銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
上 下
426 / 451

24

しおりを挟む
俺はうつむかせていた顔を上げ、ジルに問う。

「バイロンの騎士であるあなたが、なぜデネス大国にいるのか」
「祖父母の様子を見に来てたんだ。俺の母親はデネスの出身だ。祖母の体調がよくないと聞いて、会いに来ている」
「なるほど。それでゼノ殿。ジル殿をここに呼んだ理由は?」

 ゼノがニコニコとして俺とジルを交互に見ている。ゼノは裏表のない快活かいかつな人物だと思う。このような明るい人が傍にいたなら、フィル様の苦悩はもっと和らいでいたのだろうか。

「ジルが今、デネスにいることを知っていたからな。デネスに入ってすぐに手紙を送っておいた」
「そうか」
「ジルは、子供の頃からよく祖父母の所へ遊びに行っていたらしい。しかも祖父母が所有する広大な土地の近くに、目的の鉱山がある。ジルは鉱山の地理をよく知っているんだ」
「そうだ。だから俺が案内する。それとこれを。ゼノの手紙をもらってからすぐに、領主に面会して入山の許可証をもらっておいた」

 そう言ってジルが、机の上にひものついた三個の青い石を置く。
 俺は一つを掴むと、目の高さに持ち上げた。

「これが許可証なのか?」
「ああ。鉱山の周りには結界が張られている。これを身につけている者のみ、入れる」
「なるほど。見張りの者を置かなくてもいいのか…よく考えられているな」

 ジルも同じように石を持ち上げて話を続ける。

「ただこの許可証の魔法は、デネスの特許だ。どのような魔法なのかわからない。国が違えば魔法も違うからな。バイロンも石の採掘場に使用したいのだが、まだ作れていない」
「イヴァルでも使いたいな」
「そうだろう。持って帰っていいと言いたい所だが、帰りに返さなくてはならぬ」
「まあそうだろうな。残念だ」

 俺は窓に向けて石をかざしてみた。日光に反射して光る石は、どうみてもただの石だ。デネスには高度な魔法があるのだなと感心する。

「ところで、俺はゼノから鉱石を採取したいとしか聞いてないのだが、鉱石で何をするんだ?」

 ジルが石を元に戻して聞いてきた。
 俺は無言でゼノを見る。
 鉱石のことは医師に聞くまで俺も知らなかった。とても貴重なものらしいから、世に広く知れ渡ってはいないのだろう。
 俺の代わりにゼノが答えてくれる。

「目的の鉱石は、険しい場所にあるらしい。だがその鉱石は、弱った身体によく効くらしいのだ。だからラズール殿は、鉱石を入手して薬に精製し、フィル様に飲ませたいと思っている」
「鉱石にそんな効き目があるのか…わかった。早く探しに行こう」

 



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

処理中です...