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はじめまして新世界 2
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手首を掴まれたアルファ厶が、少しムッとして「なんだ?」と聞く。
俺は、部屋の中をキョロキョロと一通り見回すと、アルファ厶の手首を掴んだまま尋ねた。
「え~っと、俺の着替えをしてくれたみたいだから分かってるとは思うんだけど、もしも勘違いしてたら困るから言うけど、俺、男だからなっ?」
「知ってるが…、なんでわざわざ言うのだ」
不思議そうに聞いてくるアルファ厶を見て、ひきつった笑いを浮かべる。
「だってあんたが、俺のモノとか俺の宝石とか言うし…、それにいやらしく撫でたりするから…っ」
俺の言葉を聞くや否や、アルファ厶の腕を掴んでいた俺の手を離し、今度はアルファ厶が俺の腕を強く握りしめた。
「いたっ!痛いじゃん!何すんだよっ」
「あんたじゃない。アルだ。きちんと名前で呼べ」
「あ、アルっ。わかったから離してっ。ちゃんと呼ぶからっ…」
俺がアルファ厶の名前を呼ぶと、腕を握る手の力が少しだけ緩んだ。
俺は掴まれた腕を見て溜息を吐くと、『こいつ、やっぱり鬼なんじゃね?』と上目でアルファ厶を見る。
「なんだ?その目は。襲って欲しいのか?」
「ちっ、違うからっ!なあアル。俺、聞きたいことがいっぱいある。ちゃんと教えて欲しい」
「いいぞ。なんでも言え」
「えっと、ここは…」
やっと知りたいことが聞ける、と口を開きかけた瞬間、グゥー!と大きく俺の腹が鳴り、一瞬目を見開いたアルファ厶が、大きな口を開けて笑った。その笑顔がまるで太陽のように華やかで、俺は眩しいのと恥ずかしいのとで、顔を熱くして俯いた。
「話をする前に飯を食え。おまえは3日間、泉の水しか飲んでないのだからな」
「泉?」
「この城の奥庭にある泉だ。飲めば病が癒え、浸れば傷が早く治ると言われている。おまえの頭の傷も、俺が抱いて泉に浸ったから治りが早いのだ。気になるなら後で連れて行ってやる。まずは腹ごしらえだ」
そう言うと、アルファ厶は大きな手を合わせて2回パンパンと打った。
すぐに部屋の両開きの扉が開いて、今度は薄い橙色の髪の毛の優しげな男の人が入ってきた。
橙色の髪の人は、アルファ厶の傍まで来ると深く頭を下げた。そしてすぐに顔を上げて、「ご用件は?」と尋ねた。
「シアン、カナの飯をすぐに用意しろ。腹が減っているみたいだ」
「承知致しました。…カナ様。目が覚めたのですね。良かったです。すぐにお食事を用意しますので、少々お待ちください」
「あ…はいっ。すいません…」
ペコリと小さく頭を下げる俺に微笑んで、シアンと呼ばれた橙色の髪の人は、すぐに部屋から出て行った。
俺は、部屋の中をキョロキョロと一通り見回すと、アルファ厶の手首を掴んだまま尋ねた。
「え~っと、俺の着替えをしてくれたみたいだから分かってるとは思うんだけど、もしも勘違いしてたら困るから言うけど、俺、男だからなっ?」
「知ってるが…、なんでわざわざ言うのだ」
不思議そうに聞いてくるアルファ厶を見て、ひきつった笑いを浮かべる。
「だってあんたが、俺のモノとか俺の宝石とか言うし…、それにいやらしく撫でたりするから…っ」
俺の言葉を聞くや否や、アルファ厶の腕を掴んでいた俺の手を離し、今度はアルファ厶が俺の腕を強く握りしめた。
「いたっ!痛いじゃん!何すんだよっ」
「あんたじゃない。アルだ。きちんと名前で呼べ」
「あ、アルっ。わかったから離してっ。ちゃんと呼ぶからっ…」
俺がアルファ厶の名前を呼ぶと、腕を握る手の力が少しだけ緩んだ。
俺は掴まれた腕を見て溜息を吐くと、『こいつ、やっぱり鬼なんじゃね?』と上目でアルファ厶を見る。
「なんだ?その目は。襲って欲しいのか?」
「ちっ、違うからっ!なあアル。俺、聞きたいことがいっぱいある。ちゃんと教えて欲しい」
「いいぞ。なんでも言え」
「えっと、ここは…」
やっと知りたいことが聞ける、と口を開きかけた瞬間、グゥー!と大きく俺の腹が鳴り、一瞬目を見開いたアルファ厶が、大きな口を開けて笑った。その笑顔がまるで太陽のように華やかで、俺は眩しいのと恥ずかしいのとで、顔を熱くして俯いた。
「話をする前に飯を食え。おまえは3日間、泉の水しか飲んでないのだからな」
「泉?」
「この城の奥庭にある泉だ。飲めば病が癒え、浸れば傷が早く治ると言われている。おまえの頭の傷も、俺が抱いて泉に浸ったから治りが早いのだ。気になるなら後で連れて行ってやる。まずは腹ごしらえだ」
そう言うと、アルファ厶は大きな手を合わせて2回パンパンと打った。
すぐに部屋の両開きの扉が開いて、今度は薄い橙色の髪の毛の優しげな男の人が入ってきた。
橙色の髪の人は、アルファ厶の傍まで来ると深く頭を下げた。そしてすぐに顔を上げて、「ご用件は?」と尋ねた。
「シアン、カナの飯をすぐに用意しろ。腹が減っているみたいだ」
「承知致しました。…カナ様。目が覚めたのですね。良かったです。すぐにお食事を用意しますので、少々お待ちください」
「あ…はいっ。すいません…」
ペコリと小さく頭を下げる俺に微笑んで、シアンと呼ばれた橙色の髪の人は、すぐに部屋から出て行った。
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