ふれたら消える

明樹

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 体育館の周りを歩いて昊を捜す。すぐに学校をぐるりと囲む塀と体育館の間にいる昊と篠山を見つけた。
 篠山が昊の肩に手を置いて、極端に顔を近づけて何かを話している。
 俺はカッとなって飛び出そうとしたけど、こちらに顔を向けた昊と目が合いやめた。本当は飛び出して篠山を殴りたい。俺の昊に触れるなと叫びたい。だけどそんなことは、してはダメなんだろう。俺は気にしないけど、昊が周りから変な目で見られたら困る。それに…俺は昊が好きだけど、昊は俺を弟として見ている。当たり前だ。だから俺の気持ちはバレてはいけない。バレて昊が離れてしまったら嫌だし辛い。だからせめて弟としてでいいから、昊の傍にいたいんだ。
 少し様子を見ようと壁の陰に隠れていると、走ってくる足音が近づいてきた。昊だ。
 俺は両手を広げて待ち構える。すぐに昊が現れて俺の胸にぶつかった。俺は強く抱きしめる。

「いってぇ…あっ、青っ。大丈夫か?」
「俺は大丈夫…。てか、あいつに何言われたの?」
「あー…告白された…」
「ちっ!またかよっ。どいつもこいつもムカつく!昊も呼び出されたらすぐに俺を呼べよ」
「えー。だって今日のは待ち伏せされたんだから仕方ねぇよ」
「…昊はなんて言ったの」
「無理って言った。だって篠山のこと、そういう風に見てないし。はあ…本当に困るよ。なんで男にばっかモテるんだろ。俺も青みたいにきたえた方がいいのかな…」

 俺はギョッとする。
 昊は抱きしめると柔らかい感触がする。女の裸を見たことはないけど、たまに洗面所で鉢合わせた時に見る昊の裸体は、誰よりも白くてきれいだと思う。

「青?どうした?」
「別に。じゃあ帰るよ」
「おう。なんか腹減ったなぁ。どっか寄る?」
「寄ってもいいけど…。母さんが今夜はハンバーグだって言ってたと思う」
「えっ!マジでっ?じゃあ早く帰んないとなっ」
「ぷっ!」
「なんだよ…」
「昊はかわいいよな」
「はあ?子供っぽいって言いたいのかよ。おまえの方がまだまだ子供じゃねぇか」
「ええ?どこが…」
「図体はデカくなったのに俺と一緒に寝たがるところ。おまえに場所を取られて狭いんだよ」
「えー。じゃあ別で寝る?」
「いや…まあ…いんだけどよ」

 照れてふい…と顔をそらす昊が、愛しくてたまらない。
 俺に文句を言ってても、俺が寂しそうにするとすぐに折れてしまう昊。好きだ。大好きだ。この気持ちを昊に話すことはない。だけど誰よりも傍にいて、昊を守るから。だから昊も俺の傍にいて。
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