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風の国の男 5 【挿絵あり】
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「え?」
ゆっくりと両手を持ち上げて顔を下に向ける。
俺の両腕と両足の服が裂け、ポタポタと真っ赤な血が滴り落ちていた。
「な…なんで…」
「なあおまえ、あそこで情けなく震えてるスイ国王から俺のことを聞いてるだろ?俺は風の国の王子だ。俺は風を操る。自由自在に操ることが出来る。風の力で、おまえの華奢な身体を切り刻むことなど容易いのだ。俺は、おまえの黒髪と容姿がとても気に入った。だから中身はなくともよい。それに、おまえは俺に刃向かい痛みを与えた。絶対に許せない。だから殺して、身体だけを持って帰ると決めた」
「なっ!はあっ、はあっ…」
一拍置いて痛み出した腕と足が震えて、その場に倒れそうになる。
だけど、ここで倒れてしまったら終わりだ。
こいつは、アルファムやレオナルトとは全く違う。
会ったばかりの俺を、躊躇なく傷つけた。そして今、殺すとはっきり言った。
この世界に来て、初めて俺は怖いと感じた。命の危険を感じた。
痛みと恐怖で呼吸が早くなって苦しい。今にも意識を失いそうだ。
こんな時に思うのは、アルファムのこと。
アルファム、俺は、アルファムとライラが仲良くしてる姿を見たくなくて、あの城を出たんだ。アルファムに冷たくされるのが怖くて、逃げたんだ。
だけど本心は、誰の傍にいてもいいからアルファムを見ていたかった。たとえ酷くされてもいいから、アルファムの大きな手で触れられたかった。
自分の意思でアルファムから離れて、もうすぐ炎の国を出るという所まで来て、そして今
、殺されるかもしれない目に合っている。
チラリと腰に括りつけた剣を見た。
風が相手では剣は使えない。ましてや、傷ついたこの腕では、持つことも叶わない。
レオナルトが俺を助けようと、這いずりながら手を伸ばしている姿が見える。だけどレオナルトもナジャも、動くこともままならず魔法を出すことも出来ないようだった。
「ほう…、切れた服から覗く肌のなんと白いことか。おまえを裸にして、俺の宝物と並べて飾ってやろう。楽しみだ」
バルテル王子の冷たい声を浴びて、背中にぞくりと悪寒が走る。
俺は、ひどく緩慢な動作で振り返った。
視線の先で、バルテル王子が楽しそうに笑いながら、右手を真上にあげる。その手を振り下ろした瞬間、ヒュン!と風を切る音と共に、何かが迫り来る気配を感じた。
「アル…っ」
俺は死を覚悟して、愛しい人の名前を叫んだ。
刹那、視界が大きな影に遮られ、俺の身体が強く抱きしめられる。
ここにいる筈のない大好きな人の匂いと温もりに、抑え込んでいた気持ちが一気に溢れ出した。
「あ…アルっ!!」
ゆっくりと両手を持ち上げて顔を下に向ける。
俺の両腕と両足の服が裂け、ポタポタと真っ赤な血が滴り落ちていた。
「な…なんで…」
「なあおまえ、あそこで情けなく震えてるスイ国王から俺のことを聞いてるだろ?俺は風の国の王子だ。俺は風を操る。自由自在に操ることが出来る。風の力で、おまえの華奢な身体を切り刻むことなど容易いのだ。俺は、おまえの黒髪と容姿がとても気に入った。だから中身はなくともよい。それに、おまえは俺に刃向かい痛みを与えた。絶対に許せない。だから殺して、身体だけを持って帰ると決めた」
「なっ!はあっ、はあっ…」
一拍置いて痛み出した腕と足が震えて、その場に倒れそうになる。
だけど、ここで倒れてしまったら終わりだ。
こいつは、アルファムやレオナルトとは全く違う。
会ったばかりの俺を、躊躇なく傷つけた。そして今、殺すとはっきり言った。
この世界に来て、初めて俺は怖いと感じた。命の危険を感じた。
痛みと恐怖で呼吸が早くなって苦しい。今にも意識を失いそうだ。
こんな時に思うのは、アルファムのこと。
アルファム、俺は、アルファムとライラが仲良くしてる姿を見たくなくて、あの城を出たんだ。アルファムに冷たくされるのが怖くて、逃げたんだ。
だけど本心は、誰の傍にいてもいいからアルファムを見ていたかった。たとえ酷くされてもいいから、アルファムの大きな手で触れられたかった。
自分の意思でアルファムから離れて、もうすぐ炎の国を出るという所まで来て、そして今
、殺されるかもしれない目に合っている。
チラリと腰に括りつけた剣を見た。
風が相手では剣は使えない。ましてや、傷ついたこの腕では、持つことも叶わない。
レオナルトが俺を助けようと、這いずりながら手を伸ばしている姿が見える。だけどレオナルトもナジャも、動くこともままならず魔法を出すことも出来ないようだった。
「ほう…、切れた服から覗く肌のなんと白いことか。おまえを裸にして、俺の宝物と並べて飾ってやろう。楽しみだ」
バルテル王子の冷たい声を浴びて、背中にぞくりと悪寒が走る。
俺は、ひどく緩慢な動作で振り返った。
視線の先で、バルテル王子が楽しそうに笑いながら、右手を真上にあげる。その手を振り下ろした瞬間、ヒュン!と風を切る音と共に、何かが迫り来る気配を感じた。
「アル…っ」
俺は死を覚悟して、愛しい人の名前を叫んだ。
刹那、視界が大きな影に遮られ、俺の身体が強く抱きしめられる。
ここにいる筈のない大好きな人の匂いと温もりに、抑え込んでいた気持ちが一気に溢れ出した。
「あ…アルっ!!」
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