銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ラシェット殿の城に一泊して、そこから馬を走らせ翌日に目的地の街に着いた。
 まずは街の中央にある役場に寄り、予めサインをしておいた書類を提出する。そして街の規則が書かれた冊子をもらい、ようやく目的地に向かう。
 役場での手続き等は、すべてゼノが代わりにやってくれた。
 目的地までの道を並んで進みながら、俺はゼノに礼を言う。

「ああいう手続きは不慣れだ。助かった」
「どういたしまして。というか、ずっと王城にいたなら初めてだったんじゃないか?」
「実は…そうだ」
「やはり。この先心配だな。何かあれば遠慮なく俺に相談してくれ」
「わかった。頼りにしている」

 ゼノは俺より歳下だが、とても頼れる。イヴァル帝国に友と呼べる人物はいなかったが、もし友という人物がいたならば、ゼノやジルみたいな人のことを言うのだろうか。ちなみにトラビスは友ではなく同僚…いや後輩だ。その割にアイツは、俺に対して不遜な物言いだったけれど。
 今の気持ちを口に出して言わなければ何も分からぬと思い、俺はゼノに正直に話した。
 ゼノは真面目に聞き、そして笑顔で「もちろんだ」と頷く。

「深刻な顔で話し出すから、何事かと身構えてしまったではないか。俺はずいぶんと前から友だと思っていたのだが?ラズール殿はそうではなかったのか?心外だ」

 残念な振りをして俯くゼノに向かって、「すまない」と頭を下げた。だが、俺のような面白味もない男にどう思われいようが、気にすることはない。そう言うと、ゼノは大きなため息をついた。

「気にするさ。俺もジルもラズール殿を気に入っている。この先ずっと仲良くしてもらえると嬉しいのだが」
「もちろんだ。こちらからも願いたい」
「よかった。では今夜はずっと語り明かそう。ラズール殿にはいろいろと聞きたいことがあるんだ」
「今夜?…わかった」

 すっきりとした顔で笑い、ゼノが馬の腹を蹴る。軽快に駆け出したゼノを追って、俺も馬に走るよう指示を出しながら息を吐き出す。
 語り明かすって、朝までか?今夜は疲れたからゆっくりと休みたいのだが…。まあ、たまにはこういう日があってもいいのだろうか。今まで俺の世界はフィル様を中心に回っていたから、フィル様以外と一晩中語り合うことなどなかったのだ。
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