ふれたら消える

明樹

文字の大きさ
上 下
50 / 89

24

しおりを挟む
 映画はそこそこ面白かった。期待してなかったけど、最後まで集中して観れた。
 俺と柊木は、トイレに寄ってから映画館を出た。外のまぶしい日差しに思わず顔をそむけると、横から「日差しが強いねぇ」と柊木が言った。

「ハンパなく眩しい。目が痛てぇ」
「俺、いい物持ってるよ。はいこれ」

 柊木がカバンから何かを取り出した。俺の手に握らされた物を見て「なにこれ」と顔を上げる。

「え?サングラス。これ良くない?」
「なにが」
「デザインが。このブランド好きなんだよね」
「ふーん、柊木がかければいいじゃん」
「今はいいよ。昊が眩しそうだからどうぞ」
「え…かっこ悪くね?」
「全然!カッコいいと思うから、どうぞ」

 俺は手の上のサングラスを見た。
 確かにこんな形のサングラスをかけてる人をよく見る。流行はやってるのか?でもさ、こういうの、海とかでかけるんじゃなくて?街中でもいいのか?まあ、かけてる人をよく見るからいいのか。
 俺は素直にかけてみた。そして少しだけテンションが上がる。これ、いいかも。眩しさが軽減されてすごくいい。かけ心地も悪くない。問題は、俺に似合ってるかどうかだ。すれ違う人々が柊木じゃなく俺を見ている。ということは、やっぱり変なんじゃねぇの?
 俺はすぐにサングラスを取って、柊木に返す。
 柊木が、俺と手に持つサングラスを交互に見て驚いている。

「え?かけないの?」
「いい。柊木がかけろよ。おまえの方が似合ってそうだし」
「そうかなぁ。でも昊にそう言ってもらえるの、嬉しいよ」

 そう言って、柊木がサングラスをかけた。
 ほら、やっぱりそうだ。柊木の方が似合ってんじゃん。モデル見たいじゃん。KーPOPアイドルみたいじゃん。なんて口に出しては言ってやらないけど。
 しばらく並んで歩いていると、柊木の腹が鳴った。

「腹減ったのか」
「うん、ごめん。昊、どこかの店に入ろうよ」
「いいけど…店に入る時、そのサングラスはずせよな」
「もちろん」

 少し歩くとカフェが見えてきた。確かもう少し先にも新しいカフェができていたはず。一度入ってみたいと思ってたけど、オープンしたばかりで混んでるよな。だから手前の店でいいか。
 俺は店を指さして柊木を見上げる。

「なあ、あそこでいい?」
「ん?ああ、あそこに見えてるオシャレな店?いいよ」
「じゃあ決まり。行こうか」

 店に着くと、柊木が扉を開けて俺を先に通してくれる。そして店員に「奥の席へどうぞ」と言われ、柊木を先頭に歩く。しかし柊木が途中で足を止めたので、不思議に思って俺も柊木の隣で足を止めた。そして夏樹と青を見つけた。

 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:965

BL書籍化作家になれました。全ての読者様にお礼申し上げます

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:47

ねむれない蛇

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:53

母になります。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:19,038pt お気に入り:2,168

ブラコンラプソディー

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

被虐趣味の鬼

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:28

あなたの隣で初めての恋を知る

BL / 連載中 24h.ポイント:505pt お気に入り:242

ハッピーエンドはカーテンコールのあとで

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

処理中です...