53 / 432
新たな始まり 3
しおりを挟む
俺が暗い顔をしていたからか、リオが俺の背中をポンと軽く叩いた。
「でも俺の尊敬するアルファム様だからな。即座にカナデを捜す為に城を出た。ライラ様には『俺が戻って来るまでに出て行くように』と仰って」
俺の胸がズキンと痛む。
ライラのことは、あまり好きではなかった。だけど彼女の様子から、彼女はアルファムが好きだった筈だ。アルファムとの結婚を夢見ていた筈だ。今回のことで、きっと、俺を憎んでるに違いない。
でも…ごめんなさい。
俺も、アルファムが好き。アルファムを愛してる。やっと巡ってきた幸せを、手放すことは出来ない。
ライラを思って胸が痛むけど、その痛みを抱えたまま、俺はアルファムの隣にいると決めたんだ。
「うん…。それで?」
「アルファム様が厩舎に行くと、ヴァイスの姿が無かった。アルファム様は、空の厩舎を見て、大きな声で笑い出したんだ。『ヴァイスめ、あいつまでカナが大好きなんだな』って」
「…ヴァイス、怒られてなかった?俺の願いをきいて、遠くまで乗せてくれたんだ…」
「大丈夫だよ、カナデ。別の馬に乗って行こうとした時に、ヴァイスが戻って来たんだ。アルファム様の傍に寄って来たヴァイスを、アルファム様は『よくやった』と褒めてらしたよ」
「アル…」
俺は、ホッと安堵の息を吐いた。
俺を迎えに来た時に、アルファムとヴァイスの間に変な空気は感じられなかった。
それにアルファムが、とても大事にしてるヴァイスに、理由もなく酷いことをする筈がないと信じてた。
リオが立ち上がり、俺の正面に立って続ける。
「そこからは素早かったよ。人数が多いと動きが鈍くなるから、アルファム様と俺が、騎翔馬で空から遠くを捜索、他の数十名で、念の為城の近くをくまなく捜索せよと命令して、すぐに出発した」
「…でも、どうして俺の行き先がわかったの?」
「カナデ、アルファム様からもらった腕輪をつけてるだろ?」
「つけてるけど…。あっ!そうだった!この腕輪って…っ」
「そうそう。カナデがどこにいるかわかるようになってるよな」
以前、レオナルトに連れ去られそうになった時、目印にと腕輪の石を順番に落としていったんだ。その時にアルファムが、『この石にはカナがどこにいてもわかるように魔法が施してある』と言ってたんだ。
前の腕輪は石が足りなくなってしまったから、新たに腕輪をもらったけど…。
そうか。この腕輪にも、魔法が施してあったんだ。それで、捜しに来てくれた…。
「リオ…、俺、勝手なことしてごめん。アルやリオが、俺を見捨てずに捜しに来てくれて良かった。本当にありがとう」
「はあ?アルファム様がカナデを見捨てる訳ないじゃん!俺が大好きな友達を見捨てる訳ないじゃん!…カナデが無事で本当に良かった。でも、怪我する前に助けられなかった…。ごめん…」
「リオはちゃんと助けてくれたよ?リオがいなかったら、風の国のあの男に殺されてたかもしれないんだよっ。俺、今回のことでもっと強くなりたい!って思ったんだ。だからリオ。もっと俺を鍛えて」
「…カナデ。よし!わかった!今から俺は厳しくいくからなっ」
「うん!」
お互い顔を見合わせると、ププッと思いっきり吹き出した。
「でも俺の尊敬するアルファム様だからな。即座にカナデを捜す為に城を出た。ライラ様には『俺が戻って来るまでに出て行くように』と仰って」
俺の胸がズキンと痛む。
ライラのことは、あまり好きではなかった。だけど彼女の様子から、彼女はアルファムが好きだった筈だ。アルファムとの結婚を夢見ていた筈だ。今回のことで、きっと、俺を憎んでるに違いない。
でも…ごめんなさい。
俺も、アルファムが好き。アルファムを愛してる。やっと巡ってきた幸せを、手放すことは出来ない。
ライラを思って胸が痛むけど、その痛みを抱えたまま、俺はアルファムの隣にいると決めたんだ。
「うん…。それで?」
「アルファム様が厩舎に行くと、ヴァイスの姿が無かった。アルファム様は、空の厩舎を見て、大きな声で笑い出したんだ。『ヴァイスめ、あいつまでカナが大好きなんだな』って」
「…ヴァイス、怒られてなかった?俺の願いをきいて、遠くまで乗せてくれたんだ…」
「大丈夫だよ、カナデ。別の馬に乗って行こうとした時に、ヴァイスが戻って来たんだ。アルファム様の傍に寄って来たヴァイスを、アルファム様は『よくやった』と褒めてらしたよ」
「アル…」
俺は、ホッと安堵の息を吐いた。
俺を迎えに来た時に、アルファムとヴァイスの間に変な空気は感じられなかった。
それにアルファムが、とても大事にしてるヴァイスに、理由もなく酷いことをする筈がないと信じてた。
リオが立ち上がり、俺の正面に立って続ける。
「そこからは素早かったよ。人数が多いと動きが鈍くなるから、アルファム様と俺が、騎翔馬で空から遠くを捜索、他の数十名で、念の為城の近くをくまなく捜索せよと命令して、すぐに出発した」
「…でも、どうして俺の行き先がわかったの?」
「カナデ、アルファム様からもらった腕輪をつけてるだろ?」
「つけてるけど…。あっ!そうだった!この腕輪って…っ」
「そうそう。カナデがどこにいるかわかるようになってるよな」
以前、レオナルトに連れ去られそうになった時、目印にと腕輪の石を順番に落としていったんだ。その時にアルファムが、『この石にはカナがどこにいてもわかるように魔法が施してある』と言ってたんだ。
前の腕輪は石が足りなくなってしまったから、新たに腕輪をもらったけど…。
そうか。この腕輪にも、魔法が施してあったんだ。それで、捜しに来てくれた…。
「リオ…、俺、勝手なことしてごめん。アルやリオが、俺を見捨てずに捜しに来てくれて良かった。本当にありがとう」
「はあ?アルファム様がカナデを見捨てる訳ないじゃん!俺が大好きな友達を見捨てる訳ないじゃん!…カナデが無事で本当に良かった。でも、怪我する前に助けられなかった…。ごめん…」
「リオはちゃんと助けてくれたよ?リオがいなかったら、風の国のあの男に殺されてたかもしれないんだよっ。俺、今回のことでもっと強くなりたい!って思ったんだ。だからリオ。もっと俺を鍛えて」
「…カナデ。よし!わかった!今から俺は厳しくいくからなっ」
「うん!」
お互い顔を見合わせると、ププッと思いっきり吹き出した。
1
お気に入りに追加
1,670
あなたにおすすめの小説


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる