天狗の花嫁

明樹

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銀ちゃんに抱えられたまま家に帰って来て、銀ちゃんにお風呂に連れ込まれて身体を洗われた。バスタオルで身体を拭き髪の毛も乾かしてもらって、銀ちゃんの部屋に敷いた布団に一緒に寝転ぶ。


銀ちゃんが俺を腕の中に閉じ込めて、本当に安堵したように言った。


「凛が無事に帰って来て良かった」


きっと、僧正さんから話を聞いてるだろうに、ただただ優しい銀ちゃんに、俺は申し訳なくなって涙を滲ませる。


「銀ちゃん…ごめんね…。俺、僧正さんから気をつけるようにって言われてたのに…、大丈夫だろうって軽く考えてた。銀ちゃんに心配かけちゃうのが嫌で…黙ってた。ごめん…っ」
「たぶん、そんな事だろうとわかってた。俺はおまえの事なら何でもわかるんだ。あのクソ野郎の事も清忠から聞いてたが、おまえは特に気にしてなかったんだろう?おまえは自分に寄せられる好意に鈍感だからな」
「う…っ、だって、ただ扱い易い生徒ぐらいに思ってるのかなって。俺の事好きになるのって、銀ちゃんだけだよ?それに、銀ちゃんが好きでいてくれたらそれで充分だから…」


俺の言葉に、銀ちゃんがとても嬉しそうに笑って口付ける。


「そうだな。俺も、おまえさえ好きでいてくれたら満足だ。凛…、言いたくないかもしれないが、あいつに何をされたか教えてくれるか?ああ、心配しなくても、あいつがおまえを抱いてないのは匂いでわかってる」


俺は、肩をびくりと揺らして銀ちゃんを見た。銀ちゃんに知られるのは嫌だけど、隠し事は嫌だ。俺は、重い口を開いて話し出した。


「先生…は、銀ちゃんの匂いが付いた俺を浄化すると言って…、俺の後ろ、に、妖術で作った蛇みたいな水を…、入れたんだ…。何度も入ってきて…、何度も中を洗われて…。俺、銀ちゃんの匂いが消えていくようで、怖かっ…たっ。銀ちゃん、俺の中の、銀ちゃんの匂いっ、消えてない?もう絶対に消えないように、いっぱい付けてよ…っ」


涙を流して叫ぶ俺を、銀ちゃんが強く抱きしめる。


「凛、凛、大丈夫だ。そんな事くらいで、おまえの中の俺の匂いは消えない。今だって、ちゃんと付いてるぞ。しかしあのクソ野郎っ、凛になんて事をしてくれたんだ…。俺の凛に触れるだけじゃなく、辛い目に合わせやがって!絶対に許さない…」


俺を抱きしめる銀ちゃんの腕が、怒りで震えている。


「ごめんね…」
「凛、おまえは悪くない。が、僧正に会ったことを内緒にしてた罰は受けてもらおうか。今からお仕置きだ」
「え?」


何をされるのかと驚いて銀ちゃんを見る。銀ちゃんは、とても意地の悪い顔をして、俺の唇に吸い付いてきた。
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