銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
451 / 451

49

しおりを挟む
 フィル様が第二王子を見上げて首を小さく傾ける。

「どうしたの?リアムも一緒に泊まりに行こうよ」
「…フィー、おまえは優しいな。愛してるよ」
「ありがとう。僕もだよ」

 フィル様が第二王子の胸に頬を寄せて、幸せそうに笑う。
 フィル様の幸せそうな姿を見るのは嬉しいが、第二王子の腕の中というのが腹立たしい。
 俺は咳払いをすると、「フィル様」と大きめの声を出した。

「長旅でお疲れでしょう。早く中に入って休まれた方がいい。荷解きや食事の用意は俺がします」
「いいの?ラズールも家の片付けとか…」
「片付けも何も、ほとんど物がありませんので大丈夫です。ああそうだ。フィル様が来られる日には、ノアも呼びましょう。彼がいると場が明るくなる」
「ほんとに?ふふっ、ラズールの家に行くの、楽しみ。明日は?行ってもいい?」
「いつでも。ただ、あなたの伴侶に許可をいただかねばならないようですよ」

 俺の視線を追って、フィル様が顔を上げる。しかし予想通りフィル様がねだると、第二王子は渋い顔をしながらも、俺の家での宿泊を承諾した。

「フィーがラズールを大切に思っていることはわかっている。だから行きたい時に行っていい。俺に許可を取らなくてもいい。だが、あまり頻繁に行きすぎるなよ?おまえの家はここだからな」
「ありがとうリアム。わかってる。ラズールの家には遊びに行くだけ。必ず僕とリアムの家に戻ってくるよ。僕の居場所はここだから!」
「フィー」

 第二王子がフィル様に顔を寄せ、接吻をしそうになったので、俺は再び咳払いをする。

「んんッ、フィル様の顔色が少し悪いようですが。早く中へ入ってください」

 ちらりと横目で俺を見て息を吐き出した第二王子が、フィル様の頬を撫で「入るか」と微笑んだ。
 フィル様も第二王子の手に頬を寄せて「うん」と笑う。そして二人並んで扉に向かう。
 その後ろ姿を見ていると、ゼノに肩を叩かれた。

「あの二人、常にこんな感じだぞ。大丈夫か?」
「俺の目にはフィル様しか映っていないから大丈夫だ」
「なるほど。それなら大丈夫か」

 ゼノが笑って、荷物を手に二人を追いかける。他の二名の騎士は、馬を繋ぎに家の裏へと行ってしまった。
 家の中から「ラズール」と愛しい人の明るい声が聞こえ、足を前に出したその時、風が吹いた。風に乗って、どこからか微かに甘い花の香りが流れてきた。まるで今の俺の心の中を表しているような心地よい香りに、静かに目を閉じ、しばらくその場を動かなかった。


(終)
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

純鈍
2023.03.08 純鈍

てえてえ!!

明樹
2023.03.08 明樹

てれちゃう!

解除
純鈍
2022.12.24 純鈍

スキ

明樹
2022.12.24 明樹

ありがとう!
メリクリ┃*^^*)ノ✩.⋆🎄✩.*˚

解除
純鈍
2022.12.06 純鈍

🫶

明樹
2022.12.07 明樹

(っ˶'ᵕ'˶)╮=͟͟͞͞💗

解除

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。