒を摂取して慣らしていたが、そんなことをしていなかった母親には致命傷だったんだ…」
「アル…」


俺は立ち上がるとアルファムの傍へ行き、そっと頭を抱きしめた。


「そんな辛いことがあったんだね…。思い出すのも辛いのに、俺に話してくれてありがとう…」
「いや、辛いことだが、忘れてはいけないことでもある。それに、おまえには俺の全てを知ってもらいたい。嫌な話をして悪かった…」
「嫌だなんてっ。俺もアルのこと知りたかったから、すごく嬉しい…」
「そうか…。そういえば、カナの両親は?元の世界で健在か?」


俺は、アルファムの頭を抱く腕に力を込める。


「…ううん。俺にはもう両親はいないんだ。俺が子供の頃に、事故で死んだ…。祖父に引き取られて育ててもらったけど、祖父も去年、病気で…」
「そうか…、カナも辛い目にあってきたのだな。カナ、これからは俺が幸せにしてやる。カナも、俺を幸せにしてくれるか?」


アルファムが立ち上がって俺を抱きしめ、つむじにキスを落とす。


「うん、俺、アルを幸せにする。…ふふ、なんかプロポーズみたい」
「プロポーズ?」
「うん。結婚してください、ってお願いするやつ」
「そうか…プロポーズ…。カナ、今はまだその時期ではないが、俺の成すべきことをやって、周りに認めさせて、いつかカナにプロポーズとやらをしよう。待っていてくれるか?」

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