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清忠は、清忠の部屋の和室に敷かれた布団で眠っていた。傍に行き顔を覗くと、顔色はそんなに悪くはなくて、本当にただ、普通に眠ってるように見えた。今にも目を開けて、「凛ちゃん」と名前を呼んで笑いかけてきそうだ。
俺は清忠の手を握ると、願いを込めて言った。
「清…俺は無事だよ。早く目を覚ましてよ…」
俺が清忠の顔を見つめていると、反対側から視線を感じて顔を上げる。宗忠さんと並んで座る倉橋が、心配そうに俺を見ていた。
「椹木、ほんまに無事で良かった。どこも怪我はないんか?もし怪我をしてたら白に治してもらい。白はあれでも真葛のことを気に入ってたみたいでな、すぐに刺された傷を治してくれてん。だからもう、どこも悪くないはずなんやけどなぁ。真葛が起きよらへん」
「うん…、倉橋もありがと。白様に清のこと頼んでくれて。白様にもお礼を言わなきゃね…」
「ええって。そんなことよりも、真葛が目を覚ます方が先や。椹木も無事で帰って来たんやし、早よ起きたらええのに…」
清忠に目を向けた倉橋につられて、俺も清忠に視線を戻した。
その時、握っていた清忠の手がぴくりと動き、俺の手をかすかに握り返してくる。俺は清忠の顔の近くに顔を寄せて、耳元で大きな声を出した。
「清っ、凛だよっ。清が頑張ってくれたから、俺はどこも怪我してない。ぼろぼろになるまで戦ってくれたのに、俺は何にも出来なくてごめん…。清…お願いだから目を覚ましてくれよ…っ」
溢れた涙が清忠の頬にぽとりと落ちる。
少しして、清忠のまつ毛がふるりと震えてゆっくりと瞼が開く。何度か瞬きをして、清忠の目が俺を捉えた。
「凛…ちゃん…?」
「清っ!」
俺は思わず清忠に抱き付いた。清忠の首にぎゅうぎゅうとしがみ付き、次々に涙を溢れさせる。
清忠が俺の背中を叩いて、小さく呻いた。
「凛ちゃん…苦しい…。締めつけ過ぎ…。それに俺が凛ちゃんを心配してたのに、なんで凛ちゃんが泣いてるんだよ…?」
「だっ…て!清のバカっ。無茶し過ぎだよっ、もう!死んでたかもしれないんだからっ。俺、清に何かあったらって、どれだけ怖かったか…っ」
「…うん、そっか…。でも俺は、結局は凛ちゃんを守り切れなかった…。ごめんな。凛ちゃんがここにいるってことは…一ノ瀬さんが助けに来てくれたの?」
俺は答えに詰まって、清忠から身体を起こして銀ちゃんを見た。
「誤魔化しても仕方がないからはっきりと言うぞ。清忠、おまえはよくやった。そんなになるまで戦って凛を守ろうとしてくれたこと、感謝している。だが、俺が着いた時には凛は拐われた後だった。おまえの傍に、そこの倉橋がいてな、久世とかいう奴が凛を連れ去って行くのを見た、と」
清忠が、ひどく顔を歪ませて肘で隠してしまう。
俺は清忠の手を握ると、願いを込めて言った。
「清…俺は無事だよ。早く目を覚ましてよ…」
俺が清忠の顔を見つめていると、反対側から視線を感じて顔を上げる。宗忠さんと並んで座る倉橋が、心配そうに俺を見ていた。
「椹木、ほんまに無事で良かった。どこも怪我はないんか?もし怪我をしてたら白に治してもらい。白はあれでも真葛のことを気に入ってたみたいでな、すぐに刺された傷を治してくれてん。だからもう、どこも悪くないはずなんやけどなぁ。真葛が起きよらへん」
「うん…、倉橋もありがと。白様に清のこと頼んでくれて。白様にもお礼を言わなきゃね…」
「ええって。そんなことよりも、真葛が目を覚ます方が先や。椹木も無事で帰って来たんやし、早よ起きたらええのに…」
清忠に目を向けた倉橋につられて、俺も清忠に視線を戻した。
その時、握っていた清忠の手がぴくりと動き、俺の手をかすかに握り返してくる。俺は清忠の顔の近くに顔を寄せて、耳元で大きな声を出した。
「清っ、凛だよっ。清が頑張ってくれたから、俺はどこも怪我してない。ぼろぼろになるまで戦ってくれたのに、俺は何にも出来なくてごめん…。清…お願いだから目を覚ましてくれよ…っ」
溢れた涙が清忠の頬にぽとりと落ちる。
少しして、清忠のまつ毛がふるりと震えてゆっくりと瞼が開く。何度か瞬きをして、清忠の目が俺を捉えた。
「凛…ちゃん…?」
「清っ!」
俺は思わず清忠に抱き付いた。清忠の首にぎゅうぎゅうとしがみ付き、次々に涙を溢れさせる。
清忠が俺の背中を叩いて、小さく呻いた。
「凛ちゃん…苦しい…。締めつけ過ぎ…。それに俺が凛ちゃんを心配してたのに、なんで凛ちゃんが泣いてるんだよ…?」
「だっ…て!清のバカっ。無茶し過ぎだよっ、もう!死んでたかもしれないんだからっ。俺、清に何かあったらって、どれだけ怖かったか…っ」
「…うん、そっか…。でも俺は、結局は凛ちゃんを守り切れなかった…。ごめんな。凛ちゃんがここにいるってことは…一ノ瀬さんが助けに来てくれたの?」
俺は答えに詰まって、清忠から身体を起こして銀ちゃんを見た。
「誤魔化しても仕方がないからはっきりと言うぞ。清忠、おまえはよくやった。そんなになるまで戦って凛を守ろうとしてくれたこと、感謝している。だが、俺が着いた時には凛は拐われた後だった。おまえの傍に、そこの倉橋がいてな、久世とかいう奴が凛を連れ去って行くのを見た、と」
清忠が、ひどく顔を歪ませて肘で隠してしまう。
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