銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 フィル様の髪を撫でて俺は目を細めた。やはりフィル様の傍にいると心が落ち着く。何もしなくとも、姿を見ているだけで幸せな気持ちになる。しかし、少しおせになった。痩せてますます美しさが増したが、心配だ。今しがたフィル様の腕を掴んで衝撃を受けた。今までも細かったが、更に細くなっている。少し力を込めれば折れそうなほどに。
 俺が無言でフィル様を見つめていたために、フィル様がかわいらしく首を傾けて聞いてきた。

「ラズールどうしたの?寝ないの?」
「寝ません。フィル様、お嫌でなければ、そこのベッドで休まれますか?」
「嫌ではないよ?でも、僕も休まないよ」
「本当に体調は大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。ラズールはしつこいね。あっ、そうだ!ラズールが休んでくれるなら僕も休む」
「それは…致しかねます」

 美しい緑の瞳に、俺のために心配の色を浮かばせいる。自身の体調よりも、俺の身体を気づかってくれる。俺はフィル様の特別だと自惚うぬぼれていいだろうか。
 しかし俺の自惚れは一瞬で消え去った。
 フィル様が俺の腰を支えながら放った言葉で。

「僕は部屋に戻るよ。リアムが待ってるし」
「リアム様…もいらっしゃるのですか」

 それはそうか。ゼノが第二王子がフィル様をつれて避暑地に行ったと話していた。ここがそうなのだろう。バイロンの王族が所有する城なのだから、第二王子がいないわけがないのだ。そしてフィル様の特別はバイロン国の第二王子リアム様だけなのだ。
 俺の考えなど知る由もないフィル様が、歩き出した。
 俺もフィル様に合わせて歩き出す。

「足、痛くない?」

 時おり、フィル様が心配そうにこちらを見上げてくる。
 俺は安心させるように、フィル様だけに見せる笑顔で頷いた。

「治癒がよかったのか薬が効いてるのか、今は痛くありませんよ」
「よかった…。手も痛くない?」
「はい。しかし手を怪我した覚えはないのですが…フィル様、なにか聞いてますか?」

 部屋を出て左に行く。部屋に戻ると仰っていたから、フィル様の部屋に向かっているのか。
 俺の腰にフィル様が左手を回しているため、俺の右手は自然とフィル様の肩を抱く形になっている。フィル様の右頬に触れそうな位置にある俺の右手を、フィル様が優しく触った。

「これね…火傷だって。あの鉱石は、人が触れると熱を発するんだって」
「なるほど、そういうことか」
「少し触れるだけなら大丈夫みたい。でもラズールは、ずっと握りしめてたんでしょ?だからひどい火傷になってるって…ゼノが…」
「フィル様?」

 フィル様の声が湿り気を帯びたように聞こえた。俯いたフィル様の顔を、少し上半身を屈めて見た。フィル様は俺と目が合うと、くしゃりと顔をゆがめた。
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