ふれたら消える

明樹

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「それで…青はどうすんの?」

 颯人が手に持った水を一口飲んで、再び俺を見る。
 俺はペットボトルを床に置くと、大きなため息をついた。

「…どうもしない。俺は何も言えないしできない」
「まあそうか。あ、俺が昊に聞いてみようか?」
「なんて?」
「篠山さんのこと、好きなのかどうか」
「いい。聞いて肯定されたら、立ち直れない」
「でもさ、このままじゃモヤモヤし続けるだろ?この際、はっきりさせた方がいいと思う。俺は青の気持ちを尊重してる。だけどもし本当に二人がつき合ってるなら、気持ちに区切りをつけて、青も前に進んでほしいとも思ってる」
「どういうこと?」
「青も誰かと付き合ってみたらってこと」
「…無理」
「ふはっ、想像通りの反応。わかってたけどな」
「じゃあそんな事言うなよ」
「そうだな…ごめん」

 颯人が軽く笑ったので、俺もつられて少しだけ笑った。
「でもなぁ」と颯人がベッドに背中を預けて天井をあおぐ。

「俺が勝手に思ってるだけなんだけどさ、篠山さんって昊のタイプじゃない気がする」
「俺も…そう思ってた」
「だよな?篠山さん、チャラいところあんじゃん?昊は青みたいなさわやか系が好きだと思うんだよなぁ」
「ありがとう。うん…、もし俺が弟じゃなかったら、俺にも可能性があったかな」
「ある!篠山より断然!ある!」
「ふっ、颯人にそう言われると、そうかなと思えてくるよ」
「あっ、なぁ、夏樹さんなら詳しいこと知ってるんじゃね?」
「あー、そうかも」
「聞く?」
「不審に思われないかな…」
「大丈夫だろ。夏樹さんも、青と昊が仲良いの知ってるし」
「うん…」
「じゃあ聞いてみるか」

 颯人が床に置いていたスマホを手に取り、片手でタップする。
 俺は慌てて颯人の腕を掴んで止めた。

「えっ、ちょっ!今?」
「今。早い方がいいじゃん。わかんないままだと、ずっと気持ち悪いじゃん」
「でも」
「ついでに暇そうなら来てもらおうよ」
「おまえ…強引だな」
「まあな」

 明るく笑う颯人を見て、俺は苦笑する。
 颯人は、昔から強引なところがある。困る時も多かったけど、助けられたこともあったなぁと懐かしく思って息を吐いた。
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