ふれたら消える

明樹

文字の大きさ
上 下
26 / 89

14

しおりを挟む
 放課後、昊と待ち合わせてフラペチーノを飲みに行った。
「わがまま言ったおび」として俺が支払うと、昊は「悪ぃな」と笑った。
 その笑顔を見て、ねてることがバカらしくなった。そうだ、夏樹が言ったとおり、別に一緒に寝れなくてもいい。同じ家にいて毎日会えるんだ。目を見て話ができるんだ。それでいいじゃん。
 本当は「好きだから一緒に寝たい、触れていたい」と言いたい。言えたらどれだけ良かっただろう。俺の気持ちを昊に知ってもらいたい。だけどそれをしてはダメだ。昊は優しいから俺を拒絶したりしないけど、軽蔑けいべつの目で見るかもしれない。俺が近づくと怖がるかもしれない。だから俺の気持ちは、決して悟られてはいけない。

「これ甘さ控え目でうまいな。もう一杯飲もうかなぁ」

 嬉しそうな昊の声に、俺は思考を止める。
 俺もフラペチーノを半分ほど一気に飲んで「冷て」と額を押さえた。

「一気に飲むからだろ。味わえよ」
「喉かわいてたから止まんなかった。てか昊、あんまり飲むと腹壊すよ?」
「大丈夫」
「よく壊してんじゃん」
「最近は大丈夫なの知ってんだろ」
「まあ…そだけど」

 昊は最後までスズっと飲み干すと「買ってくるわ」と席を立った。
 俺は息を吐いて、レジに並ぶ昊を見つめる。
 甘いものが好きなかわいくて綺麗な俺の兄。大切な人。前後に並ぶ女の子達よりも綺麗だ。
 その時、昊が手に持ったスマホを見て険しい顔をした。だけど俺の視線に気づいてすぐに笑う。
 どうしたのだろうと気になったけど、戻ってきた昊が、幸せそうにフラペチーノを飲む姿を見ているうちに、どうでもよくなった。
 そして案の定、家に帰ってから昊は、腹を壊してトイレにこもることになる。


 文化祭の後から一緒に寝なくなったこと以外にも、気になることがある。
 昊が休みの日によく出かけるようになった。夏樹と塾に行ってると思っていたけど、塾がない日にも出かける。昊に聞くと、図書館で勉強してると言う。昊の言うことを疑う訳じゃないけど、俺は昊の様子がおかしいと感じていた。でも昊が追求してほしくなさそうだったから、突っ込んでは聞かなかった。
 そして月日が過ぎ、昊は夏樹と共に志望校に合格して高校生になる。それと同時に俺の目標もできた。二年後、必ず昊と同じ高校に行く。
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49,729pt お気に入り:5,023

土方の性処理

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:37

中年教師と初恋と調教

BL / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:29

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:30,087pt お気に入り:494

【完結】夢見たものは…

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:28

僕の恋、兄の愛。

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:386

運命に抗え【第二部完結】

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:1,639

異世界転生したら、なんか詰んでた 精霊に愛されて幸せをつかみます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:11,562pt お気に入り:5,043

処理中です...