銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 王は淡々と話し続ける。

「女王になった君が、なぜリアムといる」
「父上、もういいだろ…」
「リアム」

 王と僕の間に入ろうとするリアムを止める。
 僕は聞かれたことには、正直に答えるつもりだ。

「僕は大丈夫」
「フィー…嫌なら話さなくていいからな」
「わかった」

 僕が笑って頷くと、リアムがしぶしぶ僕の隣に並んだ。

「リアムと出会ってからいろんなことがありました。でも詳しく話すと長いので割愛します。ただいろんなことがあった中で、僕と同じ血筋の者に出会いました。王族の証である銀髪で、僕よりも才のある人です。僕のように呪われていないので、その人が王になるのに支障はなかった」
「ああ…イヴァル帝国は女王でなければならないという裏にあった呪いか。聞いたことはあったが、本当だったのか」
「はい。男である僕は呪われていました。いよいよ死ぬかもしれないと気づいた時に、リアムの傍にいたくて王位を譲りバイロン国に来ました。実際死にかけましたが、母上やリアムや、たくさんの人達に助けられて生きてます。この先は、リアムを助けながら、イヴァルとバイロンの架け橋となりたい」
「そうか」

 バイロン王が、フルフルと震える右手を上げる。やせ細り、腕も指も骨と皮だけだ。
 僕に向かって差し出されたその手を、リアムと繋いでいた手を離して握る。 思っていたよりも冷たくて、一瞬背中が震えた。
 僕の手を握ったまま、王が静かに聞く。

「リアムを…愛しているのか」
「はい、心から愛しています」
「いかなることがあろうとも、イヴァルに戻らずリアムの傍にいるのか」
「絶対に離れません」

 僕がはっきりと答えると、部屋に入ってきた時からずっと怖い表情だった王の顔が、少し和らいだ気がした。

「リアム、おまえはどうだ」
「俺も心から愛している。そもそも人を好きになったのも、フィーが初めてだ。父上が母上を想うよりも、俺はフィーのことを想ってるよ」
「ははっ、えらそうに。おまえの母親は大人しかったのに、誰に似たのか」
「アンタだろ」
「まあ…そうだな。なあリアム、病になると気が弱くなってかなわん。王としての立場があったとはいえ、おまえにひどい仕打ちをした。すまない」
「別に…俺のことはどうでもいい。だけど、昨日のことは怒ってるよ」
「そうだな…。フィル、昨日はすまなかった。二人を試すようなことをしてしまった」
「あ…」

 大丈夫ですとは言えなかった。だって本当に嫌だったから。まだ胸の奥ではモヤモヤしている。僕ってこんなにしつこかったんだと自分でも呆れるけど、本当にすごく嫌だったんだ。
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