ふれたら消える

明樹

文字の大きさ
上 下
7 / 89

7

しおりを挟む
 斜面の上を見上げると、颯大が心配そうにのぞき込んでいる。

「僕は大丈夫だよ!ちょっと待ってっ。昊が…っ」
「えっ?青の兄ちゃんどうしたのっ?」
「昊っ、どっか痛い?」

 僕は心臓をバクバクさせながら、身体を起こして昊に聞く。
 昊は、僕を見て笑おうとしたみたいだけど、すぐに顔をゆがませてうめき出した。

「青…大丈…っ、あっ、いたっ!いた…い」
「どっ、どこっ?」

 昊の身体を見ても、どこが痛いのかわからない。
 ごろりと横向きになった昊の背中側をのぞいて、僕の心臓が大きくねた。

「こっ、こうっ!背中っ!いっ、痛い…っ?あ…あ…どうしよう…」
「あっ!青の兄ちゃんっ、背中から血が出てるっ!俺っ、大人呼んでくるからっ!待っててっ」

 颯大がそう言うや否や、その場から急いで駆け出した。
 僕は、どうしたらいいのかわからなくて、ただ昊の手を握りしめて震えていることしか出来ない。

「青…大丈夫だよ…。こんなの…薬を塗ればすぐ治るから…。青こそ、痛いとこない?どこか…怪我してない?」
「いっ、痛くないっ…!ひっ、ひぅっ、ごっ、ごめんねっ…僕のせいだ…っ」
「違うよ…。青を助けようとして…俺が足を滑らせたんだ…。なんか…かっこ悪いな」
「ううんっ…!かっこよかった!昊は、かっこよくて綺麗でっ、僕の大好きな昊だよ…っ!」
「ありがとう、青…。俺も、青が大好き。青が怪我しなくて…本当に良かった…」

 ぽろぽろと僕の頬を流れ落ちる涙を、昊が細い指で拭う。
 その指がふいにポトリと地面に落ちて、昊がぐったりと動かなくなった。

「こっ、こう…?昊っ!やだっ!動いてよっ!死んじゃやだっ!こうーーっっ!」

 僕は、怖くて怖くて仕方なくて、昊の身体にしがみついて、颯大が大人を連れて戻って来るまで、ずっと泣き叫んでいた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:965

BL書籍化作家になれました。全ての読者様にお礼申し上げます

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:47

ねむれない蛇

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:53

母になります。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:18,163pt お気に入り:2,169

ブラコンラプソディー

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

被虐趣味の鬼

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:28

あなたの隣で初めての恋を知る

BL / 連載中 24h.ポイント:512pt お気に入り:242

ハッピーエンドはカーテンコールのあとで

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

処理中です...