銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ジルが背負っていた荷物を地面に置き、こちらを向いた。
 俺は眉をひそめて聞く。

「この辺りでいいとは?鉱石はもっと険しい場所にあると聞いていたが?」
「そうだな、険しい場所に行けば、普通の人でも何とか見つけることができるだろう」
「どういうことだ?」

 俺は更に聞く。ふと隣を見ると、ゼノが首をめぐらせて観察している。
 ジルが笑って、手のひらを白く光らせた。

「まあ焦るな。庶民は魔法を使えないが、ある程度の身分である俺達は…ほら、このように魔法が使える」
「それが?魔法で探せるのか?」
「そうだ。しかし誰でもが探せるわけではない。ラズール殿、あなたはどのような魔法が使えるんだ?」
「俺は簡単な治癒や結界、暗闇を照らす光と、あとは攻撃の魔法だ」
「なるほど。では無理だな」

 俺は魔法の力は強い方だ。フィル様には敵わないが。フィル様は、呪いを受けていたせいで力が制御されていたが、本来なら強い力がある。王族なら当然だ。
 俺も手のひらに白い光を出してジルを見た。

「なぜ?ジル殿と同等の力があると思うが?」
「俺はそもそも魔法の力は強くはないよ。まあ…向き不向きで言えば、ラズール殿は不向きだってことだな」
「ふむ…ジル殿は鉱石を探す魔法に向いてるのか」
「そうだ。ついでに言うと、ゼノも不向きだぞ」
「えっ、そうなのか?では俺とラズール殿の二人だと、普通の人のように険しい場所に行って肉眼で苦労して探さなければならなかったのか…」
「そうなる。おまえは相変わらず楽天的だな。もし俺が合流しなかったら、どうするつもりだったんだ」 
「楽天的とは心外だな」

 ジルが呆れたように息を吐き出した。
 ゼノが口をとがらせてジルをにらむ。
 俺は反省した。フィル様のためになるならと城を飛び出してきたが、何とかなるだろうと思っていたが、そう簡単な話ではなかった。大変な苦労をするところだった。人の巡り合わせに感謝する。

「ジル殿、今回あなたが同行してくれてよかった。そもそもは俺が、話を聞いただけでよく調べもせずにここまで来たのだ。途中でゼノ殿に会ったこと、ゼノ殿がジル殿を呼んでくれたことに感謝する」
「感謝するのは鉱石が見つかってからにしてもらおうか。それにラズール殿は仲間だからな。この後バイロン国に戻ったら、ぜひ一緒に酒を飲もう」
「お、それいいな。俺も仲間に入れてくれよ」
「ああ。テラやユフィも呼ぼう」
「え、ユフィはいいけどテラも?あいつ若いのに酒癖悪いよな…」
「ははっ!楽しくていいじゃないか」

 酒か…、俺はあまり人と馴れ合いたくない。できれば鉱石から薬を作り、それをフィル様に渡せたら、すぐに去りたい。やらなければならないことがあるから。
 視線を感じて顔を上げる。二人が期待に満ちた目で俺を見ている。
 俺は仕方なく「そうだな」と頷いた。
 

 
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